911 / Mr. Lonely
Scum Fuck Flower Boy (2017) : Track 10
2017年リリース『(Scum Fuck) Flower Boy』は、アルバムを通して「孤独」がテーマになった作品に。中でも今回紹介する一曲” 911 / Mr. Lonely “はアルバムのリード・シングルとしてリリースされ、タイトルからもわかるように、まさにテーマそのものとも言える作品となりました。前半の”911″にはThe Internetからスティーブ・レイシー、ノルウェー出身のシンガー Anna of the Northを迎え、フランク・オーシャンがバースを蹴っています。後半” Mr. Lonely “のイントロでは、エイサップ・ロッキー、スクールボーイQも参加するなど、かなり豪華な面々が参加しています。(最後の最後にはOdd FutureのJasperも!)
911 – アメリカでは緊急時にかける番号からは、タイラーの「孤独」がかなり深刻な状態であることが示唆されます。この前半の911なのですが、人の名前や引用等が非常に多くリリックとして非常に読み応えのあるパートになっています。本文で詳しく解説していますが、ライミングもかなり練りこまれていて、さすがタイラーというところですね!
“Mr. Lonely”はその名の通り、「孤独な男」という意味。「一番うるさく騒いでいるやつは、一番寂しいやつなんだよ (俺のことだ)」というリリックからは、彼の心の内側が、悲しくなるほどに伝わってきます。
前後半を通して、心から気を許すことのできるパートナーの不在を嘆いている一曲に、彼の本当のパーソナリティが見えてくるのではないでしょうか。
Part I: 911
[Intro: Tyler, The Creator]
(Call me, call me, call me) Uh
(Call me, call me, call me) Uh
(Call me, call me, call me) Uh
(Call me, call me, call me)
(電話をかけてくれよ、かけてくれよ、俺にさ)
(Call me) How you doin’?
(かけてきてくれ) 何してるんだい?
(Call me) My name is Lonely, nice to meet you
(電話くれよ) 俺の名前は「孤独」っていうんだ、会えて嬉しいよ
(アルバムに度々登場するテーマである「孤独」についてです。彼自身が孤独そのものだと)
Here’s my number
これ俺の番号だからさ
You can reach me, woo!
いつでもかけてきなよ!
[Chorus: Tyler, The Creator]
(Call me)
(電話くれよ)
911, call me some time
911、たまには電話くれよな
(孤独に苛まれる彼は緊急時に電話をかける911のように、問題を聞いてくれるんですね)
(You should call me)
(かけてきた方がいいぜ)
911, call me some time
911が番号だ、たまには電話くれよ
911 (You should call me, oh)
911さ (かけるべきだぜ)
911 (Call me)
911 (電話くれよな)
[Verse 1: Tyler, The Creator]
Yeah, yeah, yeah, yeah
My thirst levels are infinity and beyond
飢えのレベルは”無限の彼方”って感じさ
(先ほどの「孤独」から。Infinity and beyond = 無限の彼方はトイストーリーのバズのセリフから)
Sippin’ on that lemonAde, I need a Beyoncé
レモネードをすすってる、俺にはビヨンセが必要だよ
(Jay-Zのように素晴らしい女性が横にいてほしいということ。lemonadeはビヨンセのアルバムのタイトル)
(ここからのライムで赤文字になっている部分がABCDと繋がっていることにも注目です)
Can’t see straight, these shades are Céline Dion
直視できないよ、二つの黒い影はセリーヌ・ディオンって感じさ
(セリーヌ・ディオンは大きなサングラスを愛用していることでも有名)
Sucks you can’t gas me up, shout out to Elon
クソ、お前ら俺を楽しませられないのかよ、イーロンにはリスペクトを送るよ
(一緒にいて楽しいパートナーの不在を嘆きます。イーロン・マスクは自動車メーカー・テスラの社長。”gas” up = 楽しませる とも繋がってきます。また、彼は2018年大きな事故を起こしますが大事に至りませんでした。その時乗っていた車がテスラXモデルで、のちに感謝の気持ちをイーロンに送っていることから)
Musk, yeah, I got a sold out show
マスクさ、売り切れるほどのショーを始めたんだ
(アルバム『Cherry Bomb』に登場するマスクを彷彿とさせます。ショーは彼が主催し、毎年開催している「Camp Flog Gnaw Festival」のこと)
Crowd wild out but don’t matter ‘cause you not front row
観客はバカ騒ぎしてるけど、そんなの関係ないんだ、だって君が最前列にいないからさ
I’ve been lookin’ for a keeper, listen to the speaker
一緒にいてくれる人を探してるんだ、スピーカーに耳を傾けて
If you fit description, hit me on my beeper
もし自分が当てはまるって思ったら、携帯にかけてくれよ
At that 911
番号は911さ
[Bridge: Steve Lacy, Anna of the North & Tyler, The Creator]
Call me some time (ring, ring, ring)
ちょっとの間かけてくれよ (リン、リン、リン)
Please bang my line, you know I’ll answer (click)
頼むよ、かけてこいよな、俺がきっと出るってわかってるだろ
Call me some time (ring, ring, ring)
ちょっとの間でいいんだ、電話くれよ (リン、リン、リン)
Please bang my line
頼むよ、かけてきてくれよ
[Chorus: Tyler, The Creator & Anna of the North]
Call me
電話くれよ
911, call me some time
911さ、ちょっとはかけてくれよ
You should call me
きっとかけた方がいいぜ
911, call me some time
911、たまにはかけてくれよ
911, (you should call me, oh)
911 (きっとかけた方がいいぜ)
911, (you should call me)
911 (かけた方がきっといいぜ)
[Verse 2: Frank Ocean]
Chirp, chirp
Chirp, chirp
(小鳥などのさえずりの音)
Woke up in the ‘burbs, ‘burbs, with the birds, birds
離れで目覚めるんだ、小鳥のさえずりと共にね
(フランクの楽曲” Sweet Life “で彼がLadera Hightsというロスの郊外に住んでいたことが語られています)
Where you used to come and get me with the swerve, swerve
君がよく来て、俺と会ってた場所だよ
These days you gotta find time
ここ最近の君は、時間を作るべきだと思うよ
(同アルバム”Boredom”でも同じことが語られています)
Even the night line
それがナイト・ラインだろうが
(ナイト・ラインは日本にもあるような、若者向けの電話相談サービスのこと)
Work line
仕事の電話だろうが
Dial nine
9をダイアルにかけるんだ
[Verse 3: Tyler, The Creator]
Five car garage
ガレージには5つの車
Full tank of the gas
ガスタンクは満タンさ
But that don’t mean nothing, nothing
でもそんなの何の意味もないんだ、何の意味もね
(お金では幸せは買えないことを示唆します)
Nothin’, nothin’, without you shotgun in the passenger
何もないんだよ、君がいなきゃ、助手席にはショットガンしかないんだ
(隣に誰もいないことの寂しさは、自殺を考えるほどなんでしょう)
I’m the loneliest man alive
俺は世界で一番孤独な男だよ
But I keep on dancing to throw ‘em off
でもこうやってお前らの前で踊り続けるんだ
I’m gon’ run out of moves ‘cause I can’t groove to the blues
もう全て出し切ってしまうかも、だって俺はブルースでは踊れないから
If you know any DJs, tell ‘em to call me at 911…
もし誰かDJを知ってたら、そいつに言っといてくれ「911で俺にかけてくれ」ってさ
Part II: Mr. Lonely
[Intro: A$AP Rocky, ScHoolboy Q & Tyler, The Creator]
I can’t even lie, I’ve been lonely as fuck
嘘すらつけないんだ、クソほど寂しいのにさ
Old lonely ass nigga
年食った孤独な野郎だよ
I can’t even lie, I’ve been lonely as fuck
嘘すらつけないなんてな、ずっとクソほど寂しいのに
Forreal, you need to go somewhere, like, get some bitches or something
実際のハナシさ、お前もどっか行っちまえばいいのにさ、例えば、ビッチに会いに行くとかさ
I can’t even lie, I’ve been lonely as fuck
でも俺は嘘すらつけないんだ、こんなクソ寂しいのにさ
Old weird ass nigga
年食った変な野郎だよ
I can’t even lie, I’ve been
でも嘘すらつけないんだ、俺はずっと
Lonely, lonely, lonely, lonely
こんなに孤独なのにさ
[Verse: Tyler, The Creator]
They say the loudest in the room is weak
「一番うるさくしてる野郎は、本当は弱い奴さ」ってあいつらは言ってる
(Frank Lucasの言葉から。注目を浴びようと大声を出しているやつの中身は、弱い奴だと)
That’s what they assume, but I disagree
あいつらはそう思ってるらしいけど、俺はそうは思わないね
I say the loudest in the room
俺はこう言ってやる「一番うるせえ野郎は
Is prolly the loneliest one in the room (that’s me)
絶対に、”もっとも孤独 “なやつだ」ってさ (俺のことだよ)
Attention seeker, public speaker
注目を浴びる場所を探して、それでみんなの前で喋り倒して
Oh my God, that boy there is so fuckin’ lonely
オーマイガー、そいつ本当はクソ寂しい野郎じゃねえかって
Writin’ songs about these people
そういう人たちの曲を書いてるんだ
Who do not exist, he’s such a fuckin’ phony
本当は存在しない人のことをね、まさにクソ偽物野郎だよ
One thing I know, is that I wanna
それでわかったことがあるんだ、俺は
Win so bad, but I’m not Chicago
勝ちにめちゃくちゃ飢えてるってね、でも俺はシカゴ生まれじゃないし
(シカゴは別名The “Win”dy City)
Heart is low, it’s real low, it’s so low
気分は悪いよ、マジで最悪さ、最悪だよ
You can’t lift me up, I’m like Gallardo
俺を元気にはできないさ、俺はまるでCallardoだから
(Gallardoはランボルギーニの車種。車高が低いことと、自身の気分を重ねています)
From the start it’s been real dark
最初の頃から、本当に真っ暗闇なんだ
It’s been so dark, I guess that you could call me charbroiled, huh
ずっとこの真っ暗闇さ、俺のこと「炭焼き」って呼んでもいいぜ、ハハ
I’m playin’ like Hasbro
まるでHasbroみたいに遊ぶんだ
(Hasbroはアメリカのおもちゃの会社)
I’m really Saari, call me Arto
本当に悪い(Saari)と思ってるよ、Artoって呼んでくれ
(プロ・スケーター” Arto Saari “を示唆します)
Crashed the McLaren, bought me a Tesla
マクラーレンが壊れちまったから、テスラを買ったんだけど
I know you sick of me talkin’ ‘bout cars (skrrt)
それのせいで車の話ばっかりしてしまう病気にかかっちまったよ (skrrt)
But what the fuck else do you want from me?
でもお前は俺に何を求めてんだ?
That is the only thing keepin’ me company
それが俺と一緒にいる唯一の理由だろ
Purchase some things until I’m annoyed
俺がイラつくまで、色々買いまくればいいさ
These items is fillin’ the void
そういう”モノ”が寂しさを埋めてくれるから
Been fillin’ it for so long
ずっとその寂しさを埋めようとしてるんだけどさ
(反語です。モノでは本当に寂しさを埋めることはできません)
I don’t even know if it’s shit I enjoy (ohh)
それが俺が好きなものかどうかなんて、知ったこっちゃねえ
Current battle as an adult
大人として、必死に戦ってるんだ
My partner is a shadow
俺のパートナーは自分(Shadow)だよ
(ここでもパートナーがいない孤独が語られます)
I need love, do you got some I could borrow?
愛が欲しいんだ、借りれるもんなら少しくれないか?
Fuck it, I could find some tomorrow
クソ、まあ明日探すとするよ
But that never comes
どうせ、一生ないんだろうけどさ
Like a vasectomy, what have I done?
バセクトミーみたいにね、俺が何をしたっていうんだ?
(バセクトミーは日本ではパイプカットと呼ばれる避妊手術のこと。精管を取ってしまう手術とのこと)
I got the talent, the face and the funds
才能もあるし、有名にもなった、金もあるぜ
Found myself long ago but I haven’t found someone (who)
遠い昔に自分探しをしたんだけど、誰も見つからなかったよ
Mirror, mirror on the wall (who)
壁にかかってミラーを見てもさ
The loneliest of them all (me)
この世で一番孤独な男が映るんだ (俺のことだよ)
Cupid actin’ stupid
キューピッドはバカみてえに振舞ってる
(キューピッドが運命の相手を見つけてくれると言われていますが、そのキューピッドがバカみたいに振る舞う = きちんと巡り合わせてくれない。ということです)
Do you got another number I could call?
お前、電話番号変えたのかよ?
Never had a pet
ペットなら飼ったことないぜ
I’ve never had a pet
俺はペットは飼わねえんだ
There’s more fish in the sea
海には山ほどの魚たちがいるけど
But I never had a goldfish to begin with
でも、金魚を飼ったことなんて俺にはないんだ
(「山ほど人はいるけど、付き合ったことはない」など、人間に当てはめてみると色々な比喩が思い起こされます)
I never had a dog
犬だって飼ったことねえぜ
So I’ve never been good with bitches
だからビッチと仲良くしたこともないし
(bitchの語源は” female dog “。言葉遊びです)
‘Cause I never threw a ball, fetch
だって俺は「ボールを投げて、キャッチ」だなんてやったことないから
(恋愛においての駆け引きを表しているようです)
I never had a pet, that’s where it stems from, I bet
ペットは飼ったことないんだ、そのせいでこんな寂しいんだろうな、賭けてもいいよ
Treat me like direct deposit
俺を預金口座だと思って扱ってくれよ
Check in on me sometime
たまに会ってくれれば、それでいいんだ
Ask me how I’m really doin’
聞いてくれよ「最近調子はどうだい」って
So I never have to press that 911
そしたら、911をダイヤルする必要もないだろうから
[Outro: Jasper]
Ohh! Damn! Damn!
あぁ!クソ!クソ!
Tyler the Creator Smashed His Tesla Into a Parked Car, Victim Is Excited About Getting Paid
(事故についての記事)
Click HERE to more songs by Tyler, The Creator
タイラー・ザ・クリエイターの他の楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック
Click HERE to other songs by Frank Ocean
フランク・オーシャンの他の楽曲の和訳・紹介はこちらをクリック
アーティスト一覧はこちら