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GQ

ファレル・ウィリアムス、リック・ルービンとの対談にて

20年間でヒップホップに起きた変化、音楽においての著作権問題を語る

NOVEMBER 08 , 2019

デフ・ジャム・レコーディングの創設者、コロンビア・レコーズの共同社長を務める音楽界の重鎮プロデューサー、リック・ルービンが所有するスタジオ「シャングリ・ラ」。

カリフォルニア州ロサンゼルス / マリブに位置し、数々の有名アーティストたちがレコーディングを行ったスタジオに2000年代以降のヒップホップ・R&Bの躍進を先導してきたアーティスト、ファレル・ウィリアムスが招かれ対談が行われた。

NYのマガジン「GQ」がホストとなり二人によって語られたのは、ここ20年間で起きた音楽界、ヒップホップ・ミュージックの変化、ファレルがプロデュース/ライティングを務め2013年にリリースされた” Blurred Lines “の著作権侵害に関する裁判から音楽界の将来を語るものなど、様々な話題に及ぶ。

コードの進行は今までにない感情を呼び起こす。コードはまるで服のコーディネートのようで、自分を新たな場所に連れて行ってくれる。– Pharrell Williams “

スタジオの美しい庭で行われる対談中、二人は音楽への愛を覗かせながら、楽曲の製作を行うプロセスを語り合う。

Pharrell Williams :
「その感情を思い起こすんだ。コードを聞いたその時に感じたフィーリングを覚えておく。あとはShazamを使うことかな。」

Rick Rubin :
「Shazamはどれほど重要なのものかな?」

Pharrell :
「ギフトだよ、ゲームを変えた。Shazamで知った曲を何度も何度も繰り返し聴く。そこで自分が何を感じたか、自分のフィーリングを理解するんだ。なぜ自分の感情がそういう方向に動くかを理解する。
そこにはサイエンスがあるはずなんだ。「どんな風な曲が流れるか」と「聞いた人がどんな感情を抱くか」の間にはね。
だからこそ自分自身を分析してる。」

音声を携帯のマイクで拾い、データベースから曲名を提示してくれるソフトウェアShazam(シャザム)が2008年に登場して以来、彼の中で楽曲を作るプロセスは大きく変化したという。
今では当たり前となった技術も、一般的に用いられるようになったのは彼らがプロデューサーとして楽曲を製作し始めてから随分経ってからだ。

話題はヴァージニアで生まれ育ったファレルが幼少期・青年期に聴いていた音楽に移っていく。
スティービー・ワンダーや、プリンス、アース・ウインド&ファイヤー、ジェームス・ブラウンを聴きながら育ち、青年期にはリック・ルービンがプロデュースを務めていたLL クール・Jに夢中だったと語る。

Rick :
「今の人はもうヒップホップを聴くことがどれほど難しいかを忘れてしまったよね。当時はアンダーグラウンド中のアンダーグラウンドだった。」

Pharrell :
「そうだね。何度も抑圧されてきた。でも白人のキッズたちが好きになりすぎたかな(笑)。」

Rick :
「(笑)」

Pharrell :
「人種のせいでヘイトすることがなくなったってことだよね。そこが変わったと思う。
だからこそもう抑えることはできなかった。ヒップホップは大きすぎたし、ストロングすぎた、そして美しすぎたから。」

Rick :
「そもそもなんで人はヒップホップを抑圧しようと思ったのかな?」

Pharrell :
「理解していない人がいたからだと思う。もちろん俺の意見だけど。このカルチャー/音楽がどこから生まれたかを理解していないんだ。
どこから生まれたかを知らなければ、本当の意味で「なぜ必要か」を理解することはできないと思う。
ヒップホップをサポートする必要性をね。
もちろん、沢山のお金がそこで生まれるからサポートする人も出てきたけどね。でも明らかに状況は変わったよ。」

現在アメリカではヒップホップ・ラップミュージックがロックなどの主要ジャンルを抑え、最も消費されている音楽ジャンルとなっている。しかし彼らのいう通り、当時ヒップホップは「アンダーグラウンドの中のアンダーグラウンド」だった。

ファレルやリック・ルービンのような偉大なプロデューサーたちが語る業界の変化は非常に興味深い。
それまでヒップホップという音楽を批判してきた人たちがその必要性に気づくには、どんな場所でその音楽が生まれ、どんなバックグラウンドがそこにあるかに気づくことが重要だとファレルは語る。

日本でも現在ヒップホップ・ラップミュージックへの熱は年々高まってきている。もちろん全てを日本に置き換えることは難しいが、アメリカでいかにヒップホップがNo. 1ジャンルに躍り出たかを前提に考えると、ファレルが語るように表面的ではない「バックグラウンド」やその音楽に込められた想いが伝わらなければ、誰かに抑圧されたままトップには登れないのかもしれない。


二人の対談は2013年にリリースされた” Blurred Lines “がマーヴィン・ゲイの” Got To Give It Up “に似ているとして著作権侵害をマーヴィンの遺族に訴えられ敗訴したことに移っていく。

この楽曲はファレルがプロデュース・ライティングを務めているため、まさに彼は著作権の侵害を訴えられた張本人というわけだ。

Pharrell :
「さっきも言ったけど、俺は見た目は違うけど、同じ感情を抱くような建物(音楽)を作ってる。” Blurred Lines “では問題を起こしてしまったけど。」

Rick :
「バカバカしい問題をね」

Pharrell :
「スティービー・ワンダーがこう伝えてくれた。「きちんとした音楽学者を呼ばないといけない。陪審員は理解しないから。君のやっていることはすごくテクニカルだ。」ってね。」

Rick :
「曲自体は似てはいないよね。」

Pharrell :
「ああ。でもフィーリングが似ているみたいだ。フィーリングに著作権はつけられない。

Rick :
「レゲエだって、サルサだって、全てのジャンルはフィーリングを共有してるからね。トラップだって共通点がある。比較的似ているだろ。」

Pharrell :
「傷ついたよ。だって俺は誰のものも「奪ったり」していないから。
レーヨンとシルクは同じように思える。でも違いを理解している人なら、ハッキリとその違いがわかる。
まさにその現象が起こってしまった。
フィーリングが似ている作ったのに、みんなは「一緒の曲だ」と受け止めてしまう。
よく音色を聴いてみて欲しいよ。」

Rick :
「音楽にとって良くない判例だよ。音楽を理解している人なら、君の判例にショックを受けたはずだ。メロディ、コード、リリック、全てがあの曲には関係がなかった。」

いわゆる「パクリ疑惑」によって敗訴することになってしまったファレル。マーヴィン・ゲイとの楽曲の間にメロディ、コード、リリックの関連性はみられなかったが、「どことなくフィーリングが似ている」という理由で「盗作」の罪を背負う結果になってしまった。
確かにこの二つの楽曲には似ている部分がある。しかし、彼らの言うようにどんなジャンルでも共通するフィーリングは必ずある。
音楽においての著作権の基準は非常に難しいが、「影響」を否定してしまうのは、音楽界において今後、大きな損失を生み出すことになるだろう。

現在のヒップホップ/ラップ・ミュージックを作り上げてきた二人だからこそ語ることのできる、非常に濃い内容がこの対談では明かされている。
特にヒップホップというカルチャー、音楽がいかにアンダーグラウンドからナンバーワン・ジャンルになるまでに受け入れられるようになったか。” Blurred Lines “の判例に見る、音楽権利に関する問題の話題は非常に興味深いものだった。

対談のフルバージョンは以下からチェックできる。
 

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