Nicholas Hunt/Getty Images
OCTOBER 10 , 2019
Def Jam Recordings の創始者であり、数々のアーティストを手がけてきたプロデューサーRick Rubin(リック・ルービン)、「ワシントン・ポスト」の元ニューヨーク支局長を務めたビジネス作家Malcolm Gladwell(マルコム・グラッドウェル)、「ニューヨーク・タイムス」の編集者Bruce Headlam(ブルース・ヘッドラム)がホストを務める音楽をテーマにしたPodcast「Broken Record」をご存知だろうか。
数々のアーティストをゲストに迎え、シーズン3を迎えた番組の最新エピソードに登場したのは、今年のベスト・アルバムの声も挙がっている『IGOR』を5月にリリースしたTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)。
(Broken Record)
「” 良い音楽 “とは音楽を聴くだけではなく、アーティストとオーディエンスの対談を聞けば直感的にわかるものである。
Broken Recordsはライナーノーツ(音楽レコードやCDに付随している冊子等に書かれる解説文)なしにそういった新たな対談を始めるPodcastだ。」
とホストとアーティストが語り合う形で作品への理解を深めていくこの番組で、タイラーは作品を作る上でのプロセスを語ってくれた。
中でもラップ・ミュージックの重要な要素であるソング・ライティングについてラッパーのリル・ウジ・ヴァートの音楽性、彼とのスタジオでの出来事を引用しながらこう語った。
(イントロ” IGOR’S THEME “のフックはどんな風に作り出したんだい?という質問に対し)
「リル・ウジとスタジオに一緒にいたんだ。
(“ IGOR’S THEME “はリル・ウジ・ヴァートを客演に迎えている。)
ちょうどその曲を作っている最中だったんだけど、どんなワードをリリックに入れるか思いつかなくてね。
彼がメロディをピアノで弾いて、そこに言葉を入れ始めたんだ。まさに「即興」って感じでね。そこには「声」があった。それが「曲」だろ。
言葉には特に深い意味もなくて、「声」だけがそこにはあるんだ。それが俺の求めていた全てだった。それまでそんな方法が上手くいくとすら思っていなかった。
俺はまずビート。そのあとにメロディ。そしてリリックだ。多くの人が違う優先順位を置いているように思うんだ。」
リル・ウジ・ヴァートと過ごしたスタジオでの出来事から、リリックについての考え方を変えたタイラー。続けて、
「俺も恐ろしくリリカルな曲を出したこともある。
でも俺は曲の音色が好きだから、まずそこに耳を傾ける。次にメロディとフロウ、最後にリリックだ。ワードよりもサウンドの方がより重要だと個人的には思ってるんだ。」
と音楽において彼は、詩的な表現よりも「音色、メロディ、フロウ」と直感的・本能的に良いと感じる部分をより重視していると語った。
確かに『IGOR』は以前の作品よりも、複雑な言葉遊びが減り、単調なフックが増えたように思える。
先日当メディアの連載「Rappers Dictionary」にて紹介したプレイボーイ・カルティも同じように「単調なフックを繰り返す」という特徴があったが、リリックを重視する従来のラップ・ソングの枠組みを超え、音色・メロディやフロウそのもので感情を伝えるという手法を取るラッパーが増えていることは間違い無いだろう。
「Broken Records」のフル・エピソードは以下から視聴することができる。
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