Complexl
DECEMBER 15 , 2019
1983年、南ロンドン・ペッカム生まれ、UKラップ・シーンを代表するMC、Giggs(ギグス)はロンドンのアンダーグラウンドをレペゼンしながら、世界中の注目を集めている。
彼のルーツはストリートにある。
10代の頃からギャングに所属し、強盗や銃の所持により逮捕、投獄され、釈放後も生きるためにストリートで生きていくほかなかったという過去を持っている。
その後ラップを本格的に始めた彼は2008年、スタジオ・デビュー・アルバム『Walk in da Park』をリリース。独特のリズムに乗せた低いトーンの声はストリートに生きる上で覚悟しなければならない「冷たさ」を感じさせる。
彼の人気はそのスタイルとは反比例し、アンダーグラウンドだけには止まらなかった。Drake(ドレイク)が2017年にリリースしたアルバム『More Life』に2曲客演として参加したことにより世界的にその名前は知り渡ることになるのだが、自身の出自を知らないリスナーたちには想定していなかったリアクションをされたこともあるようだ。
フレンチ・モンタナ、ジェイダキス、リル・ヨッティ、スウィズ・ビーツなど多くのアメリカ人ラッパー / プロデューサーたちをゲストに迎え、今年2月にアルバム『Big Bad…』をリリースしたばかりの彼がBeats 1のインタビューに出演。
MCにドレイク『More Life』の参加曲について尋ねられた彼は、自身が受けたリアクション、リリックにはどのようなバックグラウンドが込められているのかを明かしてくれた。
“ KMTは、今までサバイブしてきた暗い日々を語ってる。「バットマン」を引用したのは、ギャングのメンバーが全員黒い服に身を包んでいたからだ。バットマンと聞くとジョークのように感じるかもしれないけど、そうじゃない。”
MC : でも大多数の人はそういう歴史背景を知らないよね。
“ 勿論そうだね。でも俺は気にしてないよ。気に入ってくれたなら調べてくれればいいよ。”
彼が” KMT “のリリックで「バットマン」を引用したのは、彼が所属していたギャングPeckham Boysのメンバーが真っ黒の服を常に纏っていたからであることに多くの人は気付かず、ジョークのように受け取られてしまったそう。
彼がこの作品で伝えようとしたのは、ロンドンで自身が過ごしてきたストリートのリアルについてだ。
アーティストの持つバックグラウンド、背景を知らないまま楽曲を聴けば「ジョークである」と大事なメッセージを見逃したり、聴き逃してしまうということが起きてしまうことが良くわかる例だろう。
ギグスは大多数のリスナーの声を理解しているものの、インターネットなどで調べることが「ラップ・ディベート(ラップを通じてアーティストとリスナーの間でメッセージを交わす)」ができるとも語っている。
勿論、音そのものを楽しむという音楽の聴き方も素晴らしいとは思うが、お気に入りのアーティスト、ラッパーの音楽を聴く際には、彼らの過去を知っておくことで、新たな発見ができたり、彼らが伝えたいメッセージを受け止めることができることは多いということを考えさせてくれるインタビューだった。
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