DJ Booth
May 06, 2020
NY・ブルックリン出身のラッパーJoey Bada$$(ジョーイ・バッドアス)が2nd アルバム『ALL AMERIKKKAN BADA$$』をリリースしてから3年の月日が経過した。25歳を迎えたアーティストはここ最近、アクターなど音楽以外の活動を精力的に行ってきたことを認めているが、彼の音楽を待ちわびるファンたちは今年こそ新たなプロジェクトを目の当たりにすることができそうだ。
『ALL AMERIKKKAN BADA$$』は過去最高の作品だった。それは作品に対する私たちの評価が最高だったという意味ではなく、前作が「彼にとっての」最高の作品であったからだ。
勿論『1999』や『B4.DA.$$』でも、その類稀なるラップのスキルと、プロダクションの能力を彼は十分すぎるほどに見せてきた。それでもなお、前作が彼にとって過去最高の作品であったと断言するのは、彼が初めて自分、そして先人たちから受け継いだ、決して受け売りではないメッセージを発信することができた作品であったからだ。「声を持たない人の声を代弁することが自身の才能であり、リスナーをモチベートすることが目標である」と語る彼にとって、前作は音楽活動における一つの到達点に達成した作品になったに違いないだろう。
そんな彼がComplexのインタビューに登場したのは3月9日だ。NYでコロナ・ウイルスが猛威を振るう、その前に現れた彼は、待望の3rd アルバム、自身が過小評価されていることについて、Pop Smoke の死に際し公開したフリースタイル、今世界に対して最も伝えたいことなどについて語ってくれたので、抜粋、紹介していこうと思う。
最後のアルバムのリリースから3年が経ったね。作品と作品のリリースの間に時間を持たせるのは、何か理由があってのこと?
色々な理由があるね。1つ、まだ俺は若い。2つ、俺は質を伴ったまとまった作品を届けるタイプのアーティストとして常にやってきた。これはファスト・フードじゃないんだ。たとえ、俺やファンがそれを望んでも、常に即席で届けられるものじゃない。俺には単純に時間が必要なんだ。
俺は作品の中で、自分の人生、そして経験を語ってる。そういった出来事は常に6ヶ月間で起きるわけじゃない。6ヶ月の間にアートを通じて表現するには、重要だと言える出来事が起きないかもしれない。それに、経験を自分の中で振り返るのに6ヶ月間を必要とすることだってある。
俺がやっているのはそういうこと。時間をかけて、まとまった最高の作品を作ること。クラシック以外は許せないんだ。ベスト以下は満足できない。
「これはファスト・フードじゃない」「ベスト以外は満足できない」という言葉こそが、彼が3年間、そのプロジェクトを温め続けている理由だろう。近年ラップ・ゲームでは、リリース競争と言えるほど、多くのラッパーたちが短いスパンでシングルを続々とドロップしている。勿論、良し悪しの話ではないが、Joey は「ファスト・フード」のスタイルを取ることはないとここでハッキリ宣言している。
(Complex)
次のプロジェクトについて何かアップデートはある?
もうすぐリリースできるように努力してる。もうすぐ準備が整うよ。俺のファンがInstagramで尋ねてきたから、こう伝えたんだ「聞いてくれ。6ヶ月以上は待たせない」とね。それが今言えるベストな返答かな。まさに今取り組んでるところ。
新たなチャプターを迎えた音楽の中で、あなた自身はどのように語られているの?
アーティストとして、そして男としての両方向の成長について言及してる。自分の物語を伝えるための方法をただ探しているのみだよ。今まで伝えたことのないことも、より多く描かれているし、今回は楽しんで制作ができたと思う。今作は間違いなく、過去のどの作品よりも楽しもうとしてきたかな。だって今が俺にとって本当に楽しい時期だから。ワクワクすることが沢山起きているんだ。
次作の制作において、何か新たな試みは行った?
間違いなくね。今作は全ての人が満足いくような作品に仕上がっていると思う。かといってメニューは多すぎずね。俺はそういうタイプじゃないだろ。
レストランに来て、10個も選択肢があるのは最悪だ。マザーファッカーがアルバムに14曲以上も入れるのが、俺は嫌いなんだ。誰もそんなの聴かねえから。誰も1日でそんな曲数を聴けないだろ。仮にリスナーの大半がキッズだとしても….いや、その話は置いといてくれ。
つまりまあ、たとえマイケル・ジャクソンだったとしても俺は25曲なんて聴けないってこと。俺の考えは「Less Is More – 少ない方が豊かである」だ。
「6ヶ月以上は待たせない」という発言から、多少の遅れはあるかもしれないが、今年中にリリースされることを十分期待しても良いのだろう。また次作の制作においては「楽しんでできた」と語るJoey。2017年にリリースした前作は、先行シングル「Land of the Free」からアメリカにはびこる社会問題や、人種差別の歴史に深くメスを入れることを宣言しておりシリアスな空気感が続いていたので、この点は前作から次作に向け、大きな変化となりそうだ。
多くの人が君を形容するとき「過小評価」という言葉を使うよね。君はそう呼ばれていることに対して、どう思ってる?
嬉しいことだね。過大評価よりは過小評価の方がいいかな。だって今立ってる場所が自分に追いついていないってことだよね。わかるかい?それって社会通貨と同じだよ。社会通貨はバイラリティやマーケティングにおける重要な側面を担ってる。そして人は何か(評価・資産・信用)を手にすることで「自分がエンパワーされた(社会的に強くなったと)」と感じたいんだ。
だから事実として、みんなが「まだJoey Bada$$ を広めることができる」っていう余地があるのはエキサイティングなことだよね。仮に誰一人として何かに投資することがない世界なら、そこに社会的な価値は存在しない。誰かに共有することだけで安堵感、喜びを感じることってないでしょ。だから俺は過小評価されているのは良いことだと思うんだ。
彼は「ラッパーとしての評価」と「通貨」を対比させながら自分の立ち位置を語る。簡単に言えば、「これからまだまだ伸び代がある方が面白いだろ」とここでJoey は言っているわけであるが、「事実として、みんながJoey Bada$$ を広めることができるのはエキサイティング」という俯瞰的で、至極冷静な言葉からは、彼が今、他人の評価や、社会的な信頼、資産といったものに執着していないことが読み取れる。
Pop Smoke の死を受けて、あなたはフリースタイルを公開したよね。なぜあの動画を公開しようと思ったの?
ヒップホップ・ゲーム、そしてこのカルチャーの中で誰かを失う度に感じるんだ。その事実がこのカルチャーに携わる俺たち全員に影響してるって。特にラッパーはね。心に深く鳴り響いたんだ。だってさ「もしかして、俺だったかもしれない」「もしかしたら、俺の仲間だったかも」「こいつだったかも」って思うだろ。
彼のことは個人的に知っているわけじゃない。だから多くを語れるとは思っていなかった。ただ俺のリスペクトと哀悼の気持ちを示したかったんだ。それが俺にとってのはけ口だった。
同じことをNipsey(Nipsey Hussle)が亡くなった時に感じたよ。X(XXXTentacion)が亡くなった時も、Juice(Juice World)が亡くなった時もそうだ。8年前、俺の仲間(Capital Steez)が亡くなった時だってそうだった。だからあのフリースタイルは、俺の痛みの表現、そして今起きている物事に対して俺自身が感じていることを世界に素早く伝えたかったんだよ。
今この人生の瞬間を生きていて、みんなに伝えたい最も重要なことってある?
最近それを自分に問い続けてる。携帯のメモに書き留めたりしたけど、まだ答えが出ないんだ。直感では「俺が人間であること。俺は毎日成長し続けていること。」だと思ってるんだけどね、でももっと深い答えがある気がしてるんだ。今は少し感情が閉塞してるんだと思う。また今度、この質問は回答するね。
2ヶ月前に公開したフリースタイルの内容は以下に抜粋して掲載しておくので、是非そちらもチェックして見てほしい。
未だ先行シングルなどは一切リリースされておらず、情報のなかったニューアルバム。そのヒントが今回のインタビューには多々登場していた。そしてインタビューの最後の質問でハッキリと答えることのなかった質問も、彼はきっと来たるニューアルバムの中で綴ってくれることだろう。待望の3rd アルバムのリリースの日を楽しみに待ちたい。
“ 時間は誰一人も待ってはくれない
人生はスロー・ジャムってワケにはいかないんだ
悪魔とダンスをしながら、バランスを崩さないよう保ってる
神様は子どもに多くの才能を恵んだ、彼も選ばれた人間なんだ
これがきっと最後の瞬間になる。君は銃で撃たれ、血を流し、走馬灯を見てる。人生がフラッシュバックする。
親友たちが君の棺を抱え
これで君の息子は父なき子に。彼には「早く成長しないと」というプレッシャーが襲う
俺の物語にハッピー・エンドはない
壊れた家族は新たな旅立ちを迫られる
自然災害は繰り返す、俺たちは歓喜の中で囚われてる
ラッパーに対して、政府がこんなアジェンダを掲げてるとは聞いてなかったな
あいつら俺たちが死ぬか、刑務所にぶち込まれるのが見たいんだ “
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