Unusual Demont と鮮やかな色彩の世界 | デビューEP『HUES.』のコンセプト

May 4, 2022

「色彩は単なる主観でも単なる客観でもなく、人間の眼の感覚と、自然たる光の共同作業によって生成するものである」ゲーテが1810年に出版した著書「色彩論」は物理的に生じる色の解説だけでなく、人間の感覚と色の結びつきについても言及している。ファスト・フード・レストランの多くがロゴに「赤」を利用するのには、アドレナリンを分泌させる興奮色だから。これは「色彩論」から200年経った今では当たり前の考えだが、ブランディングのための色彩の解説がどこまで進歩しようとも、太陽の光を浴びた木々と、それを見る人間の感情を簡単な言葉にできるだろうか。Unusual Demont(アンユージュアル・ディモント)がデビュー・EP『HUES.』でトライしたのは、そんな様々な色彩が感情に喚起するイメージとビジョンを音楽で表現することだった。

2000年生まれのシンガーは、Curtis Mayfield のドラマーを祖父に持ち、幼い頃から音楽に囲まれて育ってきた。Tyler, The Creator 「Wolf」にインスパイアされ音楽制作を始めたのは13歳のとき。アルバムに収録された2曲「IVORY」「BLUSH」はセルフ・プロデュースするなど、パフォーマンスだけでなく、プロデューサーとしての1面も持っている。この記事では、彼自身が Wonderland. に語った、アルバムの着想と収録楽曲のカラーについて紹介しようと思う。

EP『HUES.』の着想とコンセプトについて

” Unusual Demont : この作品を作るにおいて、Tyler(the Creator)にはかなり影響を受けていると思う。音楽的な影響ではなく、『IGOR』という作品がグラミーを取ったことに影響を受けた。ある事実に気付かされたんだ。「自分の思うクールを貫けばいいんだ。結果的にリスナーも盛り上がってくれるから」ってね。そう考え始めてから、自分がハッピーだと感じる作品を作り始めた。そこから、私自身が雑誌と色彩に興味を持って、EPのストーリーはより深くなっていったんだ。その時、色彩豊かな雑誌をよく見ていて、その体験がとても心地がよかったんだ。私の音楽も自分を心地良くさせるものだから、その2つが自分の中で交錯してね。それからカラーをタイトルに据えた曲を作り始めた。だからこそプロジェクトのタイトルは『HUES.』(色彩)だ。この作品を構成する色彩が、私を心地良くしたように、音楽でみんなを良い気分にしたくて。

色彩に興味を持ったのは、2020年の初め頃だったと思う。嫌いな仕事に行って、毎日が同じ繰り返しだった。仕事に行って、隣のスターバックスでコーヒーを飲んで。ここだけの話、仕事を抜け出したかっただけなんだけど。とにかく、そこのスターバックスは「Barnes and Nobles」(本屋)が併設されていて、ラックに雑誌が並んでいたんだ。ちょうど、同じことを繰り返す反復的な人生になり始めたある日、その本を覗いてみたんだよね。人生が俺のケツを叩いてきたんだと思う。その雑誌にはいくつもの色彩が描かれていて、なぜか私は幸せを感じたんだ。自分でもなぜだかわからないけど、見ていると心地が良かったんだよ。それから、自分が「色彩」というものに本当に夢中になっていることに気づいてね。この感情を他の人にも届けたいと思ったんだ。”

2年前にスターバックスで雑誌を見た体験から生まれたというこの作品。8曲で構成された作品の全楽曲が「色」の名前でタイトリングされており、彼の思う、色彩とその感情が詰め込まれている。以下にトラックリストと、各カラーを掲載するので、目で色を楽しみながら、楽曲を聴いてみてほしい。もちろん、自分の中でカラーを想像するのも楽しいはず。

1. VANTA / 最も黒い黒

2. IVORY / 黄みを帯びた白

3. GOLD / 金

4. AMBER / 琥珀色

5. PINE / パイン色or松色

6. PURPLE / 紫色

7. DAFFOFIL / 水仙色

8. BLUSH / 淡紅色

Credit

Text : Shinya Yamazaki(@snlut

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