Mansur Brown の作る神秘的な世界に飛び込む

May 14, 2022

Mansur Brown(マンスール・ブラウン)の音楽には没入できる世界が構築されている。「Mashita」は霧が漂うひと気のない夜中の街区、もしくは、現実から離れた冷たい世界に入り込んだような神秘的な感覚を呼び起こす。彼の作品中には言葉が無いにも関わらず、感情、エネルギー、空間の機微が描かれており、むしろ言葉では表現できない感覚を「音」だからこそ美しく捉えている。

24歳のサウス・ロンドン出身アーティスト Mansur Brown は Yussef Kamaal、Joy Orbison、Little Simz、Alfa Mist らの作品への参加を経て『Shiroi』『Heiwa』のソロ・アルバムをリリース。ギター、ピアノ、ドラム、ベース、サックスを操り、作品全体を構成するプロデューサーとしても活躍している。2018年にリリースされたデビュー・アルバム『Shiroi』は、彼のその後の作品群にも通底する、ダイナミックさと繊細さが混在する細部にこだわったプロダクションで私たちを驚かせた。また、アルバム・タイトルに日本語を据えているのも印象的だ。

" 俺はとても信仰深い人間。だから、この作品も神に捧げる作品にしたかった。この作品は「Purity(潔白/純粋)」がテーマで、自分自身と神の関係性を表現している。そこにあるピュアでポジティブなイメージを「白い」という言葉が体現していると思ったんだ。"

MANSUR BROWN

最新アルバム『Heiwa』は前作よりアップビートで、刺激的な作品に仕上がっている。「Serious」のリードギターは中東のエッセンスを感じ、ドラムとベースの作り出すグルーヴによってトラックの力強さは際立っているし、打ち込みの808がうなる「Fade」のような楽曲も非常に特徴的だ。こうした街の音楽を取り入れているのも、神秘的なだけでなく、ストリートの風景を作品中に強く感じる理由だろう。また「Sweet」のような鮮やかで暖かいギターのサウンドも彼の音楽がいかに感情豊かかを表している。 

Mansur Brown はギターのプロフェッショナルである前に、音を操って街や人、感情などの多様な風景を見せてくれる総合的なアーティストだ。ときに神秘的に、ときにパワフルに。言葉では表現できない美しい世界を味わってほしい。

Credit

Text : Shinya Yamazaki(@snlut

READ NEXT

DISCOVERY

NOW PLAYING

FEATURE