Origami-hokuto

Origami Production / hokuto : Twitter

" Serendipity / FWC Track by hokuto "
文化施設閉鎖に対するムーブメント
「origami Home Sessions」から生まれた一曲を紹介

APRIL 02 2020

Written by momoha

Edited by SUBLYRICS

さぁ これからどう生きよう Hang

近頃、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為「自粛」という言葉を毎日のように耳にする。この一言は我々の品行に寄り掛かり、重い足枷となって全国に降り注いでいる。そんな今「自分に出来る事は何なのか」と自答し、行動すべき頃なのかもしれないと日々気付きを掘り下げている人も多い事だろう。

そんな中、音楽業界ではSOS(Save Our Space)によって「文化施設閉鎖に向けた助成金交付案」に向けた嘆願書作成への賛同・署名活動が行われた。他にも、様々な団体や企業が無観客のライブストリーミング等の企画を進めていることもコメントされている。さらに、日本のレコードレーベルorigami PRODUTIONは「origami Home Sessions」なるムーブメントを3月30日にスタートさせた。

この取り組みは、origami Productionに所属するアーティストが、新型コロナの影響を受けライブや収益が当面見込まれないアーティストに楽曲とその収益を無償で提供するという試みである。

具体的にはSoundCloudにてインストやアカペラ、その制作に必要なステムデータ(DAW上で編集を行いやすくする為の複数のトラックをまとめたもの)を公開し、曲制作やリリースを可能にするものだ。

クリエイティブな業界ならではの試みは大きな話題となり、多くの賛同者と結び付きを強めている。そんなエポックメーキングに共鳴したビートメーカーhokuto も対価を求めない愁眉を開く思いを込めたキラービートを提供。本作はそんな彼の無償の愛に乗り込んだ、沖縄を拠点に活動するレーベルfinal weapon company 604 のメンバーが錯綜する境界線に立つ“ 今 ”培うべきセレンディピティ(偶察力)を表明した作品である。

 

 (Hook : タサト,マシロ)

晴れた日の夕立 通り雨が虹になって

アマリリスの言う事を忘れないで

表裏一体のどこを見つめていているの

Soul brother Laughter is timeless

 

Hookパートではハスキーな低音ボイスと、それに柔らかく寄り添った高音ボイスとのコーラスワークが味わい深く響き、詩的表現を用いたリリックには彼女達の感性の豊かさが織りなされていた。

目の前に描かれた情緒的世界では、考えるよりも「心で感じる事」を求められている様である。そこには損得勘定や世間体に振り回されない意思を感じ、まるで「感じる心を取り戻そう」と今の日本に投げかけたメッセージの様に聴こえる。

 

(Verse1 : Hang) 

ほとんどが信じられない国 孤独じゃ生きていけないのに

協力も団結もだせぇみたいな時代がきそう

ライブで言った愛してるも後悔しないよう何度も言うんだよ何度も

バカは中国のせいってバカにするバカがいるなら

あんだけ金配ったYouTuber 今何するか教えてくれや

人は国もジャンルもいらねーんだよ 何のための人数なんだろう

 

「2011.03.11東日本大震災」その2日後に配信された5LACK,TAMU, PUNPEE & 仙人掌による “ But this is way ” を呼び起こすリリック。過去の教訓が霧がかり、不信の募る日本の現状や平行線上を辿る論争を経た、9年越しの悲しみがここでは語られる。

「無秩序に発信される頼りなさ」を横目に独立した音楽業界を牽引して挑む、鼎の軽重を問う表現者としての不変性が感じられた。実時間に浮き出ている問題を掬う事で、問題が身近なものであることを気づかせる彼のスモーキーボーカルは核心を突くと共に、ちょっとした安心感を灯し、掻き消される事無く続く不安の中でも少しの元気を与えてくれる。

 

(Verse2 : maho-)

ワッサーおれはアッパッパーの反逆者

降り続く運命の黒い雫 子供のみたいに空に口あけ飲め

 

Verse2は彼の大風なボイスとおどけてみせる言葉たちにフラットで有りながらも、HIPHOP的なイデオロギーが感じられ、世界が直面しているこの大きな問題をまるで小さなゴミ箱に投げ入れるかのような粋に表現がなされていた。その中で綴られる状況を重んじた心馳せは、「降り続く運命の黒い雫」と現状態が心の侘しげに描かれていた。

しかし、「こんな今だから…」と自らの言動を決め直すのでは無く、いつも通りに貫くストリートなライフスタイルに確固たる信念がクールに垣間見えた。

只々、状況の一変な収束を見込めない事に肩を落とすのではなく、より良い未来を切り開く為の心の使い方や、自分の居る環境に対し「本当に正しいのか?」と疑問を持って、考えを深めていき行動に起こす事の大切さ。そして、そんな自分を貫く為に必要とされる信念の在り方を見せてくれた素晴らしい作品だ。

本作で語られた一連のものの見方こそが、人生を歩み続ける道半ばに散りばめられた幸せを引き寄せる「セレンディピティ」を育み、そこで得た幸せもまた、知識や出逢いというかけがえのない形となり未来を明るく照らす事だろう。

自粛要請を受け延期や中止を余儀なくされたイベントの数々。見えるはずだった多くの景色がそこにはあるはずでした。その中で直接的影響を受けている出演者、従業員やエンジニアの方々には、今まで音楽を通して何度も救われました。恩返しの意味も込め、先日配信された本作のレビューを通して、リスナーである自分たちに出来る事は何か、その問を考える小さなきっかけになればと思います。

益々のクリエイティブ活動の促進やこの国に出来た間隙が少しでも早く埋まりますように。

 (Hang)

“ さぁこれから どう生きよう ”

WRITER : momoha

Instagram: @oopss.zzz

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