WSJ MAGAZINE
NOVEMBER 07 , 2019
THE WALL STREET JOURNAL MAGAZINE(ウォール・ストリート・ジャーナル・マガジン)が今年の「イノベーター賞」の各部門受賞者を発表した。
過去にJohn Legend(ジョン・レジェンド)、The Weeknd(ザ・ウィーケンド)などが選出されている「Music Innovator – 音楽イノベーター」に今年選ばれたのはNo. 1アルバム『IGOR』をリリースしたタイラー・ザ・クリエイター。先日当メディアの連載「Rappers Dictionary」でも紹介したように、彼は好きなことを追い求めながら、常に新しいものを生み出し続けている。
タイラー・ザ・クリエイターとは
「創造」を止めない、どれだけ「Weird – ウィアード」と言われても / Rappers Dictionary
音楽だけでなく、自身がプロデュースを務めるファッションブランド「GOLF WANG」は路面店をLA・フェアファックスに構え、ラコステやコンバースなどのメジャー・ブランドとのコラボレーションを行なっている。
また2015年からスタート、今年も11月9日から開催予定の音楽フェス「Camp Flog Gnaw」の主催も行なっている。
その多彩なクリエイティビティと、若者への影響力に賞の選出は頷けるだろう。
受賞に際しWSJ MAGAZINEの表紙を飾り、音楽を作り続ける理由について、「男らしさ」などについて語ってくれたので紹介していこうと思う。
(CAMPBELL ADDY FOR WSJ. MAGAZINE)
ファレル・ウィリアムスに憧れ、16歳から音楽を本格的に作り始めた少年は今、世界中に多くのファンを抱えている。
新たなポップ・スターとして注目されているビリー・アイリッシュが「Camp Flog Gnawに出演できれば最高」「彼が今の私を作り上げている、一生感謝し続ける」と語るように、若きアーティストたちにとっての一つのロールモデルにもなっている彼は音楽を作り続ける理由についてこう語る。
” お金は大事だよ。でも俺が音楽をやる理由はそこじゃない。
アーティストの中には音楽を作ってお金を手に入れることをゴールにしている奴もいるけど。豪邸とかそんな感じのものをゴールにさ。
そうやって全てのエネルギーを音楽に注ぎ込むだろうけど、でも一度でも売れるとリラックスするんだ。イっちまうわけさ。そしてそのまま落ち着いてしまう。
俺は音楽そのものを求めてる。絶対モノとして手に入らないだろ。俺の人生は毎日が夏休みなんだ。“
「常に楽しさを追い求めている」、彼がインタビューで常々言うように、音楽をこよなくい愛するその気持ちを、彼らしいジョーク(イっちまう)を交えながら伝えてくれた。お金を手に入れることをゴールにするアーティスト / ラッパーたちのハッスルも必ずリスペクトされるべきではあると思うが、彼の目標はそこにはない。
” 『Goblin』はゴミだ。 でも作ったことに後悔はしてないよ。 “
インタビューの中で過去の作品に尋ねられたタイラーは笑いながらこう語る。
” 俺が43になってデカい会社の社長になったらこう言ってやるんだ。
「19の時はこんなこともしてたよ。ピンク色好きのスケーター小僧がこんな風になると誰が想像した?」ってな。 “
最新アルバム『IGOR』に彼はスーツにウィッグ姿をつけたビジュアルで登場する。カラフルな衣装や、そのリリックはいわゆる従来の「男らしさ」に追従しない、彼オリジナルのスタイルだ。
「男らしさ」について尋ねられたタイラーはこう答える。
「他人の考えなんてファックだ。俺は俺のやりたいことをやる。ウィッグをつけて、ムーンウォークをして、スーツを着てやる。それが最高にイケてるから。」
「若者たちに自分らしくあって欲しい」と願うアーティストは、2017年にリリースした『Flower Boy』や『IGOR』のリリック中で彼自身のセクシュアリティについても言及している。
インタビュアーがそのリリックを引用しながら彼にセクシュアリティについて尋ねると、彼はこう答えた。
「俺はタイラーだ。」
彼はラベルを貼られることを嫌う。
自分が何者か。社会に決められた枠組みに縛られることなくハッキリと「自分は自分である」と自信を持ちながら答えてくれた。
「イノベーター」の意味は「新しいモノ・価値観・常識を生み出す」だ。彼はまさにその存在そのものと言えるのではないだろうか。
デザイナーのリカルド・ティッシや、写真家のシンディ・シャーマンなどがWSJマガジンによる「イノベーター賞」を他部門で受賞している。インタビューの全文では、一緒に食事をとる際のタイラーとの他愛もない会話も紹介されているので是非チェックしてみて欲しい。
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