GENIUS
SEPTEMBER 7 , 2019
イリノイ州シカゴ出身、現在20歳ながら” Pop Out “、” Finer Things “などの大ヒットを生み出してきた若手ラッパーPolo G (ポロ・G) 。
そんな彼が生まれ育ったのは、シカゴの中でも特に治安の悪いノースサイドのプロジェクト Cabrini Green (カブリーニ・グリーン)。低所得者が多く暮らす、高く横にも長いマンション型の住宅の周りには、犯罪や銃撃事件が絶えなかったそう。
そんな地元・フッドから飛び出し、ラップで成功して「フッドを養ってやる」とリリック中で語る彼のデビュー・アルバム『Die A Legend』、生い立ちについて語ったインタビューが Genius にて公開されていたので紹介していきたいと思う。
Rob Markman (以下 Rob) :
ーー 調子はどうだい?
Polo G :
いい感じだよ。今ツアー中で、ここ数週間はライブに行ってたかな。
Rob :
ーー 今回が初めてのメジャーツアーだよね?想像通りだった?それとも想像してないことも起きたりしてる?
Polo G :
いや、今のところ全部思い通りだな。
観客の注目はかなり集められてるし、ショーはかなり盛り上がってる。全部予想してたよ。
まだ想像外のことは起きてないかな (笑)。
Rob :
ーー いい調子なんだね。「観客の注目」って話でいうと、俺もソーシャルメディアでその盛り上がりを見てたんだけど。
それって君にとって証明になると思うんだ。
君がリリックに込めたハートやソウルが伝わってるってことのね。
” Pop Out “や” Finer Things “のリリックはみんな知ってるけど、君のライブに来る観客は、それ以外の曲も知ってるだろうし。
Polo G :
間違いないね。
Rob :
ーー君はかなり早い段階でヒットした方だと思うんだけど、いつから音楽には興味を持っていたの?
Polo G :
子どもの頃だな。いつも音楽をかけてたのは8歳か9歳の時から。その時からどうやって曲が作られてるのかも理解してた。
実際にスタジオに入ったのは18歳の頃だよ。それくらいから真剣に音楽について考え始めた。
Rob :
ーー 少し話題をシフトするよ。” Finer Things “は多くの人に受け入れられたけど、その理由はどこにあると思う?
Polo G :
” Finer Things “は新しい音楽だ。誰も聞いたことのないような曲だったと思う。
パーソナルだったり、感情的なレベルでみんなを結びつけるようなことを語ったんだ。
どんな場所から来ていても、どんな環境でも生まれ育っていても、言いたいことがわかってくれるんだ。
それが多くの人に受け入れられた理由だと思うよ。
Rob :
ーー このアルバムでは、君の生まれ育った街のことや、そこで何が起きているかが語られているよね。
そこで「弱み」や「脆さ」をさらけ出すことが難しいことになるんじゃないかって感じたんだ。全てをさらけ出しすぎると、リスナーにもそこを理解されるわけで。
君にとっては「弱み」をさらけ出すのは、ハードなことじゃないの?
Polo G :
全くハードじゃないね。
俺は自然に、思ったことをフロウしてる。
音楽は俺にとってセラピーでもあるんだ。
音楽が唯一、自分自身、自分の心の内側を表現できるはけ口なんだよ。
でもそれが受けいられるのも理解してたんだ。だって俺が感じていることは、多くの人も同じように感じているはずだからね。
Rob :
ーー なるほど。
なんでデビュー・アルバムを『Die A Legend』と名付けたんだい?
Polo G :
この世の中に何を残していけるかを考えてたんだ。それだけじゃなく、俺の周りで亡くなっていった人たちが残したものを表してる。
彼らは俺にとっては「レジェンド」だ。スーパースター、ラッパーやNBAプレイヤーじゃなくても彼らはレジェンドなんだよ。
コミュニティにとってのレジェンドだったり、家族にとってのレジェンド、良い人間であることが条件なんだ。
誰だってレジェンドとして死んでいける。そこを表現したかった。
Rob :
ーー たとえ場所がどこであろうと、同じような境遇をしている人はたくさんいるだろうね。
アルバムのカバーには8人が君と共に写っていたけど、あのカバーについて少し教えて欲しい。
Polo G :
二人の祖母と、地元で亡くなった幼馴染、事故で亡くなったおじさんと、発砲されて亡くなったおじさんだね。
全員が俺に身近な存在で、親しかった。俺には彼らがレジェンドとして刻まれてるよ。
Rob :
ーー じゃあこのジャケット・カバーには地元のリアルが刻まれてるわけだね。
君はシカゴのノースサイド出身なわけだけど、君がそこを離れてから環境は大きく変化したかな?あそこらへんは常に大きく変わっているよね。
Polo G :
そうだな。確かに劇的に変化してる。
カブリーニ・グリーンハウス・プロジェクトで住宅の高級化が進んでいくうちに、俺たちの世代ではあちらこちらで人が死ぬ事件が起きてた。それから郊外には人が寄り付かなくなった。っていうのもその場所で多くを失ったから。そんな場所にいる理由がなかったんだ。
でも今はそこが変化して、誰でも郊外にやってくるようになった。前は郊外の中だけの「ファミリー」って感じの結束があったけど、今はもっと開けていると思う。
Rob :
ーー 君は全てを音楽に表現しているし、それと同時に、多くの側面が見えているよね。
例えば「住宅の高級化がコミュニティにどういう影響を与えるか」とかをよく考えてるだろ。
カブリーニ・グリーンを取り壊した影響とかさ。
街のために何ができると思う?どういう動きが街を助けることができるかな?
Polo G :
コミュニティにもっと関わっていくこと。もっと子どもたちに教育のプログラムを届けてないといけない。途中でドロップアウトしてしまう子どもたちがいるのは事実だから。
そう行った子どもたちが、どこで時間を過ごすかと行ったら、ストリートだろ。そこでトラブルに巻きこまれちまうんだ。
夏の間でも就業支援とかをしてさ。ストリートから引き離すんだ。
Rob :
ーー それじゃあ音楽に込められてるマインドの部分を聞いていきたいんだけど。
例えば” Finer Things ” で君は、「何億も稼いで、俺がギャングを養ってやる」とか「大金でフッド全体を買い占める」とかいうリリックがあるよね。
こういったリリックをスピットするラッパーっていうのは、もっと年代が上の、ジェイ・Zとかリック・ロスとかの世代だと思うんだ。
ここも20歳の君に大きなリスペクトを送りたいポイントなんだけど、その年齢で「地域を買い占める」ことがなんで重要だと思うようになったんだい?
Polo G :
わからないけど、子どもの頃から「いつか俺たちが自分のものすべきだ」って思ってたんだ。
そこにいて、ただただ待って、そこで何が起こるかを待つだけじゃなく、自分たちで状況をコントロールするんだ。
Rob :
ーー ありがとう。そういえば、まだ” Pop Out “の話をしてなかったね(笑)
今年の夏最もヒットした曲の一つだと思うけど、こんなにもヒットすると実際思っていた?
Polo G :
ヒットになるのはわかってた。ただここまでになるとは思ってなかったね。
自分の部屋であの曲を作って「これはビルボードまで行くぜ」とは思ったけど、あそこまでクレイジーになるとは。って感じかな。
Rob :
ーー どの曲が話題になると予想してたんだい?
Polo G :
” Dyin’ Bleed “だね。世界をかっさらうと思ってたんだけど。
Rob :
ーー 結局は” Pop Out ” だったね。
でも君は他のアーティストとは違う「戦略」を取ってるよね。今の世代のアーティストは、本当に短い制作期間で多くの曲を作ってリリースしてる。
他のアーティストに比べて、君はよりゆっくり制作を行なっているように感じるんだ。
その自信はどこから来てるんだい?
きっとプレッシャーもあるだろうし、もっと曲を作った方がいいと言ってくる人もいるでしょ?
Polo G :
確かにね。その通りだよ。
ファンはさ、今日アルバムをドロップしたとしても、明日には新作を欲しがってるし(笑)。
俺は落ち着いてるんだ。流れに任せてるし、俺は一回スタジオに入るごとに20曲作るようなタイプでもないんだ。
俺は全部ヴァースを書いてるし、より一曲一曲に力を込めてる。曲を聞けばわかるけど、そこにはストーリーがあるし、一貫性があるんだ。
Rob :
ーー 閃いたアイデアで作るタイプのアーティストもいるだろうけど、君はより一言一言や自身のアート性に力を込めてるんだね。
君は曲の中で「メロディ」をよく使っていると思うけど、いわゆる昔からの「ラップ」は君にとってどれくらい重要なものなんだい?
” King’s Nightmare “では特にそういう「ラップ」が披露されてるよね。もちろんメロディを使うことが良いとか悪いとかではなくね。
Polo G :
俺はラッパーだけど、どちらかのサイドに寄っているわけじゃない。俺は自分の道を歩んでる。多彩なところを見せたいのもあるし。
「メロディアス」だとか、そういうイメージには囚われたくないね。なんでもできるんだ。
生い立ち、アルバムのコンセプト、自身の音楽性といったところから、自身が生まれ育ったコミュニティがどうすればより良い場所になって行くのかなど、20歳とは思えない考えと大きな自信を持っている彼。
弱さや脆さをさらけ出す正直さが共感を呼びながらも、「フッドを買い占める」とリリック中で自信を露わにするなど、フッドへの還元を夢見るシカゴ出身のラッパーのこれからが楽しみだ。
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