Chantal Anderson for The FADER
NOVEMBER 22 , 2019
イリノイ州シカゴ出身、ラッパー/詩人として活動するNoname(ノーネーム)ことファティマ・ワーナーはこれまでに個人としてミックステープ『Telephone』、ファーストアルバム『Room 25』をリリース。
ゲストとしてチャンス・ザ・ラッパー、サバ、スミノなど同郷出身のアーティストたちの作品に参加するなど、優しく響くサウンドと鋭い批判的な視点を持ち合わせたポエトリーなラップで大きな評価を得てきた。
I don’t really talk about my music much on here but I’m dropping an album 2020 if anybody’s interested
— Noname (@noname) November 4, 2019
“ あまりここ(ツイッター)で音楽の話はしないけれど、2020年にアルバムをドロップする予定よ。”
サバ、スミノと共に「Ghetto Sage」というユニットを結成、活動する一方で、個人としても2020年に待望のセカンド・アルバム『Factory Baby』(予定)をリリースすると今月初めには明かしていた彼女。
2017年には来日公演も果たすなど日本にもこのセカンド・アルバムを大いに楽しみにしている方は沢山いるだろう。しかし先日、彼女はツイッターにて「音楽業界の現状を不安視している」「自身の今後のキャリアが不明確である」旨の発言を公開した。
To be honest with you my heart isn’t fully in it anymore. The relationship between “artist” and “fan” is really fucking unhealthy. Yall like what y’all like and hate what y’all hate. And I don’t wanna be on either side. I’m just tryna read and organize. After factory baby it’s✌🏾
“ 正直に言うわ。私の心は冷めてしまっているの。
現在のアーティストとファンの関係性は本当にクソ不健康だから。
みんなは好きなアーティストには好意を送るけど、みんなが嫌いなアーティストにはヘイトを送るよね。私はどっちの側にもなりたくない。
私はただ読書をして、心を休めたいの。『Factory Baby』の後(ピース)よ! “
「読書をしたい」というのは彼女が、有色人種、LGBTQのライターたちの作品を多くの人に届けることを目指しローンチした「Noname’s Book Club」の活動にフォーカスしたいという意味合いだろう。
アーティストとファンの関係が不健康、みんなが嫌いなアーティストにはヘイトを送る。という彼女の発言から浮かぶのは、チャンス・ザ・ラッパーが最新アルバム『The Big Day』をリリースした際に受けた批判、ドレイクがタイラー・ザ・クリエイター主催のフェス「Camp Flog Gnaw」にゲスト出演、大ブーイングされ、ステージを後にした出来事だ。
“ I’m getting this crazy feeling that people want me to kill myself 😢
— The Big Day out now (@chancetherapper) August 5, 2019狂った感情を感じるんだ、みんなが俺に自殺してほしいって思ってるんじゃないかってね。”
チャンスへの最新アルバムへの反応の中には行き過ぎた批判も含まれていたようで、同郷シカゴで生まれ育ち、昔から親しい仲だった彼がこのような過激なヘイトを受けたことが彼女にとってはショッキングだったのだろうか。
またタイラーが「これはリアルなキャンセル・カルチャーだ」とCamp Flog Gnawにて起こったドレイクへのブーイング騒ぎを形容するように、アーティストとファンの関係性を憂う、その理由も理解できる。
(キャンセル・カルチャー = アーティストや有名人の、作品外での発言や行動が問題視され、人々がその作品・人物自体をキャンセル(いらない、受け入れない)とする動き)
彼女は現在、上記のツイートを削除しており「引退」が確定したというわけではないのでその点で騒ぎ立てる必要はないとは思うが、彼女に引退を考えさえるまで活動しにくい環境が作り上げられてしまっていることに私たちは危機感を感じる必要があるだろう。
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