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DERRICK LEE

ビッグ・ショーン

ニューアルバム『DON LIFE』で見せる「新たな自分」

OCTOBER 18 , 2019

ミシガン州デトロイト出身のラッパーBig Sean(ビッグ・ショーン)は2019年5枚目のアルバム『DON LIFE』をリリースしようとしている。
今回 SUBLYRICS ではニューアルバム『DON LIFE』がどんな作品となるのか、インタビューやリリックから解説・考察していきたいと思う。

2007年にカニエ・ウエスト率いるG.O.O.D Music、翌年にはDef Jam Recordsとの契約を果たすなど、19、20歳の時から大きな期待とプレッシャーを背負いながら活躍してきたショーン。
振り返れば、デビューアルバム『Finally Famous』で初めて名声を手にした彼はすでに4枚のソロ・スタジオ・アルバムをリリース、グラミーにも5度ノミネートされるなど順風満帆なキャリアを送ってきた。
しかし、そんな彼は2017年に『I Decided』をリリースしてから約2年間、ソーシャルメディアから姿を消してしまった。
そして時は2019年7月、彼は2年間の沈黙を破りシングル” Overtime “,” Single Again “を突如リリース。 同時にツイッターにて” Overtime “のリリックを引用したコメントを発表した。

「俺はこの2年間休んでたわけじゃない。
傷ついていたんだ。心や魂が張り裂けるほど傷ついていた。
みんなを感動させたいわけじゃなくてさ。
でも何かを変化させなきゃ、成長はできないだろ。
何かに傷つくと、人はドミノ倒しのように、色々なことに傷ついてしまう。
俺はもう” アルバム・モード “に入ってるぜ。- ” Overtime “」

前作のリリースから2年、音源を一切リリースしなかったのは休暇を取っていたわけではなく、傷ついた心を癒し、自分と向き合うための期間だったと明かした。
MVでカメラが切り替わることもなくマイクを前にラップをし続ける彼の姿は「アルバム・モード」の気迫を感じさせる。


では、彼はなぜ「自分と向き合う期間」を必要としたのだろう。その理由は彼はメンタルにあったようだ。
2018年3月、全ての投稿が削除された彼の真っさらなインスタグラムに投稿されたのは「My Thoughts – 俺の想い」というキャプションが添えられた3つの動画。

 
 
 
 
 
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my thoughts 1/3 🗣

BIGSEANさん(@bigsean)がシェアした投稿 –

「自分が自分じゃないような気がしたんだ。何故かはわからなかった。
道を見失っている気がするんだ。何故だかはわからない。」

当時30歳の誕生日を2018年3月に迎えた彼は、前月にツアーをメンタルの問題からキャンセルしたばかりだった。

「30歳になった時、ビバリーヒルズの古い豪邸に移り住んだんだ。まさにドリーム・ハウスって感じのね。でも俺はその時人生で一番不幸せだった。
でも理解できなかった、だってそれは俺の求めていたもののはずだったから。そこで気づいたんだ、俺の必要としている無条件の愛は、そこにはないって。
人生のどこかで気づくんだよ、車や家、みんなが求めている何かは、ただ一時的に気持ちを喜ばせてくれるだけの物なんだって。
俺が本当に求めていたものは、自分の気持ちに正直になることと、情熱的になること以外では満たされないんだ。だから自分と向き合う時間を作って、良いセラピストと話したからこそ、次のフルアルバムでは本当に自分が輝ける気がしてる。- ENTERTAINMENT Weekly

2018年、彼は高級住宅街に住むなど、物質的に満たされたにもかかわらず、その心は満たされないままだったよう。そんな彼に必要だったのは自分自身の心と向き合う時間。

「自分自身を大事にする期間を取ったことが今までのキャリアで一度もなかった。 – BBC

(BIG SEAN : FACEBOOK)


17歳の頃から日常的に不安や憂鬱を対処するために「瞑想」を行ってきた彼だが、今回は専門家の力を借り長いスパンで治療に専念した。大事なファンが待つツアーをキャンセルするのは彼に取って大きな決断だっただろう。

また、” Overtime “に続いてリリースした” Single Again “では、身を置いていた人間関係から距離を置くこと。その時間を用いて自分と向き合う時間を作り出し、自分自身を大事にする決意が示されている。

「俺は毎日を一人で生きることを知らなかった。恋愛や、友人と一緒にいることばかりに幸せや楽しみを見出していた。でも自分ともっと向き合って、自分自身と上手く付き合っていく時間がいかに重要かを理解していなかった。- Sean Don (@bigsean)」

2つのシングルだけでなく、ENTERTAINMENT Weekly のインタビューで彼は『SEAN DON』の収録曲” Lucky Me “(未公開) のリリックを明かした。

「幸運だった(Lucky Me)。
19歳の時、心臓病だと診断された。ドクターが言ってたよ、胸を切り開いて、ペースメイカーを入れないといけないって。
でも母さんがホリスティック・ドクターを連れてきて、2週間俺にマグネシウムを処方してくれた。
(ホリスティック・ドクター = 「自然治癒力」を癒しの原点におき、この自然治癒力を高め、増強することを治療とする医療法を採用するドクター)

診断を受けたドクターのところへ再び行くと、
彼は言ったんだ「おかしいな?もう治療は必要ないみたいだ。」って。- ” Lucky Me “」

「今までに明かしたことのない話」とショーンが語る通り、19歳の頃、病気を患ったという彼の今までのリリックには見られなかったプライベートな内容がこの曲では明かされている。

「こういった過去を俺はリリックの中で表現する必要性を感じたんだ。」インタビューで彼が語るように新作では自身の過去を内省することが大きなテーマとなっていることがわかるだろう。

またその他の収録曲について尋ねられると、

「” Wolves “はポスト・マローンとの一曲で、俺と家族の成長を描いてる。
まるで狼の群れのように優しくて、力強い、そんな家族なんだ。
アルバムの中でもお気に入りのトラックの一つだよ。」

「エイサップ・ロッキーやメイドイン・TYOが参加した曲もあるし、ミーク・ミルが2ラインだけ、パフ (P.Diddy)が数ライン参加した曲もある。」

と未公開トラック・豪華な参加ゲストについても答えてくれた。

豪邸や車といった物質的な物ではなく「自分の気持ちに正直になる / 自分らしくいること」こそが自分を満たしてくれると気づき、最も輝いた自分が見せられるようになったと語る、彼のニューアルバム『DON LIFE』は今までの4作品には見ることのできなかった、本当のショーンの姿が見える、そんな作品になるかもしれない。

リリース日は現時点では未定だが、すでに3つのシングルを公開していることもあり、今年中にはリリースされるのではないだろうか。自分らしさを手にいれた彼の新作が楽しみだ。

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