slowthai

i-D

Slowthai の異端な音楽性
攻撃的なラッパーのこれからを追う

July 07, 2020

昨年、アルバム『Nothing Great About Britain』と共に衝撃のデヴューを飾ったイングリッシュラッパー Slowthai(スロウタイ)がコンスタントに攻撃的なシングルを出し続けている。

デビュー前にも関わらず、BBCの人気DJである Annie Mac(アニー・マック)から太鼓判を押されていた彼は、その期待を裏切ることなく、母国のイギリスのみならず世界中の若者からも支持を受け始めている。

それもそのはず、昨年は Tyler, the Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の主催フェスティバルである Camp Flog Gnaw でのパフォーマンスを筆頭に、数々の大型フェスティバルでその勢いを見せつけているからだ。

2019年度のCamp Flog Gnawのラインナップ

今年はアメリカ3大音楽フェスティバルのうち、すでに Coachella Festival (コーチェラ)と Bonnaroo Festival(ボナルー)2つのフェスティバルのラインナップにその名を刻んでいる。残すところ Lollapalooza Chicago(ロラパルーザ)であるが、そのラインナップに彼の名が載せられるのも時間の問題であろう。

そんな人気上昇中の彼は、その攻撃的なラップはもちろんのこと、破天荒な振る舞いが注目されている。

昨年、Dave (デイブ)のデヴュー作『Psychodrama』が英国の優れたアーティストに送られるマーキュリープライズで最優秀賞を輝いた。その輝かしい若干21歳のラッパーの快挙に会場は湧いた一方、Slowthai の授賞式でのパフォーマンスにも歓声が上がった。

このステージで Mura Masa とのコラボ曲である「Doorman」を披露した彼は、英首脳ボリス・ジョンソンのマスクを鷲掴みにし、”F**k Boris” と叫び会場を暴れまわったのだ。

その破天荒ぶりは時にトラブルの引き金ともなる。

今年の2月下旬、英国ブリクストンのO2アカデミーにて行われた英音楽誌NME主催の表彰式で、Hero of the Year (年間ヒーロー賞) に選ばれた彼は、その授賞式でプレゼンターを務めたカナダ人コメディアンのキャサリン・ライアンにセクハラめいた発言をしたことから、会場にいたファンが「女性差別だ。」とその場で批判、Slowthai が持っていたグラスを投げ捨て一瞬即発の事態となってしまった。

その会場に同席していた英ポップバンド The 1975 のフロントマン Matthew Healy(マシュー・ヒーリー)はステージにて、

“ Everyone, send your thoughts to Slowthai
Fuck knows where he is but god bless the boy… fucking nightmare. ”
「みんなの思いをSlowthaiにぶつけてよ!
奴がどこに居んのかは神のみぞ知るって感じだけど、幸運を祈っておくよ。クソ不快な奴だ。」

と発言し、皮肉を交えながら Slowthai を非難した。

Slowthai は翌日にツイッターにてこのことを謝罪、キャサリン・ライアンの理解もあり和解に至ったが、彼はそれでは終わらなかった。

先日、上記の Matthew Healy の授賞式での発言をサンプリングしたシングル「ENEMY」をリリースした。

彼の発言に対するレスポンスで曲は構成され、こう言って退けた。

“When’s the timing’s right, I forget, don’t forgive
I need the revenge, so I made a plan
To kill you with kindness, my hollow tips”
時がきたら忘れる。許しはしない。
リベンジする為に計画を建てたんだ。
お前を優しさで殺す為に、*俺の先端の窪んだ銃弾を。
(*先端の窪んだ銃弾 Hollow Tipsは通常の銃弾よりも殺傷力が高いとされる。)

彼のクレイジーな面を「お騒がせラッパー」表してしまえばそれまでかもしれないが、その攻めの姿勢を貫くところからは学ぶ事が多々ある。

例えば、ヒップホップのイメージは薄い Mura Masa をプロデューサーに迎えるなど、これまでに無かったアプローチでメインストリームにその名を刻んでいるのだ。同じく先進的な活動がリリース毎に話題を呼んでいる Denzel Curry とコラボレーションしたかと思えば、Gorillaz の様なオルタナティブ路線のグループにフューチャリングされようとも劣らない柔軟さを合わせもっている。

ダンスポップデュオ Disclosure との共作が先日リリースされたが、是非そちらもチェックして頂きたい。

今後の彼の成長、そして売れっ子ポップバンドへの「音楽での」反逆に期待したい。

Credit

Writer : K-TA SUZUKI

日本での義務教育を経て、渡米。
カリフォルニア州ロサンジェルスの大学で単位取得後、テネシー州ナッシュビルの大学へ編入。
現在、編入後の大学にて音楽ビジネスを学ぶ。(@k_ta_szk

RELATED POSTS

LATEST NEWS

LATEST FEATURE

LATEST LYRICS

©︎ SUBLYRICS, 2020, All rights reserved