V. 3005
Because The Internet (2013) : Track 9
チャイルディッシュ・ガンビーノ (ドナルド・グローヴァー) が2013年にリリースしたアルバム『Because The Internet』は、19曲のトラックだけでなく、インターネット上に彼自身が記した「ストーリー」が執筆されている作品。曲と曲の間に、このストーリーが記されており、曲の理解を大きく助けてくれます。
この脚本では、自身の” オルターエゴ “とも言われている、裕福な青年” ザ・ボーイ “を主人公に物語が進んでいきます。
ここまでのストーリーで、生まれて初めての結婚式を見た主人公ボーイは、会場で出会ったインディアンの男性と「結婚」や「人生」について語り合います。
今曲” 3005 “のリリックはアルバムの他の曲と比べても、明らかに、脚本の主人公” ボーイ “の目線というよりも、チャイルディッシュ・ガンビーノ本人の目線から語られているように感じます。ストーリーの描写というよりも、彼自身の心の中の本音を吐露しているようです。その理由の一つとして、彼がアルバムをリリースする前にインスタグラムに投稿した一つの写真があります。
将来が怖い
両親が孫の顔を見ずに死んでしまうのが怖いんだ
ショーが失敗するのが怖い
彼女が望まない妊娠をしてしまうのが怖い
自分の才能を台無しにしてしまうのが怖い
彼女がまだ、あの男に惚れてないかが怖いんだ
手紙に記されたのは、彼の将来への不安。
非常にネガティブな文章からは、彼が鬱的な感情に悩まされていたことが伝わってきます。
また、彼は、今曲のリリックで、
「家にはホーミーがいっぱいさ、でも心の中は反対で、俺は孤独なんだ」
「みんな支払いが済んだら、いなくなっちまう」
などと、友人に対する不信感を伺わせています。多岐にわたる活動で、彼には多くの友人がいることでしょう。
そんな彼の開くパーティには大勢の友人がやってきます。しかし、そのパーティで、「俺はこの友情を金で買ってるのか?」と彼は疑問に思います。
パーティにやってくる友人たちは、自分自身のことが好きなのか、それとも自分が持っている富や名声を目当てで、来ているのか。という心の中の孤独に苛まれるのです。
そんな「不安」と「孤独」に悩まされる彼が、何より欲っしているのはきっと、金でもなく、名声でもなく、
永遠に隣にいてくれるような、彼に本当の愛を与えてくれる存在なのです。その思いがこの” 3005 “では語られています。
(ちなみにこの” 3005 ” という数字の意味は、” 3005 “の全てを足した数字が” 8 “。そして数字の8を横に倒すと” ∞ “が浮かぶことから、永遠という意味だという一説があります ” 3+0+0+5 = 8 ” = ” ∞ “)
Chorus (Condensed)]
No matter what you say or what you do
君が何を言おうと、何をしようと関係ない
When I’m alone, I’d rather be with you
一人の時は、君と一緒にいたくなるんだ
Fuck these other niggas, I’ll be right by your side
他の奴らなんて知らないよ、君のすぐそばにいるから
‘Til 3005, hol’ up
3005年までね
[Verse 1]
Okay, hold up, wait a minute, all good just a week ago
オーケー、ちょっと待ってくれよ、一週間前までは何かもかも順調だったのに
(Jay-Z ” Dead President “から引用)
Crew at my house and we party every weekend so
仲間たちは俺の家に、みんなで毎週はパーティさ
(ショートフィルム” Clapping for the Wrong Reason “で描かれていた、クルー” Royalty “のことですね。彼らは豪華な家に集まっています)
On the radio, that’s my favorite song
ラジオには、俺のお気に入りの曲が
(7曲目” Telegraph Ave “から)
Make me bounce around, like I don’t know, like I won’t be here long
出て行きたくなったんだ、わからないけど、ここにはもういたくないって思ったから
Now the thrill is gone, got no patience, ‘cause I’m not a doctor
もう恐怖も去ったし、我慢しなくていいんだ(患者はいないんだ)、だって俺は医者じゃないし
(この恐怖は、恐らく名声や金による恐怖のこと。ガンビーノは、この名声によって精神がすり減らされていると感じていました。patienceの部分は、似た単語で” patient = 患者 “があり、直後の医者のラインに繋がってきます)
Girl why is you lying, girl why you Mufasa
ガール、なんで嘘をつくんだい、ガール、なんで君はMufasaなんだい?
(スペイン語で、MuyFalsaは” Fake “という意味。また、Mufasaはライオン・キングのキャラクター。その後ガンビーノは2019年公開の『ライオン・キング』のシンバ役を演じることになります。)
Yeah, mi casa su casa, got it stripping like Gaza
エイ、俺のものは君のものさ、ストリップを手に入れたよ、まるでガザみたいにね
(mi casa su casaは同じくスペイン語。ガザは、” Gaza Strip “、中東のガザ地区のこと)
Got so high off volcanoes, now the flow is so lava
火山みたいにハイになったけど、フロウはまるで溶岩だぜ
(火山ほど” 高く “ハイになり、溶岩ほど” ホット “にフロウをする)
Yeah, we spit that saliva, iPhone got message from Viber
エイ、俺たちは唾を吐き出してる、iPhoneには、Viberからメッセージが
(” spit “はラップをすることのスラング。ViberはLineのようなメッセージアプリ)
Either the head is so hydra, or we let bygones be bygones
ヒドラみたいに頭を動かすか、それとも無かったことにして、水に流すか
(ここでは、一人の女性の存在が浮かびます。頭をフルに使って女性との問題を解決するか、二人の関係を無かったことにするかという選択肢についてです。性的な意味でも、女性がヒドラのように頭を動かす。とも取れます。ヒドラはギリシア神話の9つの首がある蛇のこと)
“My God, you pay for your friends?” I’ll take that as a compliment
「神よ、あなたは友人のために犠牲を払いましたか?」それは褒めの言葉として受け取っておくよ
(リッチな彼は、友人のためにお金を支払います。「友情をお金で買っているのではないか」という問いですね)
Got a house full of homies, why I feel so the opposite?
家にいっぱいの仲間たち。でもなんで、心の中は反対なんだ?
(山ほど友人がいるのに、彼の心の中はとても孤独なんですね)
Incompetent ain’t the half of it
有能なやつはその半分もいない
Saturdays we’re Young Lavish-ing
土曜には、俺たちはYoung Lavishみたいにやるんだ
(Young Lavishはインスタグラムに大金をアップロードすることで一躍有名になった人物。その彼のように大金を使ってバカ騒ぎすると)
Saddest shit, is I’m bad as it
一番悲しいのは、俺がそんなに金を使うのが上手くないってこと
(彼が求めていることは、パーティや金を使うことではなく、本当の友情や愛情であるということが伝わってきます)
Beans they took from the cabinet (Whoa)
棚から取ってきたビーンズ
(ビーンズは、ドラッグのエクスタシーを意味するスラング)
Sorry, I’m just scared of the future
ごめんよ、俺はただ未来が怖いんだ
(彼はネットに” I’m Afraid Of the Future “という手紙を投稿しています)
‘Til 3005, I got your back, we can do this, hold up
3005年までには、君を取り戻すよ、俺たちならできるから
[Pre-Chorus]
No matter what you say or what you do
君が何を言おうと、何をしようと関係ないんだ
When I’m alone, I’d rather be with you
でも一人の時は、君と一緒にいたくなるから
Fuck these other niggas, I’ll be right by your side
周りのやつなんてどうでもいいんだ、ただ君のそばにいるよ
‘Til 3005, hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up)
3005年までずっとね
[Chorus]
No matter what you say or what you do
君が何を言おうと、何をしようと関係ないんだ
When I’m alone, I’d rather be with you
でも一人の時は、君と一緒にいたくなるから
Fuck these other niggas, I’ll be right by your side
周りのやつなんてどうでもいいんだ、ただ君のそばにいるよ
‘Til 3005, hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up)
3005年までずっとね
[Verse 2]
I used to care what people thought, but now I care more
俺は、人がどう思うかをずっと気にしてきた、今はもっと心配になってる
I mean, nobody out here’s got it figured out
つまり、ここにいる誰も、俺のことを理解してないんだ
So therefore, I’ve lost all hope of a happy ending
そんなんだから、ハッピー・エンドへの希望は全部失ってるよ
Depending on whether or not it’s worth it, so insecure, no one’s perfect
物事に「価値があるか、ないか」にこだわって、それって超不安だろ、誰も完璧じゃないんだよ
We spend it with no shame, we blow that like Coltrane
俺たちは、なんの恥じらいもなしに金を使いまくってる、Coltraneみたいに吹きまくってるし
(Coltraneは伝説的なジャズ・ミュージシャンJohn Coltraneのこと。楽器を演奏することを” blow “と言いますが、” blow “はコカインのスラングでもあります)
We in here like Rogaine, or leave it like Cobain
俺たちはRogaineみたいにここにいる、それかコバーンみたいに消えちまうか
(Rogaineは育毛剤のこと。We” in here “は” in hair “とも聞こえます。また、カート・コバーンは自殺で亡くなっています)
And when I’m long gone, whole crew sing a swan song
俺がいなくなったら、仲間たちはみんなスワン・ソングを歌うんだ
(スワン・ソングは欧米を中心に歌われている追悼の歌)
Cause we all just ticking time bombs, got a Lambo like LeBron’s mom
だって俺たちはもう時限爆弾だから、レブロンのママみたいにランボルギーニを乗り回すよ
(心がすり減っていき、いずれ壊れてしまうことに彼は気づいています。レブロン・ジェームズの母親はDa Real Lamboというラッパーと交際していることでも有名です)
And no matter where all of my friends go, Emily, Fam, and Lorenzo
友達たちがどこに行こうとも、EmilyやFam、そしてLorenzoもな
(ショートフィルム” Clapping For the Wrong Reason “から)
All of them people my kinfolk, at least I think so, can’t tell
そいつらみんな俺の親友だよ、少なくとも俺はそう思ってる。こんなこと言えないけどな
‘Cause when them checks clear, they’re not here
だってみんな支払いが済んだら、いなくなっちまうんだ
(ガンビーノが彼らのことを親友だと思っていても、彼らにとってガンビーノは、有名で金持ちのラッパーに過ぎないのかもしれない。という恐怖が描かれます)
‘Cause they don’t care, it’s kinda sad but I’m laughing whatever happens
だってあいつら俺のことは気にしてないんだ、それって悲しいよな、でも何が起きても笑い続けるよ
Assassins are stabbed in the back of my cabin
暗殺者が俺の家の裏に隠れてる
Labrador yapping, I’m glad that it happened, I mean it
ラブラドールが吠えてる、こんな風になって良かったよ、本当にさ
(フェイクな友人がわかって良かったという意味ですね。彼は実際にラブラドールを飼っています)
Between us, I think there’s something special, and if I lose my mental
俺と君、どこか特別な気がするんだ。もし俺が自分を見失ったら
Just hold my hand, even if you don’t understand, hol’ up
ただ俺の手を掴んでくれないか、もしその訳がわからなくてもさ
[Pre-Chorus]
No matter what you say or what you do
君が何を言おうと、何をしようと関係ないんだ
When I’m alone, I’d rather be with you
でも一人の時は、君と一緒にいたくなるから
Fuck these other niggas, I’ll be right by your side
周りのやつなんてどうでもいいんだ、ただ君のそばにいるよ
‘Til 3005, hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up)
3005年までずっとね
[Chorus]
No matter what you say or what you do
君が何を言おうと、何をしようと関係ないんだ
When I’m alone, I’d rather be with you
でも一人の時は、君と一緒にいたくなるから
Fuck these other niggas, I’ll be right by your side
周りのやつなんてどうでもいいんだ、ただ君のそばにいるよ
‘Til 3005, hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up), hol’ up (Hol’ up)
Hol’ up (Hol’ up)
3005年までずっとね
[Post-Chorus]
Hol’ up, hol’ up
Hol’ up, hol’ up
Hol’ up, hol’ up
Hol’ up, hol’ up
[Outro]
Na—na—na, na—na—na—na—na
We did it! Yay!
俺たちやったぜ!やったな!
Nigga, you so thirsty
なぁ、お前、超喉乾いてんだな
(アニメ、セサミ・ストリートのワンシーンから)
NEXT : Screen Play 3
(You thirsty (楽曲最後のパートから))
BECAUSE THE INTERNET
ALL STORY (SCREEN PLAY) & ALL SONGS
Dial Up (No Lyrics)
Ⅰ. Worst Guys (Feat. Chance The Rapper)
Playing Around Before Party Starts (No Lyrics)
SCREEN PLAY 3-3 (Death By Numbers)
Ⅱ. Earth: The Oldest Computer (The Last Night) (Feat. Azelia Banks)
Ⅲ. Life: The Biggest Troll (Andrew Auernheimer)
Click HERE to More Songs by Childish Gambino
チャイルディッシュ・ガンビーノの他の楽曲の和訳・紹介は こちら をクリック
アーティスト一覧はこちら