シカゴのシンガー Silas Short が届ける優美なサウンドのルーツを知る

June 14, 2022

Silas Short は正直すぎるほどに自分を表現する人。まさに名前通りでしょ。俺の音楽は自分探しと同じ。だから、インスパイアされた全ての物事を1つにまとめて”自分”として表現しているよ。- Silas Short on These Days Magazine

シカゴを拠点に活動する Silas Short の音楽に癒されない人がいるだろうか。穏やかで、風通しが良く、爽やかだけど暖かい。例えるなら、Rex Orange County のような愛おしい素朴さと、D’angelo のような甘い癒しの空気、そして Daniel Caesar の囁くような繊細な歌声が織り合わさったユニークなサウンド。

名門 Stones Throw Records からリリースされたデビュー・EP『Drawing』は全曲、彼の16歳からの友人である Jackson Shepard との共同プロデュース。遊び心のあるミニマルなサウンド(「Rooms」のスクラッチや、作品全体のロウ・キーなシンセサイザーは最高にフレッシュ)と、軽快なリズムは見事なまでに居心地が良く、日常に溶け込んでくる。そんな癒しの音を生み出したのは、意外にも少年時代の厳しい経験だったという。

“ 彼の母親は、彼が幼い頃に亡くなり、父親は高校を卒業する頃に家を出た。故郷のミルウォーキー郊外では、黒人であることを理由に排斥され、街の北側では肌の色が明るいことを理由に再び拒絶された。「”お前は白すぎる”とか、”お前はブラックだ”とか、そういう扱いに苦悩してきた。自分の持つ側面のどちらか一方だけを認めることはできなかった。音楽こそが自分自身の真実そのものだった。」

“ 「俺は「家」というものを持ったことがないんだ。居場所がずっとなかった。自分にとってのリアルな場所は音楽そのものだった。音楽はそういうった現実を明らかに超越した存在だった。」- Silas Short on The Line of Best Fit ”

彼の音楽に少しスピリチュアルな感覚を覚えるのは、彼にとっての音楽が内省と深く結びついているからだろうか。作品の歌詞にも、自分と世界との関係性や内省についての表現が散見される。その一例である、EPの表題曲「Drawing」の美しいラインを紹介したい。

“ My world beautifully intertwined
Beautiful is the mind
Things are gonna be different, it’s okay, things are gonna get shifty
Self-love needs no permission, I’m gonna draw my vision. “

“ 俺の世界は美しく絡み合い
美しさは心に在る
物事は変わりゆくだろう、けど大丈夫
物事はきっと移りゆくけれど
自分を愛することに許可はいらない
そうやって俺は自分のビジョンを描くんだ – Drawing “

センスに溢れたサウンドはもちろん、こうした歌詞の美しさにも耳を傾けながら、ゴスペル、ネオ・ソウル、アンビエントなど、様々な影響を受ける彼の作品を聴いてみてほしい。

Credit

Text : Shinya Yamazaki(@snlut

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