GETTY IMAGE
NOVEMBER 09 , 2019
フランス・リール生まれ、3歳からサウス・ロンドンに移り住み、その人生の大半をロンドンで過ごしてきたラッパーOctavian(オクタヴィアン)。
多くのアーティストを輩出してきた名門「Brit School」を中退、ドレイクやスケプタ、ヴァージル・アブローに認められるラッパーとなるのに、それほど時間はかからなかった。
1996年生まれ現在23歳のアーティストは2016年にファースト・ミックステープをドロップしてから「3年」という短い期間で英国の音楽業界関係者が選出する BBC Sound of 2019 を獲得。UKヒップホップ / グライム界のキング、スケプタとも共演するなどまさに今、世界中から注目されているラッパーだ。
数ヶ月前、トラヴィス・スコット率いるCactus Jack(カクタス・ジャック)と契約を結んだラッパーがComplexのインタビューに登場。6月にリリースした最新ミックステープ『Endorphin』、ファースト・アルバムについて、将来のビジョンを語ってくれたので紹介していこうと思う。
彼は元々といえばミュージカルの道に進むべく「Brit School(アデル、トム・ミッシュ、キング・クルールなどを輩出する名門)」に通っていた。結局は音楽の道に進むべく、中退することになるのだが、それまで特別、楽曲の製作などは行なって来なかったはずだ。
10代の終わりから音楽の製作を始めた彼。2017年にリリースした” Party Here “がドレイクの目に留まり、ソーシャルにシェアされたことから、その躍進は始まった。音楽の製作を始めてから、1年が経った頃だ。
スケプタ、マイケル・ファントムをゲストに迎え、今年2月にリリースした” BET “はすでに1300万回以上再生されており、彼のリスナーはUKだけではなく世界中にいる。
ここまで「速く」成功を納められたのはなぜなのか。インタビュアーが現在までのキャリアを彼に尋ねる。
” 遅いね。全く速くなんかない。
俺はかなり長い間、この音楽をやってきた。4年間だ。みんなにとっては速く見えるだろうけど。
何年もやってきた、でも世界には俺のことなんか知らない人がいる。きっと世界の80%は知らないだろ。いや98%かもな。みんなが俺の成功を速いと思っても、それは俺のバックストーリーを知らないからだ。”
HYPEBEASTのインタビューによると彼は15歳の頃、母親に家を追い出され10代の終わりまで公団住宅を転々としていたそう。
その成功の裏には様々なバックストーリーが隠れている。
“ I rap ‘cause I’m from no sirens, just sirens and the guns and violence
沈黙なんてない場所で生まれ育った、だからラップをやってるんだ。サイレンと銃撃、暴力に包まれた場所で生まれ育ったんだ- Party Here “
「98%が俺を知らない」と答えた彼だが、同時に残りの2%中にいるファンたちのことを「カルトのようだ」と形容する。世界中から注目されることにプレッシャーは感じないのだろうか。
” プレッシャーはずっと感じてた。でも今は変わった方法で対処してる。ハードワークすることを利用してモチベーションにしてるんだ。 “
ハードワークすることをモチベーションの源泉にしているオクタヴィアン。自分の可能性を信じ、突き進む彼だが、インターネット上のファンや批評家からのレビュー、評価、意見などを全てチェックしているのだと言う。
” ストリートに裸で出かけないだろ。みんな靴を磨いて外に出るわけだから、「人の目は気にしない」とは言えないね。
だから俺は他人の意見を重要視してる。特にアーティストとしてね。
結局のところアーティストは注目を浴びなければ終わりだ。
俺は人の意見を気にしてるし、その意見が俺を導いてくれる光だと祈ってるよ。俺はその光のためにハードワークしてる。だから全ての意見に目を通してるよ。どうすればより良くなるかってね。自分のために他人の意見を見てるんだ。ビジネスと一緒で、何が必要とされてて、何が必要とされていないかを見極めないといけない。
俺はマーケティングの話をしているのであって、作品自体の話をしているんではないよ。音楽は変わらない。俺はビジネス的な側面の話をしてるんだ。 “
リスナーたちの意見を「光」と形容する彼。その売り出し方(マーケティング)を常に研究し続けることが重要だと彼は語る。
最新ミックステープ『Endorphin』はリリースから5ヶ月ほどが経ったわけだが、おおよそ作品の評価などはインターネットに出揃ったであろう。彼は最新のプロジェクトを振り返って何を思ったのだろう。
” 実は『Endorphin』の収録曲は全て元からコンピューターの中に入っていたものなんだ。
でもその楽曲をどうやって公表するかわからなかった。上手いことその作品を送り届けることはできたんだけど。
『Endorphin』で残念だったのは、同時に色々なクリエイティブ(楽曲)を作品に取り込んだせいで、一つの「大きなもの」を作り上げることができなかった。結果としては俺たちはあのミックステープを売り出しすぎてしまった。
「10曲あって、捨ててしまうには勿体無いし、でも正式にリリースしたいわけでもない。」
だからマーケティングとして賢くあるべく、アルバムにはせず、10曲のミックステープに入れて販売したんだ。
でもそれが今まで一番売れちまったってワケ。まさかそこまで売れるとは思っていなかった。アルバムのようにプロモーションを行なってしまったからだ。「『SPACEMAN』の方が良かった」ってコメントがあったあけど、あれは捨てるはずの曲だったんだ。”
6月にリリースされたミックステープ『Endorphin』はセオフィラス・ロンドン、エイサップ・ファーグなどを迎えた非常に豪華で、聞き応えのある作品だったが、彼にとってはあくまで「未公開曲集」という位置づけの作品だったようだ。
となると、彼の言う「大きなもの(アルバム)」をつい期待してしまう。彼は現在製作中と思われるデビュー・アルバムについても明かしてくれた。
” 本当にもうすぐ完成間近だよ。半端ないものになるぜ。嘘じゃないさ。
「売れすぎるかも」なんて気にしなくてもいい作品だ。クレイジーなことになる。
俺が今まで学んできた全てがこのアルバムに詰まってる。
『Endorphin』とは全く違う作品になるね。アルバムにふさわしい、リアル・ミュージックだ。”
インタビューの最後に彼は今後のキャリアについて明かした。ヴァージル・アブローから直々にオファーを受け、ルイ・ヴィトンのランウェイを歩いた彼だが、音楽以外の活動も積極的に行なっていくのだろうか。
俺は世界で一番のアーティストになりたいんだ。トップ・オブ・ザ・ワールドにね。
見えを張っているようだけど、言うよ。俺は本当にただ世界で一番になりたいだけなんだ。
ここ5年間、俺は「ベスト」になることに執着してる。だからファッションか、レーベルか、ビジネスかわからないけど、やってやる。
音楽は若者のスポーツだ。だからOG(業界の年長者)になったらすぐ辞めるよ。もうインスタグラムをリスペクトする必要も無くなるんだ。放り捨ててやるのが待ちきれないね。 “
「どんな業界かはわからない、ただ俺は「世界一」になる。」
23歳のラッパーが言い放った言葉には自信と、大きな野心が伴っている。年齢やキャリアなんてものは関係ないのだろう。
彼はホームレスとなり公営住宅を転々とする中で「全てを見てきた」と過去に語っている。ベストになることに執着し、普通に見えば4年という「圧倒的なスピード」で音楽界を駆け上っているように見える彼は、それでもなお、自身のキャリアの成長を「遅い」と振り返る。
来たるニューアルバムが楽しみなのはもちろん、彼の20代・30代、そしてその先が見てみたくなる。その自信・野心・才能を持ってすれば、きっと「ベスト」を掴みとることができるだろう。
Complexのインタビュー全文はこちらからチェックできる。
Recommend