Seigfried
Album : Blonde
Track : 15
Year : 2016
Produced by : Malay & Frank Ocean
Frank Ocean (フランク・オーシャン)の2016年リリースのアルバム『Blonde』から15曲目” Seigfried “を紹介します。
タイトルの” Seigfried “は、ドイツの英雄” Siegfried – ジークフリート “を彷彿とさせるワード。(eとiの順番が逆になっているため、実際には違うワード)
ジークフリートは黒髪長髪の、勇気あるドイツの英雄として語り継がれている人物。
この人物が、フランク・オーシャンが一時期付き合っていた男性Willy Cartier (ウィリー・カルティエ)と共通点があることから、彼のことを表した作品なのではないか。とファンの間では騒がれております。
ウィリーは、ジークフリートと同じく黒髪長髪で、フランス人ということでヨーロッパ系であることが共通しています。
また、リリックの冒頭には「君の肌に描かれた印(タトゥー)」「そばかすのある君の顔」と、まさにウィリーの容姿をそのまま表現したと思われるような、そんな内容が描かれています。
そんな彼とは、フランクはすでに別れてしまっているワケですが、
この曲では、一人の男性(おそらくウィリー)との別れ、性的マイノリティとして生きていく上での苦悩が描かれています。
苦悩に苛まれた彼の心には、男性との交際を続けていくことを辞め、女性と付き合うという「より簡単な」選択をした方が「楽」になれるのかもしれない。という考えがよぎります。苦しんだ彼の出した答えとは、一体なんだったのでしょうか。
[Verse 1]
The markings on your surface
君の肌に描かれた印
(フランクが付き合っていたとされるモデルWilly Cartierは全身にタトゥーを刻んでいます)
Your speckled face
そばかすのある君の顔
(同じくWillyのことです。彼の顔にはそばかすがあります)
Flawed crystals hang from your ears
耳からはクリスタルがぶら下がってる
I couldn’t gauge your fears
俺は君の抱える「恐怖」に気づくことができなかった
I can’t relate to my peers
仲間と自分を比べることなんてできないよ
(彼の恋愛対象の性別は仲間たちとは違います。もしくは「LGBTQアーティスト」というラベルを貼られることが嫌なのかもしれません。もちろん性的対象の違いとは関係のない意味とも取れます)
I’d rather live outside
俺は「外側」で生きていくのさ
(しがらみに取り憑かれた世界から解放されること。また、男と女が付き合うべきだ。という固定観念がはびこる世界から、外に出て生きていくということ)
I’d rather chip my pride than lose my mind out here
プライドなんて砕いてやるよ、ここで自分を失うよりマシさ
Maybe I’m a fool
もしかして俺はアホなのかもな
Maybe I should move and settle
もう辞めちまって、落ち着いた方がいいのかもしれない
(性的マイノリティであることを否定し、女性と付き合うことで楽になることもできる)
Two kids and a swimming pool
二人の子供に、スウィミング・プール
(いわゆるみんなの思う「理想の暮らし」です。2人の子供を持ち、プールのついた豪邸に住む。そんな家庭の形も幸せであると彼はわかっています)
I’m not brave (brave)
でも俺にはそんな勇気がないんだ (勇気がね)
(男性と結婚し、「理想の暮らし」像を捨てる勇気が彼にはない。もしくは、女性と結婚することで、男性との関係を諦めてしまうことへの恐怖です)
I’m not brave
俺は度胸なしなんだ
(タイトルの” Seigfried – ジークフリート “から。ジークフリートはドイツの英雄ですので、まさに「勇敢さ」そのものを表している人物です。そのジークフリートと自分を比べています)
[Verse 2]
I’m living over city
俺は都会に住んでるけど
And taking in the homeless sometimes
時々ホームレスを家に迎え入れるんだ
(ここでいう” ホームレス “は、広い意味合いで「居場所のない人」と捉えることができます)
Been living in an idea
一つの考えの中で俺は生きてきた
An idea from another man’s mind
他人の考えの中で、生きてきたのさ
(今まで信じてきた「一つの考え」とは、社会に当たり前に存在している考え方のこと。「聖書」を信じることなども正にその一例ですね)
Maybe I’m a fool
もしかして俺はバカなのかもな
To settle for a place with some nice views
美しい景色に囲まれて、そんな場所に落ち着くこともできるのに
Maybe I should move, settle down
辞めちまって、落ち着くべきなのかもな
Two kids and a swimming pool
二人の子供に、スウィミング・プール
I’m not brave
俺にはそんな勇気はないんだよ
I’d rather live outside
「外側」で生きていたいんだ
I’d rather live outside
「外側」で生きていたいんだよ
I’d rather go to jail
刑務所に入った方がマシなのかもな
I’ve tried hell (It’s a loop)
地獄に立ち向かってきた (繰り返しさ)
(” Solo “や” Nights “で語られていたような、繰り返しの毎日のことを「地獄」と表現しています)
What would you recommend I do?
俺はどうすればいい?君はどう思う?
(And the other side of the loop is a loop)
(「ループ」の反対は「ループ」なんだよ)
(” ∞ “の記号のこと。左右対称です)
This, this fe-, this feel
この気持ち、この感情さ
This feel, this feels
この気持ち、この感情は
This feels how molly must feel
まるでMollyをヤった時の心地だよ
(” Molly “はドラッグ・MDMAを意味するスラング。ドラッグでリラックスしている様子が浮かびます)
This feels how molly must feel
Mollyをした時みたいな感覚さ
How molly must feel, this feels how molly must feel
Mollyの感覚だよ、これはMollyをした時の心地みたいだ
How molly must feel
間違いないね
[Bridge]
This is not my life
これは俺の人生じゃないんだ
It’s just a fond farewell to a friend
It’s just a fond farewell to a friend
ただの「友への愛を込めた別れ」さ
(Elliott Smith ” A Fond Farewell “から。彼はドラッグ中毒を断ち切ることができず、自殺してしまっています。
フランクはこの曲で自信を生まれ変わらせようとしているように思えます。今までの人生に別れを告げ、新たな人生を歩むことを決意しているラインとも取れます)
This is not my life
これは俺の人生じゃないんだ
It’s just a fond farewell to a friend
友への愛を込めた別れ、それだけなのさ
It’s not what I’m like
そんなの俺らしくないだろ
It’s just a fond farewell (brave)
ただの愛を込めた別れだからさ (勇気を持って)
[Verse 3]
Speaking of Nirvana, it was there
ニルヴァーナの話をするよ、この目で見たんだ
(ニルヴァーナは「死後の世界」という意味。ここから「死」を意識させるような描写が登場します)
Rare as the feathers on my dash from a phoenix
車のダッシュボードにフェニックスの羽が落ちる、そのくらい珍しいことだけど
(フェニックスは死期が来ると「灰」になると言われているため、羽を落とすことはありません)
There with my crooked teeth and companion sleeping, yeah
そこには歯並びの悪い俺のツレも乗っててさ
Dreaming a thought that could dream about a thought
「” 夢 “を見れるように」って、願ってたんだ
(ここからかなり抽象的な表現が続きます。「神からの栄光」を手にしたい彼は、夢の中でそれが得られることを願い、夢見ることを願います)
That could think of the dreamer that thought
その夢では、頭で思い描いた” 夢見る人 “を思い浮かべることができて
That could think of dreaming and getting a glimmer of God
夢見ることを思い描けば、神が微かな光を与えてくれるんだ
I be dreaming of dreaming a thought
俺は「夢見ること」を夢見てる
That could dream about a thought
ある「一つの考え」を、頭の中に思い描けるような、そんな夢をね
That could think of dreaming a dream
そうすれば、夢を見ることを思い描けるんだ
Where I cannot, where I cannot
俺には不可能な夢も。俺には不可能な夢でもさ
[Verse 4]
Less morose and more present
不機嫌はやめて、もっと前(present)向きにさ
Dwell on my gifts for a second, a moment
一瞬だけ、ほんの少しだけ、自分に与えられた物(present)を思い浮かべる
One solar flare, we’re consumed
太陽フレア一つで、俺たちは消えちまう
(太陽における爆発)
So why not spend this flammable paper on the film that’s my life?
映画に出て来るような、燃える紙は使っちまうんだ、それが俺の人生だろ?
(昔、映画を撮影するカメラのフィルムは、” ニトロセルロース “という非常によく燃焼する可燃性の物質から作られていたそう。” flammable paper “というワードはマリファナの巻紙も彷彿とさせます)
High flights, inhale the vapor, exhale once and think twice
ハイになるまで飛び立って、蒸気を吸い込む、一息吐き出して、もう一度考えてみる
Eat some shrooms, maybe have a good cry about you
マッシュルームを色々食べたら、君を想って涙が出てきたよ
(マジック・マッシュルームのこと。ドラッグです。男性と付き合うことを、辞めれば楽になるかもしれないと考えていた彼も、結局その男性のことが好きで涙を浮かべてしまうんですね。どんなに辛くても彼への思いを諦めきれないんだと)
See some colors, light hang glide off the moon (In the dark)
いろんな色が見えるよ、月から光が滑るように放たれるのが見えるんだ (闇の中でね)
[Outro]
(In the dark)
I’d do anything for you
(In the dark)
I’d do anything for you
(In the dark)
I’d do anything for you
(In the dark)
I’d do anything for you
(闇に包まれて)
君のためなら何だってやる
(In the dark)
I’d do anything for you, anything for you
(In the dark)
I’d do anything for you, anything for
(闇の中で)
君のためならどんなことだってする、どんなことだってね
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