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GQ

ファレル・ウィリアムス

他人の考えに共感することの重要性、現代社会においての「男らしさ」を語る

OCTOBER 15 , 2019

音楽プロデューサー / シンガー / ラッパー / ファッションデザイナー…と肩書きを挙げだすとキリがないほどに多彩なアーティスト、Pharrell Williamsファレル・ウィリアムス)

アメリカ / ヴァージニア州出身のアーティストは音楽界だけでなく、ファッション界でも絶大な影響力を持っているため、度々その発言やリリック、ムーブメントは注目されてきた。中でもNY発のマガジンGQ が行なったインタビューで注目されたのは、彼の女性のエンパワーメントを応援する動きだ。

2014年からパートナーシップを結んでいるアディダス・オリジナルスとのキャンペーン「Now Is Her Time」では、ユニセックスのシューズ・コレクションと共に女性の多様性を表現している。

音楽界からはThe Internet(ジ・インターネット)のヴォーカルSyd(シド)がモデルとして参加するなど、現代社会において様々なムーブメントに参加している女性たちがこのキャンペーンに賛同し、加わっている。
以上のように、アーティストとして「女性のエンパワーメント」という一つの動きに加わるファレルの姿は、音楽・ファッション界だけではなく世界中から注目されている。一方で過去に発表した楽曲中のリリックを女性差別的な視点から批判されたことがあったことに関しても、このインタビューではその心中を語ってくれている。

「ファッションにおいてジェンダーという線引きを曖昧にしたあなたに続いて、ヤング・サグやリル・ウジ・ヴァートといったアーティストたちも同じく、そういったファッションに夢中になっているよね。」
インタビュアーからヒップホップ ・ラップという「男らしさ」を強調するカルチャーの中で、女性向けに作られた服を着用することについて尋ねられた彼は、

「まず大事なのは、そもそもなぜいけないのか?ってこと。
” 着るべきじゃない服 “っていうのも誰かが決めた決まりでしょ。
聖書の中にはブラもブラウスも登場しないし、そんなの誰が決めた、何の決まりだよ?って思うんだ。」

と、従来、ヒップホップ・ラップのカルチャーにおいて考えられていたジェンダー観を否定した。続けて、46歳となるファレル自身が生まれた時代と、現代との違いついて、こう語った。

「俺は“ 違う時代 “に生まれた。今では許されないようなルールが存在していた時代のこと。女性をモノのようにして見る広告、曲の内容(リリック)俺の昔の曲だってそうさ。今では絶対に書かないような曲がある。本当に恥ずべき行為だったと思ってるよ。
きっかけは” Blurred Lines “への反響だったんだ。女性も気に入って歌ってくれていたから、最初は何のことかわからなかったけど、後から気づいたんだ。“そのリリックがレイプを想起させるってね。

2013年に発表されたロビン・シックの作品” Blurred Lines “に参加したファレル。この楽曲のリリックがいかにもデートレイプや、パーティレイプなどを連想させるとして大きな問題になっていた。
多大な影響力のあるアーティストとして、過去自身が記したリリックでの失敗を語ったファレル。女性のエンパワーメントを推進する一方で、自分の生まれた時代から「当たり前」の違和感に気づかなかったことを告白している。

「” ビッチ “という言葉で、必ずしも誰かが不快になると思っていなかった頃があったんだ。結局は発言する時の状況や背景次第でしょ?ってね。
でも今はそれではダメなんだ。
もし人を傷つけたり不快にする意図がなくても、ダメなんだ。
全ての女性の気持ちを考えないと。だって50年代や60年代を生きてきた人にNワードは使わないでしょ?
でもみんな言うんだ「タイミングでしょ」って。
たとえその場で受け入れられてもアフリカン・アメリカン全員がそう言うわけじゃない。「どんなタイミングでもダメだ。クソだね。」って一人に言われたら、それはダメだよね。
「あるタイミングで受け入れられた」なんてのは言い訳にはならない。女性も同じさ。LGBTQIA もまさに同じ気持ちなんだ。その他の全てのマイノリティと呼ばれる人たちはそう感じてる。」

と、差別的な意味合いのある言葉の良し悪しを「タイミング/使い方」で決めてしまう習慣を否定した。インターネットの時代だからこそ、どこで誰がどんな風に発言を受け止めるかは、発言する側が考えるべきではないのだろう。

一方で、「あなたは若者に対してとても信頼を置いているよね。なぜ現代の若者なら昔から当たり前とされてきた慣習を乗り越えられると思う?」と彼の持つ、現代を生きる若者に対しての厚い信頼の理由について尋ねられると、

「彼らはインターネットの時代に生まれているからね。
それがなぜ重大かって?” 種 (人種・性別) “という括りなしに繋がれるからさ。クレイジーなことを言っているように聞こえるよね。間違ったことも言ってしまっているかもしれないけど、ただ言いたいんだ。
「もしインターネットがあったなら、独立宣言はあんな風にできていない。」ってね。」
(アメリカ南部では独立後も奴隷制が拡がり、人種的な偏見が残り続けた)

とインターネットのもたらすポジティブな可能性を述べた。
また、権力は特定の男女・人種という括りに関係なくバランスよく持つべきで、ミレニアル世代や、Z世代 (90s前半〜2000生まれ)、多くの女性、そして男性がこの問題に気づき始めていることが社会に違いをもたらすと、一人一人の意識の重要性を語ってくれた。

最後に彼は「少数派 / マイノリティであることの意味」を尋ねられ、こう答えた。

「多数派に立って少数派に指を差すよりも、俺たちみんなが他人の心に共感することが、より良い世界を作れると思うから。その道を示したいんだ。」

自分の「当たり前」とは違う考えや、自分と異なる考え方を受け入れる姿勢が重要であり、そういった考えを世の中に示すべく彼は活動している。

ファレルと同じように「タイミングが悪くなければ」「当たり前だから」といった形で、差別的な用語を使ってしまったことのある人は沢山いるだろう。使っていることに気づいていないこともあるかもしれない。
彼は自身の過ちを告白することで、今一度私たちにその危険性を喚起してくれている。
また彼は、インターネットで繋がった若者なら、昔からある慣習や当たり前を覆してくれる、その間違いに気づいてくれるという信頼も覗かせてくれた。

このGQによるロング・インタビューでは、20年前に出会った日本人デザイナーNIGOに「他人に礼儀正しくすること」を学び、以来、日頃から人にお辞儀をするようになったなど、上記以外の様々な内容も語られているので是非チェックしてみてほしい。

インタビューの全文は こちら からチェックできる

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