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Emotionless

Album : Scorpion
Year : 2018
Track : 4
Produced by : 40 & No ID

Drake (ドレイク)の2018年リリース『Scorpion』から4曲目” Emotionless “を紹介します !

ローリン・ヒルの” Ex-Factor “をサンプリングした2枚目のシングル” Nice For What “も大ヒットを果たしましたが、この楽曲では、マライア・キャリーの1991年リリース” Emotion “をコーラスに用いております。

マライア本人は、このサンプリングについて「気に入ってくれたなら、嬉しいわ。選んでくれて嬉しい。」と語っています。

そんなマライアの楽曲” Emotion “をサンプルに用いた” Emotionless “を語る上で、欠かせないのが、プシャ・Tとのビーフでしょう。
2012年にプシャがリリースした” Exodus 23:1 “にて、ドラッグ・ディールを通してストリートで成り上がって来た” リアル “な自分と、俳優からラッパーになった奴を一緒にするな!というメッセージを投げかけたのが事の発端。

その後も楽曲を通して、ゴースト・ライターについてなど、何度もディスの応酬を繰り返していた二人でしたが、2018年プシャがリリースした” The Story of Adidon “は一線を超えていると言ってもおかしくない内容を含んでいました。
「ドレイクには隠し子がいる」「40 は病気なんだよ」 (40 = ドレイクのプロデューサー、多発性硬化症を患っているとされています)と、非常にプライベートな内容を書き連ねたリリックは、もはやラップ・ゲームの「エンターテイメント」とは言えない過激なもの。

プシャ・Tはカニエ・ウエストの創立したレーベル” G.O.O.D Music “のCEOを務めています。2018年にリリースしたアルバム『Daytona』もカニエのオールプロデュース・アルバムですので、彼らの関係は非常に親密であることはわかります。
そんな『Daytona』の中にもドレイクへのディス・ソングは含まれていました。
またカニエ本人からリリースされたアルバム『Ye』の” Yikes! “の製作にドレイクは協力したものの、クレジットが書き記されないままリリースされるなど、カニエ・ウエストへの不信感も彼の中で、膨らんでいきます。

カニエ・ウエスト、プシャ・T。2000年代、2010年代を代表する二人のラッパーはドレイクにとって「ヒーロー」と言える存在でした。
ドレイクの出世作であるミックステープ『So Far Gone』はカニエ・ウエストの2008年リリースのアルバム『808 & Heartbreak』に多大な影響を受けている(サンプルとしても用いている)ことから、彼が昔からカニエのファンだったと考えられます。プシャ・Tのサイン入りマイクを大事に持っているとも言われており、二人がドレイクにとってのヒーローだったことがわかります。そんな夢にも描いた二人から受けた「裏切り」に近い行為。
彼にとってこの仕打ちはかなりショックだったようで、その出来事について語られたこの楽曲では悲痛な思いを乗せて語られています。 


[Chorus: Mariah Carey]
You’ve got me feeling emotions
あなたは私にこの「思い」を感じさせてくれた
(マライア・キャリー ” Emotions “から)

Ayy, higher
もっと高くね

Ahhhhhhh

You’ve got me fe–
あなたが気づかせてくれたの

You, ohhhh
あなたがね

 

 

[Verse 1: Drake]
Don’t link me
俺に寄り付かないでくれ
(プシャ・Tと同じくGood Musicのカニエ・ウエストに向けているラインと思われます)

Don’t hit me when you hear this and tell me your favorite song
このアルバムを聴いて、気に入った曲を伝えるために、連絡してくるなよ

Don’t tell me how you knew it would be like this all along
「こんな風になると思ってた」なんて言ってくるなよ

I know the truth is you won’t love me until I’m gone
真実がわかるんだ、お前らは俺が消えるまで、俺のことを好きにはならないって

And even then the thing that comes after is movin’ on
あの出来事が起きてから、俺は前に進み続けてる
(プシャからの過激なディス・ソングのことでしょう)

I can’t even capture the feeling I had at first
初めて抱いた感情も、今はもう捉えることができなくなって
(メジャーデビューアルバムをリリースした2010年から8年ほどで、彼はトップに登りつめました。デビュー時に描いていた理想と現実は違ったんですね)

Meetin’ all my heroes like seein’ how magic works
マジックのタネを見るみたいに、ヒーローたちの本性を見てる
(ドレイクの出世作であるミックステープ『So Far Gone』はカニエ・ウエストの2008年リリースのアルバム『808 & Heartbreak』に多大な影響を受けている(サンプルとしても用いている)ことから、彼が昔からカニエのファンだったと考えられます。プシャ・Tのサイン入りマイクを大事に持っているとも言われており、二人がドレイクにとってのヒーローだったことがわかります)

The people I look up to are goin’ from bad to worse
見上げてた人たちが、「イケてる(bad)」存在から「最悪(worst)」の存在になっていってさ

Their actions out of character even when they rehearse
リハーサルでさえ、あいつらの本性は露わになってる

Workin’ in the land of the free, the home of the brave
この自由なる国、勇者の故郷で必死に生きて
(「自由なる国」「勇者の故郷」 = アメリカ。彼の出身はカナダ・トロントですが、カリフォルニアにもスタジオを構えるなど、アメリカで頻繁に活動を起こっています)

I gotta bring my brothers or else I feel out of place
ブラザーたちを連れてこないとな、じゃないと心が落ち着かないから

Breakin’ speed records on roads that these niggas paved
俺は先人たちが築いた道の最高速度を破ってる
(前述の通り、彼はラップ・ゲームを誰にも負けないほどのスピードで登りつめました)

And they don’t like that, it’s written all on they face
あいつらは気に入らないみたいだな、顔に書いてあるぜ

I don’t know how I’ma make it out of here clean
どうやったらこの状況から上手く抜け出せるかわからないけど

Can’t even keep track of who plays for the other team
他のチームのやつの動きなんて追っていられないんだ

Iconic duos rip and split at the seams
仲間割れの象徴って感じだな
(カニエ・ウエストとジェイ・Zのことでしょう。カニエが” ビッグ・ブラザー “と題してリスペクトを込めた楽曲を製作したり、二人でWatch The Throneというアルバムをリリースするなど、まさに「ブラザー」という関係そのものだった二人は、ストリーミングサービスのTIDALでの契約問題、カニエの政治的発言から不仲になってしまったそう)

Good-hearted people are takin’ it to extremes
優しい心の持ち主も、過激な奴らに変化していく
(カニエが創立・プシャ・TがCEOを務めるレーベル” G.O.O.D Music “にかけています)

Leavin’ me in limbo to question what I believe
一人にしてくれよ、俺を無視したまま、俺の信じるものすら疑ってままさ

Leavin’ me to ask what’s their motive in makin’ peace
一人にしてくれよ、和解する意味なんてあるのかって聞いてんだよ

Leavin’ me to not trust anybody I meet
一人にしてくれよ、俺は出会った人、誰も信頼しないから

Leavin’ me to ask, is there anybody like me?
一人にしてくれよ、俺みたいなやつ他にいるか?って考えてさ

 

 

[Chorus: Mariah Carey]
You’ve got me fe–
あなたが教えてくれたの

You, ohhhh
あなたが

You’ve got me fe–
あなたが気づかせてくれた

You, ohhhh, ayy
あなたがね、エイ

 

 

 

[Verse 2: Drake]
Missin’ out on my years
もう何年も自分の時間を浪費してる
(彼のような忙しいアーティストは、自分の時間を作ることができない・時間が過ぎるのが本当に早いと。” Do Not Disturb “でも同様のラインがあります)

There’s times when I wish I was where I was
「あの頃」に戻れたらって思う時もある

Back when I used to wish I was here
「今の自分」に憧れてた、あの頃に戻りたいんだ
(「今の自分」= 富も名声も手にした現状の自分自身のこと。若手アーティストにとって彼は憧れの的です)

Missin’ out on my days
自分の日々が失われてる

Scrollin’ through life and fishin’ for praise
生活をスクロールして、褒められようと必死になってる
(ソーシャル・メディアについてですね)

Opinions from total strangers take me out of my ways
赤の他人からの意見のせいで、俺は道を見失ってる

I’m tryna see who’s there on the other end of the shade
向こうの茂みに隠れてるのは誰なのか、何とか見つけようとするけど
(匿名で自分に意見する人の正体)

Most times it’s just somebody that’s underaged
大体そこにいるのは、ただのガキだったりしてさ

That’s probably just alone and afraid
きっと皆、ただ孤独で怖いだけなんだよ

And lashin’ out so that someone else can feel they pain
言葉を荒げれば、誰かが痛みを感じ取ってくれるから

I always hear people complain about the place that they live
人の不満をいつも耳にしてる、どこに住んでるとかそんな不満をさ

That all the people here are fake and they got nothin’ to give
ここにいる奴らはみんなフェイクで、与えられるものなんか何もねえぜ
(裕福な地域で、豪邸に住む人間)

‘Cause they been starin’ at somebody else’s version of shit
だってそいつらもずっと、誰かに憧れてるだけだから

That makes another city seem more excitin’ than it is
自分の育った場所より、他の街が魅力的に見えるのも、そのせいさ
(「隣の芝生は青い」という諺そのものですね)

I know a girl whose one goal was to visit Rome
ローマに行くのが夢だった女性を知ってるんだ
(2011年リリース『Take Care』” Look What You’ve Done “から。彼の母親のことです)

Then she finally got to Rome
彼女は結局ローマに辿り着いたけど
(ドレイクはメジャーアルバムリリース後、母の夢を叶えます)

And all she did was post pictures for people at home
最後にやったことは地元の人間に写真を見せびらかせただけ

‘Cause all that mattered was impressin’ everybody she’s known
彼女にとって大事だったのは、周りの人間を「アッ」と言わせること、それだけだったんだ

I know another girl that’s cryin’ out for help
助けを必死に求めてた女性を知ってる

But her latest caption is “Leave me alone”
でも今じゃ、キャプションには「一人にしてよ」だってさ
(キャプション = 投稿につける説明・本文のこと)

I know a girl happily married ‘til she puts down her phone
携帯に夢中になるまで、幸せな結婚生活を送ってた女性を知ってるんだ

I know a girl that saves pictures from places she’s flown
育った場所の写真を保存してる、そんな女性を知ってるんだ

To post later and make it look like she still on the go
あとでその写真を投稿してたよ、まだ旅行中みたいだけどな
(写真を投稿するだけで、実際には住んでいない)

Look at the way we live
俺たちの生活を見てみろよ

I wasn’t hidin’ my kid from the world
俺は世界からこの子を隠してたんじゃない

I was hidin’ the world from my kid
俺はこの子からこの世界を隠してたんだ
(隠し子と言われていた彼の息子” Adonis “のこと。プシャ・Tのディス・ソング” The Story of Adidon “で明かされました)

From empty souls who just wake up and look to debate
空っぽの心で、言い争いだけを望んで生きる、そんな奴らをさ

Until you starin’ at your seed, you can never relate
君が自分の出自を考える、その時期までは、誰とも自分を比べなくていい

Breakin’ news in my life, I don’t run to the blogs
人生の大事件だよ、俺はブログなんて読まないけど
(息子の誕生についてです)

The only ones I wanna tell are the ones I can call
真実を伝えられる人は、ほんの一握りしかいない

They always ask, “Why let the story run if it’s false?”
そいつらいつもこう聞いてくるんだ「何で嘘なら否定しないんだよ?」ってさ

You know a wise man once said nothin’ at all
わかるだろ、賢者は口を閉ざすのさ
(聖書 『賢者の振る舞い・愚者の振る舞い』から)

I’m exhausted and drained, I can’t even pretend
もう俺は疲れ切って、消耗しきってる。元気なフリも限界さ

All these people takin’ miles when you give ‘em an inch
こいつらは皆、インチを出せば、何マイルだって駆けつけてくる
(インチ = CD、Vinylのこと)

All these followers but who gon’ follow me to the end?
こんなにもフォロワーはいるけど、死ぬまで俺に付いてきてくれる奴なんているのか?

I guess I’ll make it to the end and I’ma find out then
俺は最後までやり続けるよ、そしたらその答えも自ずとわかるだろ

 

 

 

[Outro: Mariah Carey]
You’ve got me fe–
あなたが気づかせてくれた

You, ohhhh, ayy
あなたがね、エイ

Higher, higher
高く、高く

You’ve got me fe–
あなたが教えてくれたの

You, ohhhh, ayy
あなたが、エイ

Higher, higher
高く、高く


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