by

25 BEST of 2018

 

SUBLYRICSの選ぶ2018年ベストアルバム・トップ25を紹介。ヒップホップ・シーンではカニエのプロデュース・アルバムが大きなインパクトがあった印象でしたが、個人的にはシカゴのヒップホップシーンの盛り上がりが印象的でした。また記事が始まる前ではありますが、ヒップホップに限らずUKの勢いはすごかったなあと振り返ってみると感じました。25〜15位は順位をつけれなかったので、順不同とさせていただきました。では、ご覧ください!


 

25 〜 20 (順不同)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

FM! / Vince Staples

彼のブラック・ユーモアが随所に見られる今作『FM!』は育ってきたロングビーチに思いを馳せた作品に。タイトルの「FM!」はカリフォルニアのラジオ番組「Big Boy’s Neighorhood」からインスパイアされたそう。また、個性的なアルバムのジャケットはGirls Don’t Cryを手がけるVerdyによるもの。
11月にリリースされた今作でしたが、アルバムを通して楽曲のイメージは「夏」そのものでカリフォルニアの気候と、犯罪率の高い「ホット」な地域をかけて語られます。豪華な客演とクセになるサウンドが最高でした。

(シングルカット” FUN! “の和訳は こちら をクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

Cherish / Jay Prince

イーストロンドン出身、2015年『BeFor Our Time』のリリースを皮切りに若手ながら、メキメキと頭角を表しているジェイ・プリンス。
シングルカット” In The Morning “は、まさにサマージャムといった感じで、柔軟なフロウと夏らしいサウンドが心地よくて、私も夏の間はかなりリピートしていました。


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

K.T.S.E / Teyana Taylor

2018年大きな話題となったカニエ・ウエストのプロデュースアルバム。そのラストを飾る5作目が、こちらのテヤナ・テイラーの一作。
Keep That Same Energy の頭文字をとった今作は、8曲という短い構成であったものの、アリシア・キーズのような力強く、スムースかつ柔軟な歌声に、サンプリングを多用した力強さとクラシックな雰囲気を感じる一枚に。カニエも「まだこういうクラシックな作品が作れるのかぁ」とつい感心してしまいました。

(トラック2 “Gonna Love Me “の和訳は こちら から)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

LOVE ME / LOVE ME NOT / HONNE

HONNE(本音)はロンドンのエレクトロ・ソウルデュオ。日本語の本音に由来するアーティストネームは私たち日本人にとってはかなりインパクトがありますよね。良い面と悪い面、面と裏の中間のグレーなスペースが表現されたという今作は、相変わらずジャズベースの心地よいサウンドは健在。よりエレクトロな要素が前作より増した感じはありますが、どんな音楽を聴く人にも聴きやすい一枚になっています。


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

KIDS SEE GHOSTS / Kanye West & Kid Cudi

ここまでの心地よいサウンド系のアルバムとは打って変わって、「心の病」が題材となっているカニエ・ウエストとキッド・カディのコラボアルバムです。超話題作になりましたね。彼らほど大きな成功を手にしたアーティストは、その反面、孤独や不安に苛まれることは稀ではありません。そんな精神的なダメージを抱えてきた二人のアーティストの葛藤が現れている一枚になっています、また、キッド・カディは幼い頃から身近な人の死を経験していることから、ある種のトラウマや悪夢、まるで幽霊に取り憑かれているようだと語っていることから、タイトルの意味は浮かんで来るでしょう。サウンドのクオリティはもちろんのこと、5曲目の” Reborn “では、心の病に苦しみながらも、「前に進み続ける」という彼らのメッセージが。

(Kanye Westの楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)

(Kid Cudiの楽曲の和訳・紹介は こちら をクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

Something to Feel / Mac Ayres

マック・アイレスは、ニューヨーク出身の21歳。前作『drive slow』をリリースした時にはまだ19歳で、誰もがその楽曲と年齢には驚いたことでしょう。最高に心地よい彼のサウンドは、Stevie WonderやMarvin Gaye、D’angeloなどに影響を受け、モダンながらも落ち着く親しみやすいサウンドに。R&Bやソウル、ジャズ、ヒップホップなどを融合させたサウンドを作るアーティストは増えていますが、個人的にはその中でもイチオシのアーティストです。前作『drive slow』も最高だったんですが、今回もやはり期待を裏切りませんでした。

(Mac Ayresの楽曲の和訳・紹介は こちら をクリック)



19 〜 15 (順不同)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

What Comes Next / Cosmo’s Midnight

オーストラリア・シドニー出身、コスモズ・ミッドナイトの『What Comes Next』は、このランキングで唯一のテクノ系のアルバムを選出しました。しかし、今作はラッパーのBuddy、先ほど紹介したJay Prince、Boogieを客演に迎えるなど、テクノ/ヒップホップとも言える、普段ヒップホップを聞いている私のような人にとっては、かなり聴きやすいアルバムになっています。しかも、音が一つ一つかなりかっこいいので、是非「テクノは普段聞かない」という人も聞いてみてはいかがでしょうか。


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

Lost & Found / Jorja Smith

第61回グラミー賞において「最優秀新人賞」にもノミネートされているジョルジャ・スミス。
1997年生、イギリス・ウォルソール出身の彼女は高校の頃からノートに歌詞を書き連ね、ついにリリースしたデビュー・シングル” Blue Lights “は各方面から絶賛され、ドレイクの『More Life』にも2曲参加するなど、弱冠21歳にして、UKだけでなく世界中で、かなりの存在感を放っています。そんな彼女のデビューシングルも入ったアルバムがこの『Lost & Found』。
そんな彼女のデビューシングル” Blue Lights “は生まれ育ったウォルソールに溢れる偏見や社会問題に一石を投じた一曲で、コンシャスな一面も持ち合わせていることがわかります。
ソウルフルな歌声と、その立ち振る舞いからは彼女の“強さ“が見えてきます。Preditahプロデュースの” On My Mind “のハウス系のサウンドのイメージが強かったので、当初聞いたときは少し意外だったのですが、スローテンポでシンプルなビートにもハマっていて、歌唱力も素晴らしい。新たなUKシンガーのアイコンになるのは間違いないのではないでしょうか。ファッションでもスタイリッシュな一面を持つ彼女は、モデルとして活動していることもあり、リアーナとついイメージを重ねてしまいますね。

(ジョルジャ・スミスの楽曲の和訳・紹介は こちら をクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

I AM > I WAS / 21 Savage

21サベージ2枚目のアルバムは2018年ギリギリ、つい先日にリリースされ、J.Cole、Post Malone、Childish Gambinoなど豪華な面々を揃えた一枚に。「21、21、21」とブツブツ呟く彼のスタイルは良い意味でブレませんね笑。先日J.Coleとの1曲” alot “を和訳したのですが、彼にも「相当な覚悟と過酷な現実を乗り越えてきたんだな」と思うようなリリックが多数あって、リーンのイメージと、XXLのフリースタイルのイメージが頭にこびりついていたので、正直かなり意外でした。コールのバースでは、21サベージが2人の子供を連れてスタジオにいたことなど、優しい父親としての一面も披露されています。「金と名声がモンスターを生み出す」と語られるチャイルディッシュ・ガンビーノとの一曲もイケてます。

(J.Coleとの一曲” alot “の和訳・解説は こちら をクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

ASTROWORLD / Travis Scott

彼らしいサウンドが、大ブレイクしたドレイクとの一曲” Sicko Mode “や” Butterfly Effect “などで輝く中、個人的には彼”らしくない”ジャジーなサウンドに、いわゆるBoom-bapを披露した” Coffee Bean “などの曲に非常に魅力を感じました。カイリー・ジェナーとの関係や、内省的なリリックがLa Flameとしての彼とは対照的に見えて、ギャップに惹かれました。

(” Coffee Bean “の和訳は こちら をクリック)

 

 



15 〜 10


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

15.  KOD / J.Cole

Kids On Drugs – 「ドラッグ漬けの子供たち」
Kill Our Demons – 「俺たちに潜む悪魔を滅ぼす」
King Overdosed – 「オーバードーズした王様」

の三つの意味が込められたJ.コールの『KOD』。ここ3作品すべてノーフューチャーでやってきたコールのアルバムに、”Kill Edward”という謎の客演が参加していたのは当初驚きました。しかしその正体は「もう一人のJ.コール」でした笑。コール自身の「エゴ」の化身とも言われています。
またまた話題になってしまったケビン・ハートを題材にした一曲や、ビデオでも話題になったATMなど、新しい角度から曲をメイクしていて新鮮でした。2018年でいうと、コールは客演やdreamvilleでの活動のイメージが強かったかもしれません。12曲という今まであまり客演に参加しなかった彼からは想像できない数をこなしています。

(J.Coleの他の楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

14.  Isolation / Kali Uchis

スティーブ・レイシーやタイラー・ザ・クリエイター、Badbadnotgood、BrockhamptonからRomil、Thundercat、Gorillazなど豪華な客演を迎えた待望のセカンドアルバムはカリフォルニアの波風を感じさせる心地よさ。

Let’s get out of this hopeless town
Nobody can stop us now
And time’s on our side, while our hearts are young
Let’s think about it tomorrow

この絶望的な街を出て行こう
誰も俺たちを止められない
私たちの時間よ、私たちの心が若々しいうちに
明日また考えればいいじゃない

システムや環境という「支配」からの解放を歌った” Tommorow “のようにアルバムを通して、現状持っている不満や、目の前の現実からの逃避を歌っています。

No one’s gonna save you now
So you better save yourself
And everybody’s hurting
Everybody’s going through it
But you just can’t give up now
‘Cause you gotta save yourself

誰も救ってくれないわ
だから自分の身は自分で守るわ
みんな傷ついてるの
みんななんとか乗り越えてるわ
でもここで投げやりにはいかないから
だから自分は自分で守らなきゃ

「誰も救ってくれない」という” After The Storm “からの一節からも、やはり現状へのどこかもの哀しげな諦めと、「自分は自分で守る」という今を生きる彼女ならではの言葉が語られます。サウンドの良さはもちろんのこと、特にこういったリリックは現代を生きる私たちと通づるところがあるのではないでしょうか。


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

13.  Some Rap Songs / Earl Sweatshirt

2015年から音楽の世界から姿を消し、一切曲をリリースしていなかったアール・スウェットシャツ。しかし2018の元日「2018年、新曲だよ。俺が何もしてなかったなんて思うなよ」とツイート。父親が亡くなった経験などから長い間、落胆していたと語る彼の久々のアルバムは、25分という非常に短い収録時間に。前衛的かつ抽象的なビートに彼らしいフロウ、そして父親を亡くした経験からなされる非常にパーソナルなリリックは彼の心の中の声がそのままラップに現れているかのようでした。デビュー作からアールは好きだったので、一回り進化した感すらあってすごく良かったです。。

(4曲目、アルバムからファーストシングルのNowhere2goの和訳・解説は こちら をクリック。)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

12.  Hive Mind / The Internet

5人それぞれが自分の音楽をソロで表現し、その後メンバーたちが再び集まり制作されたジ・インターネットの4枚目『Hive Mind』はAir Bnbで家を借りて世界各地で制作を行なったといわれています。今作はよりファンクなサウンドに仕上がっていて、アップテンポな曲が増えた印象でした。仲間意識を感じるアルバムタイトルは彼らの仲の良さも感じます。彼らのサウンドは言わずもがなですが、相変わらずシドの歌声は、彼女しか表現できない繊細かつ艶やかなサウンド。それに加え今回の作品では、メンバーそれぞれがソロ活動を経たことでよりサウンドの幅も広がりましたし、インターネットの曲中でスティーブが歌う姿や、パトリックがラップをする姿も見れましたね。個人的な好みは9曲目” It Gets Better(With Time) “。Beats 1 Radioで今曲についてシドは「この曲は、昔の自分に向けた曲なの。昔の自分は不安だったり、すごい落ち込んでた。でも、そんな当時の自分に、”時間が経てばきっと良くなるから”って伝えたくて。」と語っています。彼女のいう通り、優しいサウンドに乗せ、語りかけるように、優しい詩で不安を紐解いてくれます。

 

(It Gets Better (With Time)の和訳は こちら から)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

11.  Geography / Tom Misch

サウス・ロンドン出身、現在23歳のトム・ミッシュ。J Dillaに影響を受けていると本人も語ることから、ヒップホップのテイストに影響を受けながら、幼い頃から、バイオリンやギター、キーボードをプレイし、家族の影響でクラシックやオペラを聞いていたことから、様々なテイストが融合している彼のサウンド。しかし、そのサウンドはシンプルで、”混ぜ合わせた”という雑多感は一切感じません。待望のデビューアルバムは期待を裏切らない作品となりました。今作では、心地よいシンプルかつスムースなサウンドに加え、ハウス系のサウンドが乗っかり、アップテンポで体が揺れるような楽曲が増えた印象でした。5曲目”Tick Tock”では音が少しずつ増えていく方式をとり、終盤には壮大なサウンドに仕上がっていたり、7曲目” Isn’t She Lovely “ではポロポロとギターのサウンドが時間をゆっくりにしてくれます。また、Goldlinkとのコラボ” Lost In Paris “ではヒップホップとの新たな可能性も覗かせてくれました。いやもう” 天才 “ですね。

(Lost In Parisの和訳・解説は こちら をクリック)



10 〜 5


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

10.  Pieces of a Man / Mick Jenkins

シカゴから、コンシャスラッパーの代表とも言える、ミック・ジェンキンスのニューアルバムは変わらない日々から逃れたいという望みと、彼のスピリチュアリティに現在の生活がどのように影響を与えているかが語られた一枚に。ジャズ・ファンクにモダンなヒップホップの要素も含まれた今作は、クラシックとモダンのまさに融合のような作品に。アルバムの開始すぐ、このアルバムのインスピレーションを受けたと語る詩人のジルスコット・ヘロンの名前を用いた一曲目” Heron Flow “で彼は、自分の考えをコミュニティセンターでスピーチのように語りかけます

“things Black people thought they had a handle on that they sorta seen slowly slip away from them.”

「黒人たちが手にしていると思っているものも、その手からこぼれていっているように見えるんだ」

また、9曲目” Padded Locksではケイトラナダをプロデュースに迎えています。アルバムこそリリースしていませんが、2018年ケイトラナダの活躍は目を見張るもので、至る所に出てきた印象を持っています笑。6曲目” Barcelona “では”A tornado flew around my room before you came, I straightened it “というフランクオーシャンの” Thinkin Bout You “のサンプリングにも注目です。

 


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

9.  Letters of Irrelevance / Patrick Paige

いよいよランキングも1桁台に入ってきたわけなんですが、ここで紹介するのは、ジ・インターネットのベース、パトリック・ペイジのソロアルバム『Letters of Irrelevance』。バンドではベースとして活動する彼ですが、ソロ活動ではラッパーとして活動しています。しかしまあ、このアルバムを聞けばわかるんですが、「ベースだけ弾かせておくのは贅沢だなあ」とつい思ってしまうアルバムになっています。チル系のメロウなラップになっているんですが、完成度が非常に高いし、客演なしの曲もかなり良いし、Interludeすらハイセンスで引き込まれるサウンドでかなり衝撃を受けました。ヴォーカルのシドや、プロデューサーのマット、若き天才スティーブの3人に注目が行きがちですが、パトリックもやばいです。インターネットファン・チル系が好きなみなさんには必ずチェックして頂きたい一作です。

(The Internetの楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

8.  Daytona / Pusha-T

カニエ・オールプロデュースの本作は、もうシンプルにビートがめちゃくちゃカッコ良いです。ジャケットには、亡くなったホイットニー・ヒューストンの自宅の浴室の写真を用い、色々な意味で話題の一枚になりましたね。相変わらずドレイクとはいざこざやっていますが、かっこいいものはかっこいいということで、Complexなどヒップホップ各誌でも年間1位のところが何個かありましたね〜。


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

7.  Room 25 / Noname

イリノイ州シカゴ出身、注目のフィメールMC、Noname(ノーネーム)がリリースしたファーストスタジオ・アルバム『Room 25』。シカゴからロサンゼルスに拠点を移し、製作された今アルバムは、前アルバム『Telephone』リリース後、ツアーなどでホテル暮らしになったこと、当時の年齢が25歳だったことからタイトル『Room 25』を名付けられたそう。前作では「シカゴに住む一人の女性」としての視点、今作では「自立した” Noname “というアーティスト」としての視点から彼女の思いが語られます。

⁃ Keep the hot sauce in her purses and she be real, real blacky, Just like a Hillary Clinton, who masqueraded the system. –

⁃ ホットソースをポーチに入れておいて、リアルになろうとしてる、リアルな黒人みたいだって。まるでヒラリー・クリントンみたいでしょ。彼女はシステムに仮面を付けたのよ –

ホットソースはアフリカン・アメリカンにとっては馴染みの調味料。2016年ヒラリークリントンは選挙活動中に、常にホットソースを持ち歩いていることをアピールしていました。身近な物事を引き合いに出しながら、システムと政治に苦言を呈すことも。
35分という短い構成でしたが、つい「もっと聴きたい」と思わせるような作品になっていましたね。温かいジャジーなサウンドの上で、鋭く批判的な視点を持ち合わせながら、卑近な物事を用いてラップし続ける彼女のスタイルは、私たちに親近感を感じさせます。しかし、スクリーンに映るスターよりも、もっと身近で温かい、私たちの声を代弁してくれるような存在になっているのではないでしょうか。

(Nonameの他の楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

6.  No News Is Good News / Phonte

9th Wonder、BIG POOHとのヒップホップ・ユニット LITTLE BROTHERの元メンバーで、ラッパー、プロデューサーのフォンテの2枚目のアルバム。「ニュースがないことが良いニュースだ」という情報やゴシップに対する皮肉めいたタイトルの本作でしたが、クラジックな空気をまとった抜群の一枚に。



5 〜 1


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

5.  Redemption / Jay Rock

惜しくもグラミーのベストラップアルバムにはノミネートされなかった当アルバムですが、賞賛の声は凄まじいものでした。3年ぶりの新作 『Redemption』は ” 神による救い “という意味。16年に起こしたバイク事故で生死をさまよった経験から、彼の中で大きな変化があったと語られています。Jeremihを招いた” Tap Out “、J.Coleとの” OSOM “やケンドリックとの”Wow Freestyle”、とんでもない高音のバースをかましたFutureとの” King’s Dead “など話題性・クオリティ共に素晴らしかったです。

12曲目” Redemption “では

If you had a second chance in life, what would you do?
Would you put the pills down? Throw out the lean too?
Treat your baby mama right and make way for your kids?
Peace with your enemies, keep the water under the bridge?
I think about if my motorcycle crash was fatal
Broken bones, internal bleedin’, stretched on the table
Goin’ through surgery, two machines helping me breathe

もし人生がやり直せるなら、お前はどうする?
薬をやめて、リーンも捨てちまうか?
奥さんのこと大事に扱って、子供に正しい道を示せるか?
敵とも仲良くして、過去を水に流せるか?
今でも思うよ、もしあの事故で死んでたらって
骨は折れて、身体も内出血だらけさ、ストレッチャーに乗せられて
手術に直行だったね、2つの機械無しでは呼吸もできなかった

I should’ve gave you more trust, more love, no lies, more us
‘Cause when my motorcycle crashed and everyone left
You was that angel at surgery sayin’ I ain’t done yet, real shit

もっと君を信じて、愛さなきゃいけなかった、嘘はいらないんだ、大事なのは”二人”だろ
だって俺のバイクが事故って、誰もいなくなったとき
手術中に「まだ終わりじゃない」って言った天使は君だったから、マジだよ

「あの時死んでいたら」と、自身が亡くなって、葬式が開かれる様子を空想します。そんな空想の中で、今までした後悔や、誰を大事にすべきなのかを改めて考え、周りの人たちに感謝を送り、より良い人間になろうと心に決めます。

リリックのメッセージ性も素晴らしいです。

(Jay Rockの他の楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)


 

[siteorigin_widget class=”SiteOrigin_Widget_Image_Widget”][/siteorigin_widget]

4.  No Brainer / Coops

ノースロンドン出身、若手のコンシャスラッパー、クープスはNasにその才能を見出され、Nas完全バックアップで大ステージであるO2アリーナでのライブを成功させるなど、今期待の若手ラッパー。2014年リリース『Lost Soul』はUK版Illmaticとも言われメッセージ性が高く、世の中 に対しての不満をラップに込めています。
そのサウンドは非常にトラディショナルでクラシックなもので、グライムなどのジャンルも混ざったboombap系のラップに。そのサウンドはJoey Bada$$の” 1999 “を彷彿とさせます。実は今年まで知らなかったクープスは、今年一番の発見だったかもしれません。ここまでかなりUKが多くなっていてUKがいかにアツいかが自分でも再確認できましたね〜。


 


3.  Harlan & Alondra / Buddy

第3位は、ファレルも見込んだコンプトン出身、今年デビューアルバムをリリースし、来日も果たしたバディ。
ジャケットは家族写真だそうで、彼の家族を愛する人柄が現れていますね。Khalid、Ty Dolla $ign、A$AP FERG、Snoop Doggなど豪華な面々を揃えてリリースしたアルバムは、コンプトン出身の彼ならではの内容に。

Shameless, shameless (ayy)
Thought I told you haters
I don’t wan’ be famous
I’m tryin’ get rich mothafucka I’m
Shameless, shameless
Yeah, talkin’ ‘bout stranger danger
I done seen stranger danger
Young niggas here still walkin’ ‘round

恥知らずさ、図々しく行くよ
へイターには伝えたと思うけど
別に有名になりたいわけじゃない
ただリッチになりたいんだ
俺は恥知らずだからさ、図々しく行くよ
知らない奴のこと話すのは危険だよ
危ない奴らはこの目で見てきた
若い奴らがこの辺をまだぞろぞろしてるんだ

Mike & Keys を中心にプロデュースされたサウンドは、トラディショナルなGファンクに滑らかなフロウが乗った、素晴らしい出来でした。
個人的にはGuapdad4000を客演に迎えた2曲目”Shameless”と、6曲目” Trouble On Central “がオススメ。リリースされて2ヶ月ほどはずっとリピートしていたほどクセになりました。

(Shamelessの和訳はこちらをクリック)


 


2.  Negro Swan / Blood Orange

No one wants to be the odd one out at times
No one wants to be the negro swan

誰も”変な奴だ”って風に思われたくないんだ
誰も”ネグロスワン”にはなりたくないんだよ

「誰もネグロ・スワンにはなりたくないんだ」と悲しげに歌った一曲” Charcoal Baby “。ジャケットはまさにそのNegro Swanを表していますね。「真っ白なはずの白鳥の肌が黒い」、つまり同じ白鳥なのに見た目が違うから、集団の中からはみ出てしまうという、彼の経験から生み出されたこのアルバムテーマは、デヴ曰く「希望」で、タイトルにも表れていますが、黒人性も随所に表現しています。アルバムを通じて、ギターパートがベースになったサウンドが増え、デヴも「フェンダー社が自分にギターをプレゼントしてくれたことがきっかけで、ギターのサウンドを結構使うようになったんだ」と語っています。また、このアルバムを象徴する一曲として、彼のバックグラウンドでもイギリス・ダゲナムでの思い出を語ります。ゲイではないにも関わらず、個性的なファッションや、髪型、ネイルを身につけるなどをしていた彼は、ストリートの男達や同級生に喧嘩をふっかけられたり、虐められたりしていたようです。まさに「ネグロ・スワン」だったと。理解されない環境で個性を消し、同調しなければいけなかった苦い経験が語られます。
A$AP Rockyとの一曲ではアンビエントな雰囲気のサウンドを披露し、Steve Lacyとの一曲ではバンド・サウンドもふんだんに用いられるなど、音の幅の広さも垣間見えた素晴らしい作品でした。

(Blood Orangeの楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック)


 

 

1.  CARE FOR ME / Saba

そしてSUBLYRICSの選ぶ2018年ベストアルバムはシカゴ出身、サバのCARE FOR ME。来日も果たし、そのライブに私自身参加したこともあって思い入れが強い一作となりました。サウンドの良さはもちろんのこと、特筆すべきは彼のストーリーテリングの能力でしょう。BUSY / SIRENSから始まるアルバムは、タイトルの通り全体を通して「孤独」を感じるムードが伝わってきます。バックグラウンドとして、同じクルー” Pivot Gang “に所属していた、ジョン・ウォルトが殺害されてしまったことがあり、その衝撃が大いに表れています。またシカゴで起きる、差別問題にも深く言及していることも特徴と言えるでしょう。

I call my B-F-F-that ain’t no secret kept, I fucked then told my cousin
親友に秘密はなしとか言ってたけど、正直そういう話はウォルトにしか言ってなかったね(BFF(best friend foreverの略)などの言葉遣いは彼がまだ幼かったことが表れています、Sabaの言う従兄弟とはJohn Waltのこと。彼は2017に殺害されます)
I’m broke, I wasn’t buzzin’, I tried to hit a few years, she wasn’t budgin’
俺は一文無しで、売れてもなかった、それなのに女のことばっかで、でも彼女は許してくれてたんだ
I’m bogus, left my girl for some shawty, surely deservin’ of all this lonely
俺はインチキ野郎だよ、そういう女たちのために彼女をフったんだ、こうやって孤独なのも当然だよな
“You sad? Tell me, how are you sad?
“悲しんでるのか? 教えてくれ、なにが悲しいんだ?”  (自分の欲で選んだ道なのに何が悲しいんだと自問します)
You got all of these friends, you got all of these fans,”
友達たちもいるし、こんなにファンもいるんだ
I ain’t trust nobody new since 2012, I ain’t let nobody in
2012年にデビューしてからもう誰も信じられないんだ、誰にも心を許せない
Jesus got killed for our sins, Walter got killed for a coat
神は俺たちの罪を背負って死んだけど、ウォルターはコートのせいで死んじまった (先ほどのウォルトのことです。sabaは彼がジャケットをめぐる小競り合いで亡くなったと語ります。聖書に登場する人物のジョゼフも、持っていたコートを嫉妬され仲間たちに裏切られるという似たエピソードがあります)
I’m tryna’ cope, but it’s a part of me gone
なんとか頑張ろうってトライしたけど、結局一緒で
In this packed room, I’m alone
この密室みたいな世界で、俺は一人なんだ

孤独や寂しさが、苦しくなるほど伝わってくる、本当に良いアルバムでした。優しいサウンドに乗せ、不安と孤独の合間に見える微かな希望が感じられるような素敵なアルバムでした。

 

(SabaのBUSY / SIRENSの和訳はこちらをクリック)


 

9月からスタートしたSUBLYRICSはこの数ヶ月の間に、想像以上の多くの人に見ていただきました。いつも記事を見ていただいている方々に本当に感謝しています。2018年も終わりを迎えようとしていますが、2019年も、もっとみなさんが音楽を楽しめるような情報を発信していきますので、2019年もご覧いただけましたら幸いでございます!