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Kevork Djansezian/Getty Images

タイラー・ザ・クリエイター、グラミー賞「ベスト・ラップ・アルバム」を受賞。仲間への感謝と、グラミー賞への不満を語る

JANUARY 27, 2020

日本時間1月27日午前9時〜第62回グラミー賞が催され、ライブ・パフォーマンス、ノミネート作品から授賞作品が選ばれる授賞式が行われた。

昨年3月に銃撃により死去、音楽だけでなく、起業家としてフッドに貢献を続けた偉大なラッパーNipsey Hussle(ニプシー・ハッスル)、今朝、ヘリコプターの墜落事故により亡くなってしまった元NBAプレイヤーのレジェンドKobe Bryant(コービー・ブライアント)のトリビュート・ライブが行われるなど、会場、テレビ越しに見る視聴者は彼らへの感謝と別れを惜しむ、言葉にし難い空気感に包まれたことだろう。

中でもグラミー賞初受賞であるタイラー・ザ・クリエイターが『IGOR』でベストラップ・アルバムを受賞し、母親と共にトロフィーを受けとった際のスピーチ、舞台裏で明かした胸中の思いを今記事では紹介したいと思う。

(授賞式のスピーチ)
これは俺の母さんだよ。みんな誰かと不思議に思ったかな。ママ、スピーチを言わしてくれよ。
ハロー。ハイ。ここにまた立てるとは思ってなかったよ。だからもうちょっと俺の喋りに我慢してくれよ。あぁクソ、用意してねえよ。
(*彼は授賞式の前にパフォーマンスを行いました。)

オーケイ、まず俺のママ、あなたはこの男を育てるという素晴らしい仕事をやってのけたね。

2番目にマネージャーのクランシー、あなたは種をまいて、そこに水を与えてくれた。俺のアイデアを信じてくれてありがとう。

3番目に、あぁ、みんな毎回拍手しなくてもいいよ。(会場笑い)
3番目に俺の友達、ファミリー、俺のアイデアを信じてくれてありがとう。子どもの頃から、俺のイライラするくらいめちゃくちゃに活発なエナジーを我慢して付き合ってくれてありがとう。
特にこいつ(Jasper)は俺のショー全てに来てくれて、デイ・ワンから一緒だ。こいつを愛してるよ。

そしてファンへ、レーベルへ、俺のクレイジーなアイデアを信じてくれてありがとう。新しいファンも、昔からのファンも。
俺はラップの世界で完全に「受け入れられた、認められた」と感じたことがなかったんだ。だからみんなが俺のそばにいてくれて、ここまで連れて来てくれたと思ってる。本当にありがとう。

ここにいるかはわからないけど、俺はマジでPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)に感謝したい。テレビで沢山見て憧れていたんだ。彼の存在が俺に自信を持たせてくれた。想像もできないドアを開いてくれた。ありがとうP。みんな愛してるぜ。

タイラーらしく自然で、優しいメッセージをスピーチでは語ってくれた。授賞式のスピーチで身の回りの友人や家族、ファンに感謝を告げた一方で、舞台裏のコメントでは、グラミー賞の音楽ジャンルの分け方への批判とも思えるコメントを残した。

微妙な気分だよ。一方では世界中に認知される機会を与えてくれて本当に感謝してるけど、俺のような奴にとってはクソなことも事実だ。ジャンル関係なく音楽をやっているやつにはね。
彼らはいつもそういうアーティストを「ラップ」や「アーバン」のカテゴリーに入れるんだ。
俺は「アーバン」って言葉が嫌いだ。それってポリコレ風にNワードを変化させただけの言葉に聞こえるんだよ。

だからノミネートを聞いた時、「なんで俺たちは「ポップ」には入れないんだ?」と思ったよ。
自分の心の中の半分が、ラップ部門でのノミネートが皮肉にも思えてしまったんだ。「ゲームをやりたがってるいとこの子どもに、コントローラーだけ与えて黙らせて、喜ばせる。」自分もその子どものような気分になった。

一方で、このレベルまで自分のアートが認識されたことには本当に感謝してるよ。俺はラジオでかかるような曲は作ってないし、みんなが聴いてくれるような音楽とは違う世界にいるだろうから。だから本当に感謝してる。

確かにタイラーの最新アルバム『IGOR』は前作『Flower Boy』に比べラップ・パートが大幅に減り、もはや「ラップ・アルバム」という括りにまとめることはできない。
(一方でLizzo(リゾ)は「ポップ・ソロ・パフォーマンス」を受賞している。)

内部告発により「ビジネス上関係のあるアーティストを推薦している」などの不正行為も疑われるグラミー賞だが、タイラーの「ゲームをやりたがってるいとこの子どもに、コントローラーだけ与えて黙らせて、喜ばせる。」というコメントを聞くと、アーティストとの溝は深まっているように感じる。

タイラーの主張はあくまでジャンル複合的なアーティストの作品の「ジャンル分け」に対する不満であると思うが、ここ数年グラミー賞の受賞には複数の問題が指摘されている。昨年のドレイクのコメントしかり、ヒップホップ・シーンとグラミー賞の溝は目に見えるものになってきているように感じる。
トリビュート・ライブ、そして受賞者のスピーチは素晴らしかったが、少々グラミー賞の先行きの怪しさも感じさせる、そんな授賞式だった。

俺たちは、事実に基づかない誰かの意見に左右される業界にいる。こうして年度の終わりにトロフィーを授与されるのは、正しい決断をしたからとか、NBAのようにゲームに勝ったからじゃないんだ。音楽業界はときとして、俺みたいにカナダから来たハーフの子どもや、ニューヨークに暮らすスペイン人の女の子(カーディ・B)、ヒューストンで暮らす兄弟(トラヴィス・スコット)だったりが言いたいことを理解していないヤツらによってコントロールされている。

作った曲を口ずさんでくれるファンや、仕事で一生懸命稼いだ大事な金でチケットを買って、雨の中でも雪の中でもきみのライブに駆けつけてくれるファンがいるなら、こんなトロフィーなんて必要ないんだ。そういうファンがいるならきみはすでに一流の勝者なんだ、約束するよ。 (WWD) Drake“

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