jadakiss ignatius

ALBUM COVER

Jadakiss -『Ignatius』
- 前を向き、亡くなった親友へ上げる「祝杯」 -

MARCH 11 2020

NY・ヨンカーズ出身、イーストコーストを代表するベテランMC・Jadakiss(ジェイダキス)が5枚目のスタジオ・アルバム『Ignatius』をリリースした。

Sheik Louch、Style PとのユニットThe LOX、ソロ作品で大きなヒットを納めてきたラッパーの3年ぶりの新作はPusha T, Ty Dolla $ign, 2 Chainz, Rick Ross, John Legendなどの豪華ゲストを迎え、注目の作品になったわけだが、彼がニュープロジェクトでテーマを置いたのは「身近な人物の死」についてだった。彼の親友であり、長年付き添ったマネージャー” Ignatius ” Maurice Jacksonは2017年、ガンにより亡くなり、彼に大きなショックを与えた。アルバムのタイトル『Ignatius』はまさに、Icepick Jayの愛称で親しまれた彼の親友の名を題した、そんな作品だ。

アルバムのリリース後、彼はComplexのインタビューに登場、そこで語ってくれた言葉を紹介しながら、今作に込められた想いについて更に掘り下げていこうと思う。

(Ignatiusとの関係性を尋ねられ)
出会った頃は、彼が嫌いだったんだ。彼はいつも俺の裏方で、昔は山ほどヴァースを要求してきたり、多くを求めてきた。彼がRuff RydersのA&Rをやってた頃だよ。

でもレーベルがバラバラになって、俺は彼を自分のプロジェクトのA&Rとして雇ったんだ。彼はそこからずっと俺の名前を売り続けてくれた、だから数年の間に絆は硬くなったんだ。俺たちの間には本当にタイトな絆があった。けど彼は死んじまった。それが大きなショックで、俺の世界にトラウマを与えたんだ。

DMX、Swizz Beatzなどが所属、2000年代前半にラップ・ゲームを席巻したRuff Rydersに所属していたJadakiss。それ以来、マネージャーとして共に音楽シーンを歩んできたIgnatiusの死は、彼に大きなショックを与えた。そういった突然の出来事、トラウマに対して、彼が考え出した自分なりの対処法、解答こそがこの作品には落とし込まれている。

(そこまで大きなショックをどのように対処したのか)
それをアルバム全体で表現してる。葬儀の後、みんなでお墓を離れて、家族や友人たちと食事をしながら昔の思い出話をして笑い合う時間があるだろ?俺がこのプロジェクトで表現したかったのは、まさにそれさ。

彼の死をただ悲しむのではなく、彼の人生に祝杯をあげたかった。これはIgnatius Maurice Jacksonのためのプロジェクトさ。

彼が語るように、一貫してこの作品のサウンドは「死を悼む」悲しげな雰囲気ではなく、死を乗り越え「前を向く」ことにフォーカスされている。そこには亡くなった人物たちへの愛と、リスペクトが込められており、彼がその雰囲気を「祝杯」というワードに表現したことも非常に納得がいく。

アルバムのラスト・トラック” Closure “には、親友のIgnatiusだけでなく、Kobe Bryant, Nipsey Hussle, Pop Smoke, Mac Miller, Juice Wrldなど亡くなった親しい人物、尊敬する人物、同業者の名前が挙げられる。リリックの内容はまさに彼 / 彼女らの人生へのセレブレーションである。
またこの作品には、亡くなった人物への愛情や、リスペクトを込めた言葉だけでなく、Jadakiss自身の家族が抱えていた問題にまで踏み込み、その問題への内省をもが語られている。その問題を解決するために、何よりも力になったのは、亡くなった相棒の存在だった。

“ ショーが終われば
音楽が鳴り止めば
そこには俺とお前だけがいるんだ
まだ俺とお前はそこにいる
この拍手喝采は君のためにある – Closure “

(彼の死は、あなたの人生にどんな気づきをもたらした?)
彼の死が俺を正しい道に導いてくれたと思う。
Ignatiusが大腸ガンにかかっていた時、俺の娘は家出していたんだ。
けど今は家族の中で全てが上手くいってる。子どもたちはお互いに顔を合わせ、一緒に時間を過ごしてる。このアルバムが完成するその時に、全てが結実したかのようだった。
彼が俺に「最後まで頑張れ」「強く立ち続けろ」と伝えてくれているかのようだった。このプロジェクトは単なる音楽よりも意味のある作品だ。そこには全く異なるケミストリー、オーラ、エナジーがあるんだ。

「このプロジェクトは単なる音楽よりも意味のある作品だ」と彼が語るのは、この作品が親友の死の悲しみに打ちひしがれ続けることなく、前を向き、自身が抱える問題までもを乗り越えることができたことの証であり、何より、Ignatiusが生きた素晴らしい人生へのセレブレーションであったからに違いないだろう。

“ Ignatius Maurice Jackson 彼を知る人は、みんな彼を愛してた
彼を見れば、みんな手を握り、ハグを交わすのさ
グッド・エナジー、みんなが彼を愛してる。
彼は頭が固く、頑固だったあの頃の俺を導いてくれた
どんな暗い状況でも俺に光を与えてくれた
ヒット・サウンドを買ってきて、「あと必要なのはお前のヴォーカルだけだ」とそう言ってた
彼に会えば、そのバイブスはすぐにわかるはずさ
俺は金ばっかり見て、本当の豊かさを理解していなかった
彼は俺を見抜いていたけど、俺は自分自身すら理解できていなかったんだ
俺たちは二人で築き上げ、お前はいなくなった。築き上げたものが崩れ落ちるのが見える
クレイジーだよな だって神様は俺がお前の助けを必要としてたと知っていたんだからさ クソ – I Know “

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