kanye jesus is king

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カニエ・ウエスト

現代社会に対する悲痛な思い、『JESUS IS KING』を製作した理由を語る

OCTOBER 27 , 2019

待望のニューアルバム『Jesus Is King』をリリースしたKanye West(カニエ・ウエスト)
26日にリリースして以来、音楽好きの話題はこの作品で持ちきりだと思うが、そんな話題の新作をリリースしたばかりの彼がLAのラジオ局「REAL 92.3」の人気番組「Big Boy’s Neighorhood」のMCを務めるBig Boy(ビッグボーイ)との対談に登場。

MCであるビッグボーイは90年代から長年ヒップホップ・アーティスト、ラッパー達と番組を通じて対談を重ねてきた人物であり、当然カニエとの親交も非常に長い。今回紹介する対談の中には、ニューアルバム『Jesus Is King』に込めた想い、カニエ自身の考え、心の痛みが詰まっていた。

冒頭、ビッグ・ボーイがある動画をカニエに見せる。
10年前に撮影された対談の動画内でカニエはこう語っていた。

「俺はクリスチャンであり、クリエイティブで、ビジョナリーな人間だ。
10年以内にチャーチ(教会)のための音楽を作りたいと思ってる。」

まさにその発言通り、ちょうど10年後『JESUS IS KING』というアルバムをリリースすることになったわけだが、彼はこの10年を振り返ってこう語る。

「俺は確実にロスト(迷子)になっていた。自分のエゴや戦略、アイデアに囚われていたんだ。全てを自分の脳の中で処理しようとしていた。
だからこそそういった決断や処理を全て、神に委ねようと思ったんだ。」

自分のエゴやアイデアに囚われることで、道を見失ったと語るカニエ。
躁鬱病などメンタルに問題を抱えていた彼は、時々声を荒げながらも笑顔を見せハッキリとその意見を語る。ビッグボーイの質問に答えず、自論を熱弁するシーンもあるほどだ。

そんな自身のメンタルについて語る最中、ビッグボーイがこんな質問をした。「自分の行動でファンやオーディエンスを失うのは怖い?」と。カニエはこう答えている。

「俺が今恐れているのは、神だけだ。
神は「自分の考えを持っていい」と俺たちに示してくれるんだ。
俺はキャンセル・カルチャー*って言葉が生まれる前から、みんなにキャンセルされてるんだ。」
(*キャンセル・カルチャー = アーティストや有名人の、作品外での発言や行動が問題視され、人々がその作品・人物自体をキャンセル(いらない、受け入れない)とする動き)

彼は神だけが畏怖する対象だと語り、世間の人々がいかに自分の行動・考えに対し拒否反応を起こしてきたかを語る。テイラー・スウィフトのMTVアワード授賞式に乱入し、問題視されたのは2009年。確かにソーシャル・メディアが発達したことで生まれたキャンセル・カルチャーという言葉は当時存在していなかっただろう。

彼が昨今、人々にキャンセル(受け入れられていない)されるのは政治的な発言が理由ということも多いだろう。
2005年「ジョージ・ブッシュは黒人のことを無視している。」とハリケーンがアメリカを襲った時に発言した彼は今、ドナルド・トランプのMAGA(Make America Great Again)ハットを被っている。
しかし、自身の政治的言動に対する人々の声について彼はこう語る。

「最もレイシスト的な行動は「人種を理由に俺の選択の基準を規定する」ことだ。」

つまり、彼は「アフリカン・アメリカンであるなら、民主党を支持すべきだ」という声が最もレイシスト的である。と語っている。
彼の場合は極端だが、確かに支持する政党が変化することや、政治において重視する点が変化するのは当然だ。

「去年、世間の人々は俺が黒人だからという理由で、俺がどこの政党に投票するべきか口々に言ってきた。
今年はどうだ。俺がクリスチャンだからって、白人のリベラル層は俺の支持政党を決めようとする。」

彼の口調を聞いていると、彼は本当にカラー(人種)によって自分の選択が規定されることが本当に苦しいんだという様子が伝わってくる。
彼が神に助けを求めるのは、そんな辛い思いが起因しているのかもしれない。

“ What have you been hearin’ from the Christians?
クリスチャンから聞こえる言葉はなんだ?

They’ll be the first one to judge me
彼らはきっと俺を真っ先にジャッジするだろう

Make it feel like nobody love me
誰も俺のことを愛してくれないような気がするんだ

They’ll be the first one to judge me
彼らはきっと俺を真っ先にジャッジするだろう

Feelin’ like nobody love me
誰からも愛されていないような気がしてるんだ。- Hands On “

彼はこの対談で「自由になる方法」として二つを挙げている。

「俺たちのメンタリティは制度化された「奴隷のマスター」か「奴隷」かの二つの選択肢に制限されてるんだ。俺たちには自由が必要だ。
自由には二つの形がある。経済的な自由と、自分より高い位置にいる神に仕えることで得られる自由だ。」

自由を追い求めて、神に仕えることを決めた彼は「クリスチャン・イノベーター」という存在になるべくサンデイ・サービスを催し、ゴスペル・アルバムを出したようだ。

また、彼は自身の活動についてこう語る。

「俺は「Yeezy」という世界で最も検索されるNo. 1アパレルブランドを打ち立てた。その力を教会、神のために使うんだ。
今の世界や技術者たちはiPhoneのカメラを1個から3個にするために動いている。そんな小さなことから抜け出さないといけないだろ!
MIT(マサチューセッツ工科大学)の学生は何をしてるんだよ?お前らなら世界を救えるだろ!カレッジの生徒たち、未来はお前らにかかってるんだ。」

対談中、話は度々飛躍するが、カニエが現代の物質主義やビジネスの形に不満を持っており、教会・神と言ったものに自らの力を注ぐことを正解とした、その決意はハッキリと伝わってくる。彼は音楽に乗せて、その考えを私たちに伝え続けているのだろう。

この対談から最も伝わってくるのは彼の現代社会に対しての悲痛な思いだ。ゴスペルアルバム『JESUS IS KING』を作ろうとした理由はそこにあるのだろう。

 

 

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動画のフルバージョンは以下から見ることができる。

 

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