FRANK OCEAN – page 2 –
えっ本当に?
いや、別に怒ってないよ。(笑)
ロッキーが何を間違えたかさえ、覚えてないし。
でも正解はもちろん覚えてるよ。それを聞いた時笑っちゃったよ。
だって俺「それを言うやつロッキーくらいだろうな」って思ってたから。
だって誰にも本当の話をしたはずないからさ、ロッキー以外にはね。
俺と彼で一回その話をしたんだ、その件が起きたすぐ後にね。俺たちはただビジネスの話をしただけさ。
その件が色々騒がれていたことは間違い無いんだけどさ。
ユニバーサルはそれ以降、権利を独占することはなくなって、それから俺はその話について聞かれることがあって。
でも俺、人に話をあんまりするタイプじゃ無いから。話したのはロッキーだけでさ。彼にはその件を話したよ。
先に言っとけど、あのシチュエーションは2度と起こることがなさそうだから、俺のアドバイスが参考になるかは、わからないね。
じゃあもう少し抽象的な話をするよ。
アーティストとして音楽ビジネスの中で、どうやって自分自身を守ってる?
そうだな、デカい音楽会社と関わってると、みんな…「最初に持っている美しさ」を奪われてしまうんだ。
いつもアートのビジネス的なサイドを意識してさ。
自分の作品をある程度客観的に見たり、丁度良く商品みたいに扱わないといけないだろ。
目的がどれほど” 純粋 “かはわからない。自分が何を求めているかだね。
音楽業界でのキャリアについてたくさんの人と話したけど、成功のためのアイデアにはノスタルジア(過去の作品)が必要なんだ。みんなすでに得た成功持っていないといけない。何年もの間、人前に示してきた作品こそが、” 成功に満ちたキャリア “を表すものになるのさ。
そうすると、経験をして行くことで、” 現実とは何か “が理解できるポイントが現れるんだ。
そしたら誰しもがハッキリわかるだろ、そのポイントが現れると「具体的にいくら稼いだか?」と同じぐらいの具体度で成功が理解できるんだよ。俺は、そのポイントが何よりも明確に「成功」を証明できるモノだと思うな。
X地点(目標)が、再生回数とか売り上げの合計なのかどうかはわからないけどさ。
たとえライブが売り切れになっても、自分の決めた目標に到達できるとは限らないだろ。そしたら、何のためにやるんだ?ってハナシでさ。
このハナシは正に、俺が自分の人生やキャリアで「決断」をする方法さ。
もし尋ねられたら、俺は誰にでも自分の哲学をシェアしてるけど。
俺にとっては、
「なぜこれをやっているんだ?」
「これをやってどうなる?」
「これをやることで、どうやったら俺は具体的に欲しいものが得られるんだ?」
「これをやる上で、得れる成功ってどんなものになる?」
「これをやる上で、陥る失敗ってどんなものか?」
ってことが重要なんだ。これが今、俺の考え方だよ。
今では、自分自身で音楽を制作するのは、昔より簡単になった?周りのアーティストとコラボレーションするのは好き?
” 何をしているか “によるね。リリックを書いてる時は、バキューム密封容器の中くらい孤独にやりたいけど(笑)。
俺は一人でやりたいんだ。もしヴォーカルをやるなら、エンジニアのCalebと一緒に自分自身でやらないといけないし。
彼は長いこと一緒にやってるから、壁紙のように存在感を消すことができるようになったみたいでね。
彼は一緒にいて落ち着くよ。だから俺は一緒に腰をかけて、リリックを書けたりもできるしさ。
ロッキーの前のアルバム(『Testing』)では、一緒に曲(” Purity “)をやったけど、それが良い例だよ。
スタジオに行って、彼がLauryn Hillのサンプルを流して、俺にバースのスペースをくれたんだ。
俺はとにかく即興でバースをやって、曲に入れ込もうとしてた。それって正に一人でやることだろ。
ヘッドホンで曲を聞いてさ、ビートが繰り返し流れてね。
頭の中で言葉を繋ぎ合わせて、バースをとりあえず口にしてみる感じだよ。
それが俺のやり方かな。多分みんなも、ひとまず何バースかやってみて、ループを1小節置く。
で、また次のラインに行って、それぞれを繋ぎ合わせるってのはやるんだろうけどさ。それがバースになる感じだよ。
でも時々は、観客のエナジーを感じるよ(観客にいてもらう)。
たとえ彼らが何も言わなくても、アドレナリンとかで伝わるんだ。
そういうパワーがパフォーマンスを高める最高のカクテルになって、良いものを生み出せる、そんな化学反応が起こるんだよ。そこがいつもみたいにリラックスして、落ち着いている時よりも良いポイントかもね。
観客のいる環境で制作(ライブ)を長い間していることで、自分の中で曲の「興奮」の部分を組み立てられるようになったんだ。
言いたいことが言えるからなのか、出したいメロディが作れたからなのか、とにかくテンションが上がるね。
でも人前で制作をするのは特別な何かがあるって、常に思ってるよ。
でも家族がいると、ちょっとリスキーかもね。「おいおいバカできねえじゃん」ってなるから。
家族の前では完璧でいないと。
他の人にリリックを提供したことで、何か学んだことはある?
あぁ、考えてみるよ。その質問は聞かれたことなかったな。
どうやったらより早く書き上げられるかを学んだよ。信じられるかな(笑)
スタジオの中で、どうしたら早く仕事を終えられるかを学んだね。
その時のことを思い出すよ。L.A.のFedExで昼間は働いて、夜はスタジオにこもってた。
そこにはカンザス出身の奴らが何人かと、バレー(サン・フェルナンド・バレー)に住んでるアーティストたち何人かと一緒にやってた。ブライアン(アーティストの一人)のアパートで仕事をしてて、そこにパソコンを置いて帰っちゃったんだ。
そしたら次の日に彼が言うんだ「エイ、パソコン取りに来いよ、俺はハリウッドのEdmonds Tower(有名なレコーディング・スタジオ)に行く予定があるんだ。そこの外で会えるから、渡せるよ」ってね。
だから、車を駐めて歩いていったんだ。そこに彼ともう一人の男がやってきて、そこで彼からパソコンを手渡されて。
俺が帰ろうとしたら、彼と一緒にいた男が「Yo、お前リリック書けるんだってな、今日ここの2階でパーティをやるんだけど、そこにライターとか、プロデューサーが集まるから、何曲か披露したら良いよ」って言ってくれてさ。
パソコンの中には、俺の曲が全部入ってた。好都合だったよ・
だからそこでソングライターやプロデューサーたちと繋がれたんだ。何人かは名前も顔も知っているような人たちをね。まあ大半は知らなかったんだけど。正直言うとね。
そこにはビリヤードの台が一つあるだけで、みんなかかる音楽に夢中だった。だからパソコンを繋げて何曲か流したんだ。
そしたらそこにいた人にかなりウケてさ。自信と不安が織り混ざった変な気持ちだったよ。
パーティの後、ブライアンと一緒にいたあの男が「レコーディングしたかったら、いつでもここを使ってくれよ」って言ってくれて。
その時の俺にとって彼は命の恩人だったよ。ちょうどその時デモ・テープのレコーディングをするために、スタジオをお金払って借りてたから。
そんな感じで、それから毎日そこに行き始めて。
最初の日、そこについてスタジオの中にいたんだ。
そしたら不安な気持ちになってきたんだよ。って言うのも、人が突然スタジオに押し入ってくるのさ。
違うレーベルのアーティストたちが曲作りで来るんだけど。
だから、曲を書いてる時、バースの半分までいったのに、書き上げられないことがあって。
「なんだよ、完成させられないじゃねえか」って感じだった。
そしたら彼が歩いて来て「何曲できたんだ?」って声をかけて来た。
俺は「バースの半分までは書けたよ」って答えた。
そしたら彼、俺の方を見て言うんだ「半バース書くためだけに、ここに来るんじゃねえよ」ってね。
えぇ、マジかよ。
だから彼に書いた半バースを聞いてもらったんだ。
そしたら彼が「いい感じだな、この出来ならここでやってもいいぜ」って。だから留まったけど。
でも、その頃から本当に理解し始めたんだ。どうやって曲を書くかをね。
結局、何年かソングライティングをやって、少なくとも何曲かは、4時間くらいで完成できるようになったんだ。
地道に学んだよ。何個も何個もデモを書いてね。
まるでニューヨークのBrill Buildingみたいな話だね。
Carole Kingみたいなソングライターは1日に5曲も書いてたらしいし。
きっとその経験は君にとって素晴らしい知識になったね。
そうだね、その通りだよ。
でも確実にライターとしてつまづいた時期があったんだ。本当に一度しかなかったんだけど。突然さ。
いつもなら、たくさん書けるんだけど、物事を繋ぎ合わせるのが難しいんだ。言いたいことを全て一つにまとめ上げるのが、できなくてね。
Podcastの『Dissect』(音楽の批評チャンネル)で、君のアルバムについて語ってるのを聞いたことある?
知ってるよ、でも彼との距離感が近すぎるんだよ。だから聞けないね。多分良いことしか言ってくれないだろうから。
でもそういう批評とかを聞けば、まあイメージできるかな…やっぱ変だな。
『Blonde』の” Good Guy “について話すよ。
こういうラインがあるよね
「ここが君の連れて来てくれたゲイ・バーさ」
ずっと知りたかったんだけど、このバーってどこのこと?
Boxers(ニューヨーク)ってとこだよ。
君の身近な友達たちに共通している、特徴みたいなものってある?
信頼できること。
いつもデートはどうやってしてる?マッチングのアプリとかは使うの?
マッチングアプリは使わないな。もう3年くらい交際してる人がいるから。
でもその前もアプリとかは使ってなかったよ。
これからも多分使うことはないだろうね。
俺はMarc Jacobsの哲学が気に入ってて、それを無視できないから。
(Marc Jacobsも彼と同じく性的マイノリティです)
マッチングアプリで有名になるには、ちょっと忙しいし。
イメージできるよ、君にはやることが多すぎるね。
そうそう。
New Schoolで勉強したいって話していたことがあったけど、まだやりたいって思ってる?
ああ、まだ学校で学びたいね。
「成人の空想」についてまたカレッジで勉強したいよ。
でもまあ、今はフランス語をやってるんだ。
わかるでしょ、正直、それくらいが仕事以外でできる精一杯だから。
もし時間が巻き戻せて、『Channel Orange』のリリース前の自分に会ったら、何て言う?
今までタイムトラベルしたことないからなぁ。
副作用で死んじゃうのが怖いし。
その時期は特に、すごくデリケートな時期だったね。
でももし、君の言うような、ありえないシナリオが実現できるなら、「カメラを買って、たくさん写真を撮れよ」って自分に言うかな。それかいっつも写真を撮ってるような友達を作っとけって言うかもね。
少年時代の写真とか、人生の要所要所で写真を全部撮っておくのさ。
そうやって全てを写真に収めてる人が、マジで超羨ましくてさ。
俺はそういう感じじゃないから。
あちこち歩いて、大統領と出かけたりさ。あぁ昔の大統領だよ。今の大統領じゃない。
人生に一回あるか、ないかの瞬間さ、写真を撮っておけば良かったなって思うよ。
オバマと会った時に、写真を撮らなかったってこと?
写真はあるんだ。でもちゃんとした質の写真が撮れなくてね。
集合写真を撮ろうってハナシじゃないんだけど。
もっとイケてるバージョンだったら完璧だったなって。
あれはA1(見出し)並みの瞬間だったよ。
ちょっとこれでは長すぎるから、やっぱり過去の自分に伝えるなら、ちょっと大げさに、
「たくさん写真を撮って、自分の周りに何が起きてるかを収めておけよ」って言うね。
同じ質問だけど、もし過去に戻れたら、バタフライ・エフェクトなしでね。
『Blonde』の出る前に戻れたら、君は何て言う?
あぁ、その時は写真は結構撮ってたからね。
何か変えることあったかな。あれはほんの数年前だし。
多分「起こる裏切りに対して、きちんと準備しとけ」って言うかな。
でも言わないかもな。その時でさえ、その準備はできてたように思えるし。
旅行に行った時のちょっとアホみたいな話なんだけどさ、あの旅行を4週間以上行くべきだったなって思うよ。
俺と何人かの友人と行ったんだけど、もう少し長くいれば良かったな。
だから何て言うかは微妙なところだけど、「きちんと備えること」「たくさん休みを取ること」以外かな(笑)。
何年か前にツイッターのアカウントを消した時、ファンが君に理由を聞いていたよね。
君は一言で「直感」と答えていたけど、あれは君にとってどう言う意味だったの?
だいたい自分の思ってるよりコントロールって効かないものでしょ?
十字路でどっちの道が正解かわからない時、いろんなやり方があると思うけど、俺の経験上、直感が進んで来るべき道を示してきたように思えるんだ。それが本当に上手く行ったね。
何か自分の「直感」への信頼を強くさせるような出来事があったの?それとも常にそんな感じ?
直感をより信じることが、俺の中でずっとトレンドでさ。
自分の直感にできるだけアクセスするよう心がけてる。俺の人生は決断だらけだし。
毎日毎日、何かしらクリエイティブな選択肢があるんだ。
例えば、曲の編曲だけでも、山ほどのチョイスがあるでしょ。
それぞれのラインは、一つ前のから繋がってる。調律も、絶対に繋がってるし、本当にたくさん選択肢はあるんだ。
無限の可能性をみんな持ってる。メロディ一つとっても無限の方法がある。
コード進行の方法もたくさんあって、フレーズの取り方も無限大さ。
たとえその決定が無意味に近くても、一つ一つの決断において、俺は直感にアクセスしてるんだ。
もっと大きな物事では特にそうだね。
さっき話したような『Blonde』や『Endless』のビジネス周りの話をそうだし。
俺の周りの人はみんな知ってるだろうけど、あの時俺は冷静じゃなかった。
あの件は起こらずに済んだことだったのにさ。
俺より年上で賢い人が俺に言ってくれたんだ「お前おかしいぜ、そんなワケないだろ」ってね。
でもその時に、こうも言ってくれたよ「いや大丈夫さ、きっと上手く行く、イケてる作品になるぜ」って。
そんな感じかな。上手くいかないとは思ってなかったけど。そういう風に感じたこともあったから。
直感って簡単じゃないよね。
みんな君のことをクレイジーって言ったり、物事を簡単に推し進めたがるし。
そうだね。それは俺を守るための口実だと思う。
俺がクレイジーって言ってきた人は、ある意図を持って俺に伝えてきてるワケだから。
みんな俺の制作を妨害したいわけじゃないんだ。時々みんなが物事をどう見てるかわからなくなるよ。詰まるところ、いつもそうなるんだけど。
自分の考えを世の中にリアルなものとして公表するまでは、その考えは自分のモノでしかない時があるんだ。
それを発表すれば、みんなそれを見て、賞賛したり、賛成してくれたりするんだよ。
思うに、それって信頼の問題だろ。疑うことの便益を他人に与えるのさ、彼らがその物事について考えてくれている時にね。ただ人の意見を聞いて鵜呑みにするのは良くないよ。
「おい、その意見は馬鹿馬鹿しいよ」って一旦考えたり、
「OK、君を信じるよ、俺の見てない何かを君が見てるなら、それを納得するまで説明して欲しい」ってちゃんと言うことが大事だと思う。
だって俺は物事を世界に導く、その道を知ってるから。そうするためには、みんな自分の中でプロセスを踏まないといけない。
自分自身でその発見をしておかないとね。
何か読者に伝えたいことってある?彼らが知らないであろうことで。
そうだな、ウィキペディアでは俺の身長は5’10(177cm)だけど、本当は6’1(185cm)だよ。
子供達(ファン)には身長くらいちゃんと教えないとダメだろ(笑)
俺の未来に関わることだからね、俺の輝きを奪わないでくれよ。
じゃあみんなレコードをセットして。
もちろん6’1のフランク・オーシャンのレコードよ。
今日はお話してくれてありがとう。私たちにとってA1(見出し・一番)の瞬間よ。
こちらこそありがとうね。
All texts and photos credit to gayletter (https://gayletter.com/ )
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