Ⅲ. Life : The Biggest Troll [Andrew Auernheimer]
Album : Because The Internet
Track : 19
Year : 2013
Produced by : Ludwig Goransson & Childish Gambino
Childish Gambino (チャイルディッシュ・ガンビーノ)の2012年リリース『Because The Internet』は楽曲の他に「脚本」が楽曲の間と間に折り込まれる形で描かれたストーリー型のコンセプト・アルバム。
19曲目、最後のトラックとなった” Ⅲ. Life : The Biggest Troll [Andrew Aurenheimer] “。
タイトルにもある” Troll – トロル “とは、インターネットにおける「釣り・荒らし」と呼ばれる、人をバカにすることを意味するワード。
人生は最大のトロルである、と題されたタイトル。人生は馬鹿らしいもので、ジョークのようだ。というメッセージがこの楽曲には込められています。
彼はインタビューで、
「俺は人が死ぬのを見て得体の知れない気持ちになったんだ。まるで死が残酷なジョークのように感じたんだ」
と語っています。
脚本の中の主人公・ボーイが自身の死、父親の死に直面するシーンもあったように、「死」がこのアルバムにおいて、大きなテーマの一つであると言えるでしょう。
[]づけで表記された” Andrew Aurenheimer – アンドリュー・オーレンハイマー “は、アメリカの携帯電話会社AT&Tをハッキングして逮捕されたハッカー。ハッキングを用いて、「荒らし」を行うことで有名だった彼をタイトルに用いたのは、まさに彼が「トロル」的な存在だからなのでしょう。
また、パッケージ版・CD版のクレジットにはこの曲の客演として” Donald Glover “の名前が記されています。
この楽曲は俳優としての名義であるDonald Glover、ミュージシャンとしての名義チャイルディッシュ・ガンビーノ、そして脚本の主人公・ボーイという、彼の中にあるさまざまなアイデンディティが織り込まれた作品になっています。
[Intro]
I’m fly…
[Verse 1]
Man made the Web, you don’t need a name (Yeah)
人類はインターネットを生み出した。そこでは名前は必要ない (エイ)
Man made of faults, I ain’t too ashamed
人間は罪から生まれたんだ、それは恥ずべきこと
Every thought I had, put it in a box (Box)
俺の考えは全て、ボックスに詰め込まれる
(テキストのボックス = ソーシャルメディアの投稿のことですね)
Everybody see it just before the cops
警察よりも速く、誰もが見ることができるんだ
(インターネットの投稿は、誰しもに開かれたものです)
Trollin’, trollin’, trollin’ these niggas
あいつらを怒らせてやるんだ、バカにして怒らせてやる
(” troll “はネットの「釣り」のことですね。相手をバカにしたりして、怒りを買うことを目的とすることです)
Rick Rolling these niggas, they mad cause they don’t know any better
あいつらを騙してやる、そしたらキレてやがるよ、だって俺より上手い方法が思いつかないから
(ボーイはプランク(いたずら)を誰よりも面白おかしく作ることができる)
“Hold up, it’s the kid—quick, tell him he can’t sit with us!”
「ちょっと待て、あいつが来たぞ、俺たちとは座れないと言ってやれよ」
(孤独な主人公ボーイが避けられていたことが浮かびます)
Fuck it, got money, bought friends like I’m TBS
クソ、だから金を手に入れて、TBSみたいに” フレンズ “を買ってやった
(TBS = Tuner Broadcasting Systemのこと。TBSはアメリカの人気ドラマ『FRIENDS』の放映権を購入しています。友人とドラマのタイトルをかけています)
VVS, I can see it all with the clarity
ほんの少しさ、透き通る輝きが俺には見えるんだ
(VVS = Very Very Slightの略。” clarity “はダイアモンドなど宝石の透き通る輝きを表現したもの)
Real deep, hope they dig a nigga ‘fore they bury me
リアル・ディープ、俺が死ぬ前にあいつらがディグすることを祈るよ
(亡くなって初めてラッパーの存在を知ったり、曲を聴き始める人は多くいます。彼は自分が死ぬ” 前 “に作品を聴いて欲しいと。” dig – 掘る “、” bury – 埋める “という言葉遊びをしています。埋めるというワードから深さを表す “ディープ “という前置きも繋がってきます)
Even though, we were told to go where they wouldn’t go
それでもさ、あいつらの行ったことのない場所に行くんだ
Hella slow, that’s that dial up, watch it pile up, fly
どんなに遅くてもね、ダイアル・アップってとこさ、積み重なってるぜ、さあ
(ダイアル・アップは電話線に利用される非常に低速な回線。積み重なるのはコンピューターへのコマンドでしょう。重いコンピューターはコマンドの負荷からフリーズしてしまいます)
[Hook]
Andrew Auernheimer
アンドリュー・オーレンハイマー
Pullin’ on her weave, it’s that Andrew Auernheimer
彼女の髪を掴んでみな、それはきっとアンドリュー・オーレンハイマーだから
(女性が髪の毛にエクステなど、「偽物」の髪の毛をつけることは珍しくありません。彼女の髪の毛はオーレンハイマーのように「トロル」なものであると。またオーレンハイマーのニックネームは” weev “。髪の毛の” weave “とかけています)
(scratching) Andrew Auernheimer
(スクラッチ)アンドリュー・オーレンハイマー
Pullin’ on her weave, it’s that Andrew Auernheimer
彼女の髪を掴んでみな、それはきっとアンドリュー・オーレンハイマーだから
(scratching) Andrew Auernheimer
(スクラッチ)アンドリュー・オーレンハイマー
Pullin’ on her weave, it’s that Andrew Auernheimer
彼女の髪を掴んでみな、それはきっとアンドリュー・オーレンハイマーだから
(scratching) Andrew Auernheimer
(スクラッチ)アンドリュー・オーレンハイマー
Pullin’ on her weave, it’s that Andrew Auernheimer
彼女の髪を掴んでみな、それはきっとアンドリュー・オーレンハイマーだから
[Verse 2]
We are the dreams of our parents lost in the future
俺たちは将来いなくなる両親たちの夢なんだ
Who hide the deepest desires and wear a mask like a lucha—
奥深くにある欲望を隠して、プロレスみたいにマスクを被ってるやつは誰だよ
Door, open, we were smoking in the hotel
隠すなよ、俺たちホテルで一緒に吸っただろ
(ここの” door “は前後2つの単語にかかっています。” lucha-dor ” はプロレスという意味の単語。doorの後ろにはopenという単語があるので、ホテルのドアを開いて客室に入る様子が浮かびます)
The vapors went through the hallway, the manager pissed as hell
吐いた煙が天井を突き抜ける、マネージャーがマジでキレちまった
I mean, where’s the line between Donnie G and Gambino?
ドナルド・グローヴァーとガンビーノの違いはどこにあるんだ?
(彼は俳優業、音楽業それぞれで別の芸名を使っています)
He hang with girls like he Lena but needed some time to re-up
あいつはLenaみたいな女の子と遊んでる、でも立ち直る時間が必要だったみたいだ
(彼は女優のレナ・ダナムとドラマで共演しています。そのドラマの名前は『Girls』。ラインの中にも” girls “というワードがありますので、ここでもかけています)
Tequila in the cantina, 30 dollars I swallowed
バーにあるテキーラ、俺が飲んだのは30ドルさ
The Sauza so malo, then she said, “You need to grow up
Sauzaはマジで最悪だろ、彼女が言ってたよ「もっと大人になりなさいよ
(Sauzaはテキーラのブランド。価格が非常に安いことから、子供らしい印象を受けるのかもしれません)
You been doing this for too long
あなたは同じようなことばっかりずっとしてる
That Camp was a million years ago, sing me a different song”
『Camp』なんてもう100年前に感じるの、もっと違う曲を歌ってよ」って
(『Camp』は2011年にリリースされた彼のファースト・アルバム)
Whether you’re trolling or controlling, just a reminder
念のために聞くけど、バカにしてるのか、本当に理解してるのかどっちなんだい
You think you get it, you don’t, it’s that Andrew Auernheimer
君はわかった気でいるけど、そうじゃない。それってアンドリュー・オーレンハイマーだよ
I’m gone—Now I’m back
いなくなったけど、今こうして戻ってきた
Give a fuck or give ‘em hell, just not a chance to react
あいつらに地獄を味合わせる、反抗するのはやめとけよ
Tyler Durden, this burden hurting, they said there was curtains
タイラー・ダーデン、この重荷は痛みを伴う、そこにはカーテンがあったんだってさ
(タイラーは映画『ファイト・クラブ』のキャラクター。カーテンは物事の「終わり」を意味するものだそうで、ここでは死を彷彿とさせます)
Certain demise, look in his eyes, the pain inadvertent
それは「死」なんだ、彼の目を見つめれば、心の痛みが漏れ出してる
I could’ve stayed where I was and have a life you’d be proud of
俺は誰もが自慢できるような生活をしていたはずだったのに
But I’d rather chase things never thought of
でも本当に俺が追い求めていたのは、想像もしないものだった
It was all love, saying, “Go hard”
「愛」だったんだよ、「ハードに行くぜ」なんて言ってる裏でさ
(彼の楽曲” Difference “から。強気に見える彼が本当に求めていたのは愛情だったんですね)
Making dope, it’s a trap, Ackbar backfired
ドープなものを生み出しても、それは罠なんだよ。アクバーは裏切られた
(スターウォーズのキャラクター、アクバー提督のこと。「罠だ!」というセリフが彼の代名詞になっています)
Panic dreams so it seems we’re meant to die
悪夢を見て、俺たちは死を予感する
I had to figure it out; “It’s the best,” no, that’s a lie
だから見つけ出す必要があった。「これが最高だ」って?違うよ、それは嘘だから
Had to get some stuff off my chest, I vaporized
この胸の中から色々なものを取り除かないといけなかった、だからベイプを吸ったんだ
(彼の心の中にあるストレスや不安を、葉っぱを吸うことで取り除いていた)
High on my own, it took time to realize
一人でハイになってる、だから気づくのに時間がかかったよ
Because the internet, mistakes are forever
インターネットのせいだ。失敗は永遠に残る
(インターネット上の発言、投稿は永遠に残ります。またインターネットがあることによって繰り返される” 失敗 “、を意味しているようにも思えます)
But if we fuck up on this journey, at least we’re together
でもさ、もしこの旅が失敗しても、きっと誰かと一緒にいれるんだよ
(誰かと別れたり、何かが上手くいかなくても、インターネットがある限り一人になることはない)
Man, I wish I could go back and tell that kid it’s make-believe
なぁ、あの頃に戻りたいよ、少年だった自分に「そんなの見せかけだ」って伝えたいんだ
(彼は昔の自分に、何が表面的で何が本質的なのかを伝えたかったと)
Make ‘em believe in themselves, people who needed my help
俺の助けが必要としてた奴らは、自分自身を信じられるようにならないといけない
Feelings I felt, keeling myself, no one’s ever been this lost
俺は感じてた、自分自身に屈してたんだ。だって誰もこんな経験してないだろ
I just get the information, retweet it or say it sucks
目にした瞬間、それをリツイートするか、「こんなのクソだ」って呟くか
I just got the motivation, your talent’s just bunch of luck
そんなことばっかりがモチベーションになってた、「お前の才能はただの運だ」なんて言ってさ
(スクリーンプレイ・脚本でもあったようにボーイはツイッターで人をバカにするアカウントを持っていましたね)
Hard work and dedication but lately it’s run amok
献身的にハード・ワークし続ける、でも最近コントロールできないんだよ
Waking up in these places I don’t remember
記憶のない場所で目覚めて
(記憶がなくなるほどにドラッグをやる)
Texts from people I never met, doors left open
会ったこともない人とメッセージを交わす、ドアは開いたままだ
(Who is this? Don’t do it, where are you?
(これは誰?やめてよ、どこにいるの?
Who is this? Who is this) I don’t know who I am anymore
これは誰なの?これは誰) もう俺は自分が誰なのかわからないよ
Still on the beat though
まだビートの上に乗ってるけど
Still in the game but he moves with a cheat code
まだこのラップ・ゲームにいるけど、あいつの動きはまるでチートみたい
(” チート “はゲームを優位に進めるための不正行為を意味する言葉。” ゲーム “というワードとかけています)
Slowest connection ever, my life inside a computer
接続が一番遅いよ、俺の人生はコンピューターの中にある
Them bands that’ll make ‘em dance, my wallet’s Lollapalooza
この札束であいつらを躍らせる、俺の財布は” Lollapaloozza “だから
(お金で人を動かすと。Lollapaloozaは有名な音楽フェス)
The violence, first-person shooter
暴力、最初に狙いを定めた奴
First person to move, first person to speak
最初に行動した奴、最初に話し始めた奴
(全てインターネットの中での行動を指しています)
My mils aren’t meek, they scream in the streets
俺の客は黙っちゃいないぜ、みんなストリートで叫んでるよ
Losing my frame of reference, these pieces of shit for breakfast
枠組みを失くしちまった、このクソは朝飯にでもするよ
Funny, the day you’re born, that’s really your death sentence
面白いよな、生まれたその日に死の宣告を受けるんだからさ
I met this girl at a dinner, we conversating
この子にはダイナーで会ったんだ、そこで話してさ
(脚本中のナオミのことですね。Jhene Aikoが演じています)
She beautiful in the face but her voice is truly amazing
彼女の顔は美しいし、その声は本当に素晴らしくて
Plus she write her own shit, becoming so close knit
しかも彼女は自分でリリックを書いてるんだ、そこから仲良くなってさ
Smoke up and talk in the evening, she helping me focus
昼過ぎに吸いながら話したよな、俺が仕事に集中できるようになったのは彼女のおかげで
No Anna Nicole Smith, she getting hers
アンナ・ニコル・スミスじゃないぜ、彼女は自分で稼いでる
(モデルのアンナ・ニコル・スミスは27歳の時、64歳年上の大富豪の男性と結婚しています。その男性は結婚後1年で亡くなってしまい、彼女は財産目当てに結婚したのだろうと噂されていました)
Niggas take her props like a musical, live and learn
あいつら、まるでミュージカルみたいに彼女のファンを囲ってる、何事も経験だけど
She say she feel alone all the time, I’m similar
彼女はいつも孤独を感じてるんだって、俺と似てるよな
I meet her in my dreams on the moon, I visit her
夢を見てた、月の上で彼女に会ったんだ、彼女に会いに行ったんだよ
Every night I text her: “I wanna solve the world, I think I need your help”
毎晩彼女に送ってる「この世界をどうにかしたい、君の助けが必要なんだ」って
She text me, “How you gon’ trust somebody when you don’t trust yourself?”
彼女はこう返してくる「自分も信じられないのに、他人を信じられるわけないでしょ?」って
I mean she right though, 45 like a light-bulb
彼女は正しいよ。45、まるで白熱電球みたいだ
(45には、より高い目標を追い求める。という意味が込められているそう。彼女が白熱電球のような光で彼を包んでいることを意味します)
And I could’ve died like my iPhone but I kept going like a psycho
俺もiPhoneみたいに充電が切れるんだろうけど、サイコみたいにやり続けるぜ
And I took chance like a dice roll, dropping jewels like it’s puberty
サイコロを回すみたいにチャンスを得てきた、アソコも大きくなってさ、思春期みたいだな
(サイコロを回す = ギャンブルを彷彿とさせます。彼はリスクを背負いながらもチャンスを手にしてきたと)
Wrote a note on the glass: “You see what these labels do to me?”
グラスにメモを書いておいた「レーベルたちが俺に何をしたか、お前にわかるか?」
(彼は所属していたレーベル” Glassnote Records “と印税などの問題で何度も揉めています)
Texts said, “I’m wet”; I said, “Hold up, wait up a minute”
メッセージで「濡れてるわ」って言われたけど、俺は「待ってくれ、ちょっと待ってくれよ」って感じで
H2O plus my D, that’s my hood, I’m living in it
H2Oに俺のDを付け足せば、それは俺のHOOD(フッド)だろ、そこで育ったんだ
(H2o – HOO に Dを付け足せば、HOODという単語になりますね。” D “はDick – 男性器の頭文字。先ほど「濡れてる」というメッセージが来ていたことから。)
Never forget this feeling, never gon’ reach a million
この気持ちは一生忘れないね、ミリオンなんて一生届かないだろうけど
Eventually all my followers realize they don’t need a leader
結局俺のリスナー達も気づくんだ、リーダーなんて必要ないって
Stay on your own shit, fuck what these clones think
自分のことを考えるんだ、フェイク野郎の考えなんてクソ喰らえ
Just remember that you the shit, but act like it don’t stink
これだけ覚えとけよ、お前はクソだって、臭いものに蓋をしてさ
We were childish but had to grow up
俺たちはみんなチャイルディッシュ(子供)なんだ、でも大人にならなきゃいけなかった
When you spitting real shit eventually you throw up
本心を口にして、それを世の中に送り出す
Realities like allergies, I’m afraid to go nuts
現実はまるでアレルギーみたいだ、おかしくなっちまいそうで怖いよ
(” nuts – ナッツ “アレルギーの人はたくさんいますね)
Life’s the biggest troll but the joke is on us
人生は最大のトロルさ、でもそのジョークは俺らに向けられてる
Yeah, the joke’s you showed up
エイ、君も出てくるジョークだよ
[Outro]
You’re here now
君はここにいる
You have to help me
You have to help me
俺を助けなきゃならない
I need you—you have to help me
君が必要なんだ、君に助けてもらわないと
You have to help me
You have to help me
俺を助けなきゃならない
Please help me
Please help me
頼むよ、助けてくれ
Please, please help me
頼むよ、助けてくれないか
Please—
お願いだから….
[LAST VISUAL]
BECAUSE THE INTERNET
ALL STORY (SCREEN PLAY) & ALL SONGS
Dial Up (No Lyrics)
Ⅰ. Worst Guys (Feat. Chance The Rapper)
Playing Around Before Party Starts (No Lyrics)
SCREEN PLAY 3-3 (Death By Numbers)
Ⅱ. Earth: The Oldest Computer (The Last Night) (Feat. Azelia Banks)
Ⅲ. Life: The Biggest Troll (Andrew Auernheimer)
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