GQ
APRIL 16 2020
2019年、「世俗的な音楽を作らない」という宣言の後リリースされた『JESUS IS KING』で彼が言わんとしたことはそのタイトルが最も明確に表しているだろう。今年に入ってからも自身が抱えるアパレル・ラインYeezy のコレクション、各地で開催している、灰色の衣服を纏った聖歌隊と共にゴスペル・ソングを歌い上げる礼拝イベント「サンデー・サービス」の実施に力を注ぐKanye West。TMZによればコロナウイルスの拡大に伴ってオンライン上で礼拝を行うという試みも準備しているらしく、彼がいかに神への祈りを重要視しているかがよく伝わってくる。
2020年1月末、Kanye West はNBAのレジェンドKobe Bryant を奪った*事故の直後で衝撃を隠せないまま、表紙を飾ることになるGQのインタビューの収録に登場。ライターのWill Welch はKanye の3カ国を行き来する仕事に5週間密着。仕事、信仰、政治。音楽だけではない彼の活動、考えを語ってくれたので紹介していこうと思う。
(*ロサンゼルス西郊カラバサスで1月26日に起きたヘリコプター墜落事故で、Kobe と13歳の次女ジアーナさんを含む乗員乗客9人全員が亡くなった。)
(GQ)
上述のようにこのインタビューが開始したのは1月30日。Kobe の死から、ほんの数日しか経過していない状況だ。彼はインタビューの冒頭でレジェンドへの想いを語っている。
“ オフィスへ行く時、家から*ドームまで行く時、必ず通る一本道があるんだ。俺はその道を通るたびKobe の死を噛みしめないといけない。この世を生きる誰もが今、Kobe のチャンピオン・チーム、そしてLakers のメンバーさ。Kobe ならきっと「俺たちは団結して、このチャンピオンシップを勝ち取らなければいけない」と言うだろう。俺も自分の人生を彼と同じように捉えてる。彼と俺は同時期に現れた。彼はバスケット・ボール版の俺で、俺はラップ版の彼なんだ。(*Kanye はカラバサスにドーム型の住居を建設している)”
「ベスト・フレンド」とその関係を形容する彼らの年齢は1歳差、ラッパー、バスケット・ボール選手、どちらもトップ・プレイヤーとして活躍してきたからこそ、その姿を自身と重ねるKanye。その衝撃は彼にとっても大きなものだったという。
ライターのWill がその後、彼に尋ねたのはその厚い「信仰」についてだった。
” 俺には間違いなくオルター・エゴ(別人格)があるんだと思う。そしてキリストこそが俺のエゴを変えてくれたことも間違いない。礼拝隊、数千エイカーもの土地の購入、ワイオミングへの移住、ジーザスをテーマにしたアルバム、パリ・ファッション・ウィークへの帰還、全てを巻き起こしたのは何だと思う? “
問いの答えはおそらく「キリスト」ということになるのだろう。彼の信仰に対する言葉は続く。
“ 教会で生まれ育ったような子どもたちは、その環境がネガティブなものだったと俺は思っている。けどこの人生をキリストに捧げてきた人にとって最も素晴らしい事実は、人々が信仰を心の支え、癒しとして受容していることだ。だって今君はまさに病院に入院して、無事に退院した人と話してるんだよ。
盲目的な信仰を持つことこそが究極の自信なんだ。時にそれは傲慢のようにも思えるけど、傲慢というのは神のために働かない時にこそ生まれるんだと思う。俺は確かに自分のエゴのために動いていた。それは言葉を変えれば、悪魔のために奉仕していたのと何ら変わらない。”
ここで彼は入院以前の自身がエゴのために活動していたことを認め、それ以降、その行動を改めたと語る。やはり2016年『The Life of Pablo』を引っ提げ、開催した「Saint Pablo Tour」の半ば、精神的な緊急事態からUCLA医療センターに入院した時期が彼にとっての転機だったようだ。
Kanye は現在、ワイオミング州コーディに12,000エイカーもの土地で羊を飼育を行なっている。この広大な土地を彼は「Yeezy Campus」と呼び、Yeezy ブランドの衣服のウール地を生産するために飼育をしているそうだが、彼はこの土地を「人間性のパラダイム・シフト – 人間性を取り戻す劇的な変化」を実現するための場所だと考えているそうだ。今後はこの広大な土地にJames Turell, Axel Vervoordt, Claudio Silvestrin といった一流の建築士の力を借り、新たな建築物、プロジェクトを建設する予定だという。(以下模型)
(GQ)
彼はここ数年で特にその政治に対する考え方を多くの人に指摘されてきた。「ブッシュは黒人のことなんて気にしていない」という発言に始まり、最近ではドナルド・トランプ支持を明らかにするなど、その政治的な発言・言動が度々話題になってきた。改めて彼はこのインタビューで「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」のキャップを被る理由の一つを明かした。
“ オバマがホワイトハウスにいた頃よりも良くなったことがある。それは彼らがきちんと財産を購入することを学校で教えていること。誰かにとっての財産になる方法を彼ら(ドナルド・トランプ政権)は教えてくれるんだ。今回は絶対に投票するよ。みんな俺が誰に投票するかはわかるだろ。周囲の人には何も言わせない。
仮にオバマのキャンペーン名が「私は黒人と共にある」だとしよう。もし意見を持つことができないなら、セレブ(著名人)である理由はあるのか?誰もが自分の意見を持つべきだろ!そうだろ? ”
彼は「アフリカン・アメリカン」や「クリスチャン」「ラッパー」という自身のアイデンティティから支持政党、その意思を制限されることを常に嫌ってきた。昨年行われたインタビューでも「最もレイシスト的な行動は「人種を理由に俺の選択の基準を規定する」ことだ。」と語っており、彼の苦悩がここでも伝わってくるが、相変わらずドナルド・トランプ支持の意見は揺るがないようだ。
2020年、彼はどんな動きを見せてくれるだろうか。今回のインタビューでは音楽に関する情報は少なかったものの、「『Jesus Is King』の20%をiPhoneで録音した」という驚きのコメントも上がるなど制作における興味深いエピソードも明かしてくれている。フルインタビューはこちらからチェックできる。
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