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Apple Music

Megan Thee Stallionが新作『Suga』で表現した「弱さをさらけ出すことを恐れない人物像」

MARCH 08 2020

テキサス州ヒューストン出身、昨年のXXLフレッシュマンにも選出されるなど、今最も勢いのあるラッパーの一人であるMegan Thee Stallion(ミーガン・ジー・スタリオン)が先日、新EP『Suga』をリリースした。

先日掲載した記事の中で紹介したインタビューでは、作品をEPではなく「デビュー・アルバム」と称していたり、SZAやJuicy Jとのコラボ作品の収録を予定していると語っていたり(『Suga』には収録されていなかった)、以前の発言からEPのリリースまでに何かしらの変化があったことが考えられる。リリースの数日前にはレーベルとの問題を抱えていることを明かすなど、謎も多かったわけだが、リリースまでにどのような経緯があったのだろうか。

また、作品中で彼女は「Suga」というオルターエゴになりきり、「「自分が問題だらけ(mess)だ」と認めることを恐れない人」という勇敢でいながら、人間らしさを持ち合わせる、インディペンデントなマインドを持つ女性を描いたわけだが、どこからそのコンセプトを着想したのだろうか。Apple Musicのインタビューからそれらを紐解いていこうと思う。

ミーガンは最新作のリリースを前にインスタグラムにて、自身のレーベル1501 Certified Entertainmentとの契約面での問題を告白していた。再契約を試みるも上手くいかず、レーベルを訴える結末となったが、主に議論の内容はミーガンへの売り上げの分配、契約金が極端に少額だったことが挙げられるようだ。

法律面の話だから、凄く細かい話だし、全てを喋ることはできないけど、ジャッジ(裁判官・判事)から「契約の話がまとまり、リリースできる」と言われたからリリースしたのみよ。私は法律のプロじゃないから、そこはわからない。

私はただ音楽がリリースしたいだけ。ラップをするのが好きなの。ずっとこれができればいいなって思うほど。自分が口にしたいことをきちんと声に出せることができれば、他は気にしないわ。
この業界には沢山アーティストの友達があるし、みんな私をサポートしてくれる。Roc Nationにはグッド・チームもいて、彼らは本当に私を助けてくれているの。

先日リリースされたLil Uzi Vertの待望のニューアルバム『Eternal Atake』が契約面からリリースが難航していたニュースが度々報道されていたように、ミーガンも自身がチームと共に「適切に報酬を手にいれる」ことが出来れば問題はないと語っており、以前の契約条件が彼女とそのチームにとって極端に搾取的であったことが示唆される。となれば、今作を「スタジオ・アルバム」ではなくEPとしたことには、レーベルとは関係のない彼女自身の心変わりがあったのだろうか。

そう。アルバムじゃないの。アルバムにするつもりだった。けど、今もまだアルバムはレコーディング中なの。今私はさらに新たな経験を積んでいるし、そしたらまた新たな言いたいことも増えてくる。
ただ「アルバム」と冠して、作品をリリースしたくなかったの。アルバムをリリースすることに本当に不安で。だって、まるでアルバムって「配偶者」みたいでしょ。(笑)でもファンや、ストリートに何かの作品を聴いて欲しくて。『Suga』はアルバムではないけど、新たなプロジェクトで、新たなペルソナを紹介する作品だわ。

驚きだが、彼女は未だデビュー・アルバムをリリースしていない。過去にリリースしてきた作品はミックステープ、EPのいずれかである。

彼女は今作にて、非常に勇敢で、インディペンデントな人物像を描いていた。一方でアルバムの後半には” Crying in the Car “のような、人間らしい「弱さ」を持ち合わせていることも見せている。彼女は過去作のそれぞれにコンセプトを設け、「Hot Girl Meg」のような、いわゆるオルターエゴを作品に込めてきたわけだが、新作『Suga』ではどんな人物像を描いたのだろうか。また、そのコンセプトはどこから着想を得たのだろうか。

“ Crying in the Car “のような作品を収録しているのは、私自身が色々な苦境を乗り越えて今の場所にいることを言いたかったから。その経験が素晴らしいものに導いてくれたってことをね。勿論私は今も苦境にいるわけだけど。ファンのみんなに「私も人間なんだ」って知って欲しかった。

(アルバムでは人間関係をテーマにラップをすることが多かったが、インディペンデントなシングル・ガールであることを主張した理由は?と尋ねられ)

私はこの作品で自分が「他の人とは違う」と伝えたかったわけじゃない。私はラップをするとき、ただ自分が感じた感情そのものを伝えてる。誰かに何かを証明するためにラップをしていない。
私は社会から「女性だから」とルールを設けられるのが嫌いなの。男性だってきっと同じように別の規範があると思うけど。男性はきっと女性たちが自分たちに依存していると思っていただろうけど、私は違う。

「あなたがいようと、私は私。あなたがいまいと、私は私。」
「あなたは私を所持してはいない。私は一人の人間なの。」
「私に指図しないで。私を物のように扱わないで。 」

そういうことを語ってるわ。

「人間らしく」「誰かに所持されない」姿勢を彼女は自己の作品で体現している。彼女がインタビューにて語ったインディペンデントなマインドは、レーベルとの問題を語っていた時や、スター・ラッパーでありながら、未だ大学に通い続けるその姿勢にも表れている。

(なぜ大学に通い続けるのか?と尋ねられ)
私は誰かに「何かをしろ」と決められたことはない。ただ毎日やりたいことを遂行してる。リアル・ライフを過ごしてるの。

彼女が新作で見せたペルソナ、そのコンセプトは彼女自身の感情や、経験が着想源となっているようだ。そのリリック、発言、行動が非常に正直なことは彼女の作品の魅力にも繋がってくるだろう。この正直な一面、そしてハングリーな精神は「男性との別れから車の中で涙を流した過去を乗り越え、さらにワーク・ハードすることを決意したこと」を告白する曲にて的確に表現されている。

また、インタビューの中ではEPをリリースした直後でありながら、デビュー・アルバムも現在製作中で、今回収録できなかった曲もそちらに収録される可能性があると語ってくれた。今作でも2曲(” Crying in the Car, Stop Playin “)をプロデュースしたPharrell Williamsとは合計5〜6曲を完成させたとも語っており、こちらのリリースも楽しみでならない。

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